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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ホガラカに日々を過ごすというコト。

「っざけんなっ!」

 -カコォンッ!-

叫び声を上げながら斧を振るうと、材木に吸い込まれていき、その代わりに乾いた音が返ってくる。

材木を切るうえでは無駄な力の入れ具合いだ。

何故こうなったかというとだ、一応、相手が誰なのかを聞きに行ったオレを待っていたのは、蛻の殻の部屋。

どこに外出したかもわからない相手を探すのも骨が折れる。

折れるのだが、かといってこのまま城に居続けても女性陣問い詰められるのは目に見えている。

ちなみにラミアは憤然としたまま部屋を出て行ってしまった。

突拍子も無い事をしでかさなければいいが。

と、まぁ、つまり、このイキドオリってヤツを材木にブツけていると。

「よいさぁっ!」

 -カコォンッ-

この音が意外と心地良くて好きだったり。

例の水車建設予定地で材木加工の手伝い。

う~ん、皇子の仕事としては素晴らしく目に見えて、実務的だ。

「しかし、皇子まで肉体労働とは驚きっス。」

「こっちこそ、ザッシュがいるとは思わなかったよ。」

 現場に行ったら、既にザッシュが手伝っていた。

ザッシュは鋸を引いて、材木の端を綺麗に削ぎ落としている。

「非番の日の数時間と訓練日は皆ここで働いてますよ?」

 相変わらずの腰の低そうな態度と笑顔。

「え~と、あのサ・・・給金低い?」

 官吏の給金ってスクラトニーが居た時と変わってないのではなかろうかという疑問が・・・。

だとしたら、かなり低給金だったりするのでは?

そんな低給金で、オレは官吏達を連日徹夜の嵐に叩き込んだとかだったら、何とも申し訳ない。

「あはは、これは無償っスよ?ご飯分は取ってるっスケド。」

 無償?

「これでも皆、リッヒニドスが良くなるならっていう程度の愛着はあるっスよ?」

 ぐぬぬ。

「それは失礼だったな。」

 皆、自ら買って出てくれた苦労なのか。

「ま、意外と皆、田舎ですから休みと言っても暇人で、訓練代わりにもなるってのが大半っス。」

 ザッシュがそんな身も蓋も無い事を言うものだから、そこかしこから苦笑する声が聞こえる。

確かに働く人々の中に何人か見知った顔がある。

間違いない。

「悪いな。」

「いえいえ。結局は自分達の為になるっス。それに皇子も手伝ってるじゃないっスか。」

 それはそうなんだが・・・。

「オレのは気まぐれだよ。言い出した人間として心配ってのもあるが。」

「普通は言い出しっぺだからって、ノコノコ皇族が出てこんな事しないっスよ~。」

 呆れながら笑い出すザッシュにつられて周りの皆も笑い出す。

「そういうコト言うと、不敬罪でザッシュを減俸にしちゃおうかな?」

「えぇ?!そんな事したら、それこそここに就職しないとなんなくなるっス。」

 苦笑、失笑ときて大爆笑だ。

中には拍手喝采している者もいる。

仲間に愛されてるな、ザッシュよ。

思わず拍手している彼等の給金を上げたくなるじゃないか。

不公平だからしないけど。

「いいか、皆。これが成功すれば用水路が整備出来て楽になる。田畑も広げられる。」

 皆が一斉にオレを見て息を呑む。

未来が見えると人は生きていく力が湧く。

湧かない奴は時が流れる時間というものの概念に生きてない者だけだ。

「更に粉挽き小屋も作るし、太守代理と相談して他にも施設を作る。全部リッヒニドスの民の財産だ。」

 共有財産・公共物。

そういう考えは、皇族が治めている地ではほとんどない。

全部、皇侯貴族のモノだしな。

「税収次第では皆の為の施設も増やせるし、給金も上げられる。減俸のザッシュ君の給金もな。」

「減俸確定っスか?!」

 素っ頓狂な奇声を上げるザッシュの慌てぶりを見た現場は、更なる笑いの渦に。

うん、なんか、こういうの生きてるってカンジがするな。

・・・ザッシュには悪いけれど。

逆に言えばアレか?

ザッシュ一人の犠牲でこれだけ場が和むんだから、これはかなりお得で凄い事ではないのか?

「いやいや、ザッシュ君。誰にでも出来る事じゃないぞ、うんうん。」

「何がっスかっ!」

 オレではなくて、ザッシュの憤りが爆発したな、うん。

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