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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ヘンソクテキでも出逢いは出逢いってコト。【中】

 シルビアの言い回しに引っかかるモノを覚えつつも、自分に客という事なので行かないという選択肢は無い。

仕方なく風呂は後回しにして、部屋に入る。

ちょっと相手に失礼だが。

というかミランダ邪魔。

「お久し振りです。」

 オレの視界一杯に入ってくる真紅の色。

クロアートの国色を身にまとった一人の女性。

嘘をついたまま別れてしまった彼女。

「"初めまして。"」

 胸に感じる痛みの中で、オレは次の嘘をついた。

一度、人を殺したら何人殺そうが人殺し。

同じように嘘だって、一度だろうが二度だろうが変わらない。

それに・・・もうトウマ・グランツはいないのだから。

「ヴァンハイト皇国、第二皇子アルム・ディス・ヴァンハイトです。」

 自分の名を名乗るのにこんなに苦痛を感じたのは初めてじゃないだろうか。

オレの名前を聞いて瞳を閉じる目の前の女性は・・・。

「この度、クロアート帝国の貴族位に新たに列せられる事になりました、アイシャ・エル・クロアートで御座います。」

 新たな貴族位というのは、大叔父様が亡くなったからという事だろうが・・・貴族性ではなく、よりによって王姓かよ。

「王姓を持つ大貴族(王族)が何故こんな田舎へ?」

 薄々はわかってはいるが、違う答えを彼女に期待してしまう。

「この度は、私の様な粗忽者で若輩者を妃候補に選んで頂き、真に光栄です。」

 目を覆いたくなる。

よりによって彼女とは・・・。

「そういうのは光栄と言いませんよ。オレは辺境に追いやられた第二皇子ですから。」

 どちらの位が上とははっきりしないが、まだ向こうの国にいる方がメがあるんじゃないだろうか。

「そうは仰られても、この街の様子を見ればご謙遜にしか感じませんわ。」

 本当、間が悪い。

まさか、こういうのを計算に入れた兄上の仕業じゃないだろうな?

最近のオレ、黒幕を兄上に設定するの好きな?

ゲンナリするオレと微笑む彼女との対比が何とも言えん。

「で、貴女ご自身は、今回の事はどう思ってるんです?本音のところは。」

 この姫は、そこまで嘘がつける性格だと思わないしな。

ついても、すぐに見破れる気がする。

「・・・そうですね。」

 気まずい雰囲気なのは、この際仕方ないよな。

全く。

半分以上、自業自得とはいえ・・・。

「でも・・・一度ちゃぁんとお会いしたいと思いましたの。」

「たはは・・・。」

 嘘をつかれて逃げるようにいなくなった人間に会いたいとは・・・。

以前も思った事だけれど、興味を持つとそれに関して意外に許容量が大きいというか、自由人なんだなよ。

それが可愛いというか、無防備というか、世間知らず?

「"久し振り"なら私の知っているトウマさん。"初めまして"ならアルム皇子。そのどちらもよく知ってみたいと思いまして。」

「ぐぬぬ。」

 根に持っているのかな、コレは。

いや、そりゃあ、怒っていても仕方がないとは思う。

実際、"初めましてのアルム皇子"の方をオレは選択したんだしなぁ。

「で、知ってどうするの?」

 知ったところで、何が変わるワケでもないとは思うんだけど。

まぁ、オレには女心は一切理解出来ないし、証明済み。

「さぁ、どう致しましょう?」

 そう言うと彼女は、その手をオレの頬にそえる。

「何ら違いがないような気もしますわ。」

 同一人物だしな。

ただ、彼女と出会った時のオレは自己責任のもとで好きな事が出来た。

今は、違う意味で出来ているけれどな。

「いや、結構違うと思うよ。」

「あら、そんな事を仰るのでしたら、私も以前とは違いますわ。」

 そこは似ていると思う。

彼女も王姓を得たのだし、以前と立場が更に違う。

「案外・・・。」 「似た者同士ですわね。」

 続きの言葉を先に言われた。

当然、心を読んでいるわけなんかじゃない。

「それじゃあ、姫に我が城と部下。そして城下街でも案内致しましょうかね。」

 ずっと頬にそえられたままの彼女の手を取る。

「光栄ですわ。」

 考えようによっては、彼女とはまたここから始められる。

立場はあの時と変わってしまったけれど。

「以前でしたら、外出も大変でしたから。」

「あぁ、そう言えばそうですねぇ。」

 彼女にとっては、今の方が自由なのかも知れない。

少なくともここにいる間だけは。

「んじゃ、とりあえず・・・。」

 皆を紹介するかな。

オリエやミリィとは久し振りだろうし、特にオリエが喋る事が出来るって彼女は知らないはず。

驚くだろうな。

それを想像すると笑いが止まらん。

「まずは、オレの周りにいる人間の紹介を。」

「アルム!"私の許可無く"女を連れ込んだのは本当かっ!!」

 怒声を上げながら部屋に飛び込んで来る人影。

何時から、許可が必要になったんだよ。

というか、何故、オマエに許可を取らなきゃならん。

「・・・彼女は近くのエルフの森の姫で、ラミア姫です。」

 一番最初に紹介する事になったのはいいとして、第一印象が最悪なのだけはオレでもわかった。

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