ロクでもない展開ってコト。
まさか自分がこんな状況になるとは思ってもみなかった。
ただ・・・。
「でぇりゃぁっ!」
「フンヌッ!」
火花が散るぐらいの剣撃。
朝食を摂ってからブッ続けでバルドと剣を打ち合わせている。
既にもう日も高い。
「フッ!」
「はぁっ!」
バルドは微動だにせず、オレの渾身の一撃も声だけで相殺されそうだ。
それでもオレは激しく斬りつけている。
斬り続ける。
一瞬でも手を休めれば、バルドの渾身の一撃が待っている。
例え、それによっての傷が無かったとしても、その衝撃は相殺し切れるものではない。
以前だったら、こんなに長い時間手を出し続けてなんていられなかった。
でも、今は。
「かなりマシになりましたな。」
平然としているバルドの声すらも一切無視して、身体を動かし続ける。
これにもコツがある。
呼吸だ。
早く激しい動きは、無呼吸運動になる。
これは人として生物として普通。
だが、この場合それじゃあダメだ。
達人級のバルド相手では、息を吐ききった瞬間、息を吸う瞬間に強烈な一撃に見舞われる。
格好の標的。
誰しもその刹那は動きが止まるから・・・だそうだ。
伝聞形なのは、オレにはその瞬間がわかったとしても刹那の斬撃なんて繰り出せん。
悔しいが。
斬撃を単調にせず、様々な角度から呼吸と斬撃の間をつくらない様に。
「そろそろワシも動きながら受けないと無理になってきましたなっ。」
鍔迫り合い状態になった時に剣をその馬鹿力で押されて、互いに間合いが開く。
「しかし、成程、アリですな。」
バルドはオレの姿に感心する。
「長剣二本流。確かにワシも長剣の使い方と双剣の型をお教えしましたが・・・。」
今、オレは両腕に円盾、両具足。
そして、長剣を左右の手に。
「まさか間を取るとは何とも・・・。」
「オレらしいだろ?」
この前考えた戦い方を早速、実行に移してみた。
アイシャ姫の強い一撃、ラスロー王子の早い一撃。
どちらもオレには無かった。
ので、手数と防御で差を埋める事を試みてみた。
これが、意外にしっくり。
双剣を使うという事は両利きでなければならない。
バルドの教えも片腕一本になろうが、腕を両方失おうが戦って生き延びるというもの。
これが功を奏した事になる。
「ワシの弟子とヴァンハイトの皇子というのを見事に体現してますな。」
ガハハと豪快に笑い出すバルド。
んと、ますます熊じみてきたな。
これで生肉にでも齧り付けば、まんま熊だ。
「だろ?まぁ、自分でも意外にしっくりきて驚いてる。」
「ワシの教えのタマモノですナ。」
バルドの訓練は、訓練とは言えない。
半殺しのメに合う事が何度あった事か・・・。
オレ自身が望んだ事ではあるが。
明確な目標。
その達成の為に。
今は、もっと明確になっている。
オレに残された時間が、もし僅かだというのなら。
「しかし、随分と長い時間訓練に使ってしまったなぁ。」
「公務は大丈夫なんで?」
「バルド、公務なんてもん、本当はオレには無いんだぞ?」
第二皇子は中央の政治から遠ざけられ、隠棲という流れでリッヒニドスに来たんだから。
「ま、能ある者も武ある者も人に望まれる運命なんですな。」
能?武?
オレは思わず微妙な表情をする。
「おぉっ、他にも他者に望まれる者がいましたなぁ。」
日の光を受けて、キラリと光る頭を叩く。
何かロクでも無い事を言い出しそうだなぁ。
「徳のある者ですな。コレが一番難しい。多くいるワケでも後から獲得出来るものでもない。」
徳ねぇ・・・しかし、こうして聞いていると、兄上って全部当て嵌まるワケで・・・。
流石、無駄に完璧超人。
「ここにいらしゃいましたか。」
「ん?」
珍しく完全武装の鎧姿のレイアだ。
「何故、レイア鎧姿?まさか・・・バルドの指南?」
悪い事は言わない。
亡くなった先祖に会いたいか、自殺志願者じゃなければ、やめた方がいい。
「アルム様のように打ち合ったりはしませんが。」
なら、まぁ、いいだろう。
この熊の脳みそに手加減の文字はない。
いや、あるかも知れんが、力加減という言葉も時たま抜けたりするから。
「ではなくて、アルム様にご面会の方がいらしております。」
面会?
オレ、この地に部下以外の知り合いなんて、いないに等しいんだが。
「・・・女性?」
「いえ、男性の、ご老人の方です。」
男性老人?
ますます誰かわからん。
首を傾げながらオレは、レイアと共に執務室にしている部屋へと戻った。