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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅳ章:黒の皇子は革新する。
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ハイイも時によりけりってコト。

「おぉっ!アルム様!お久しい。」

 訝し気に執務室の扉を開くオレを迎えた老人。

「はぁ・・・。」

 その姿を見て、オレは一気に脱力した。

緊張した自分が馬鹿みたいだ。

「何で、こんな辺境の田舎くんだりまで・・・。」

 オレは溜め息をつく気すらなく老人に向かって言葉を吐いた。

「辺境の田舎とは、ここは由緒正しき皇政発祥の地。若い時分、何度と訪れた事か。」

 物好きというか、流石"皇室長官"

ある意味、その熱意には感動する。

だが、問題は彼が何しに来たかだ。

どう考えても今回は物見遊山ではあるまい。

「皇子のご健勝ぶりをこの目で拝見出来てよろしゅうございました。」

 表立って。とは言えないが、彼はオレに無関心ではない数少ない人間だと認識している。

認識しているからこそ、オレも邪険にする事は出来ないんだが・・・。

「自由にさせてもらっているからね。前の城にいるよりは楽だよ。」

 聞きたくない事も耳に入って来ないしな。

もっとも、それが良い事なのかどうかはわからないが。

「そのようで御座いますな。城下の街も以前とは見違える程に活気に満ちてます。」

 コホンと咳払いする。

「なにやら街と田畑の整備計画をアルム様が立案したとか?」

 ほらな。

聞こえないのも良し悪しだろ?

全く、誰がそんな事を・・・。

一瞬、何処かの州太守代理様を思い出したんだが?

本当にやらかしそうなので、考えたくない。

放棄。

「オレはただのお飾りだよ。オレに威光なんて無いが、それでも"無能な第二皇子"がやったと言えば、失敗しても諦めや責任のなすりつけもし易いだろう?」

 今度から民の意見や要望をオレや太守が直に受け取れる案を練らないとな。

少なくとも、オレが居なくなった時にそれが良い案ならば、カーライルが継続して行ってくれるだろう。

「そんな事はありません!アルム様は良く民草に心を砕いて下さいます!」

 ・・・レイア。

どうにも我慢出来なくなったのだろうか?

横に控えているレイアが声を荒げる。

とんだ不作法なのだが・・・まぁ、レイアは首都にいた頃のオレなんてほとんど知らないからなぁ。

「ありがとう、レイア。こうやって甘やかしてくれる者達に対して、真摯に向き合っていたらこうなっただけさ。」

 そもそも、オレの血筋に影響力はあっても、オレ自身には何の力もないんだ。

それを理解しているからこそ、皆を落胆させるわけにはいかなくなっている。

ある意味、それが"アルム"という人間の矜持なんだろかね。

「いやはや、民の先頭に立ち続けるという責務を持つという事が大事なのですな。」

 不作法なレイアを咎める事をせず、寧ろ良しとする所が人が出来ている。

「彼女はレイア。アルム・ディス・ヴァンハイトが、このリッヒニドスで起こす新たな騎士団の騎士団長だ。」

 遅かれ早かれ、この事は中央に伝われるんだ。

どうせなら、自分の敵ではない人間。

少なくとも目の前の中立と思っている人間に言って、広まった方がまだいい。

と、言っても、まだ結成どころか募集開始もしてないんだけれども。

「・・・あ、あの、アルム様?今・・・なんと?」

 目の前の老体の反応を待つ前にレイアから意外そうな反応が出る。

何をそんなに驚く事が・・・。

「あ。まだ言ってなかったっけ?今、言ったからいいか、うん。」

 熱に事後承諾って程でもない。

「良くありません!」

 あ、ダメか、やっぱり。

意外とオレの部下の中で真面目な方に入るからなレイアは。

「その内、そういう事になるからね。君以外オレには考えられないし、君でなければダメだ。」

 んで、ここで兄上ばりに微笑んでみたり。

「あ・・・うぅ・・・。」

 と、こうなるワケか、学習。

いや、そう思っているのは本当だよ?

だって、彼女はオレだけの騎士なんだから。

「期待しているよ?オレだけの騎士さん。」

 その言葉にしっかりと頷くレイアは、オレに騎士の誓いをした時と同じ表情だった。

「アルム様も皇子としての心構えがようやく出来たという事ですかな。」

 オレ達のやり取りを聞いていた彼は、素直にオレの成長と受け取ってくれたらしい。

「ならば、私もめもここに来た甲斐があります。皇子、これも皇子としての使命ですぞ。」

 折角、うまく用件を言わせないように引き延ばしたというのに・・・。

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