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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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A to Z! ~エピローグⅠ~【皇子の帰城。】

それではオマケ話的、エピローグです。

どうぞ、お楽しみ下さい。

 そんなに長く暮らしてなかったのに、いざその景色が見えてくると感慨深いのは何故なんだろうな。

「オリエ。これが今日から一緒に暮らす城だよ。そして、シルビィ、おかえり。」

 オレに抱きかかえられて、目を見開くオリエに瞳をうるませるシルビィ。

悪くない。

オレは腰に下げられた小さな壷を撫でる。




「アルム様!どうして私を連れて行ってくれなかったのですか!」

 城に帰還したオレは、予想通りレイアに怒鳴られ、吐く寸前までがしがしと揺らされた。

言えない。

年齢的に厳しかったなんて、死んでも言えない。

そして。

「アル・・・。」

 半泣き・・・いや、ミランダにめそめそ泣かれるハメになったり。

「アルム様~、お土産は~?」

 ホリンは・・・意外とあっさりだったな。

人間社会に自分が出る事の影響を嫌という程、自覚しているという事か。

ともかく、お土産用意しておいて良かった。

それだけは言える。

「お帰りなさいませ、アルム様。」

 冷静にオレを出迎えたはずのカーライルが、一番普通のはずなのに浮いている気がするのは何故だろう?

「カーライル、土産だ。特別製だぞ。」

 そう言って、書類の束を投げてやると、すぐさまそれを掴み一瞥する。

「官吏を招集致しますので、私はこれで。」

 不敵な笑みを残して、すぐ様帰って行った。

なんというか、無駄に仕事熱心というか・・・無駄は、失礼か。

ま、喜んでもらえて何よりだ。

色んな意味で。

あれから公共事業案として、まとめ直した資料だ。

オレも寝不足だが、官吏もこれから当分寝不足になる事、請け合いだな。

「アルムお兄様ッ!」

 メイド達の中で更に極端だったのはサァラ姫だった。

半狂乱と言えばいいのか・・・。

なんというか、本当にそういう種族的傾向なんじゃないかと思ってしまう程に。

「私、心配で心配で・・・。」

 相変わらず小さいな・・・サァラ姫。

外見はオリエとそう変わらん。

流石にサァラ姫の方が、発育不全気味のオリエより大きいが。

「だ、大丈夫だから。ら、ラミア、姉として妹を・・・。」

 皆の輪から少し外れた所で、様子を見続けていたラミアに助けを求めたのがトドメだった。

「フンッ、自業自得だ。私はそれより、さっきからオマエが抱いている女の方が気になる。」

 ピタリと止まる女性陣。

皆、気になっても説明があるまで聞かないようにしていたのが、丸解りだ。

「あー。」

 見詰め合うオレとオリエ。

「そういえば決めてなかったな。オリエ、妹と娘、どっちがいい?」

 この一言が迂闊だった。

あぁ、城に帰って来られて気が抜けてたさ!

「なっ?!」「妹?!」「娘ェッ!」「あぁ、私のアルが・・・。」

 順番に行こうか。

ラミア→サァラ姫→レイア→ミランダ

この順な。

ちなみにホリンはケラケラと笑いながら、事の成り行きを見ている。

実に楽しそうだ。

正直、ホリンが一番順応性があるよな。

後で殴っておくとしよう。

「いいえ、きっと変な女に騙されたに違いないわっ!」

 あ、ミランダが壊れた。

久し振りだな、この展開。

妙に懐かしい。

「アタシ、どっちでもいいと言った。アルムと一緒なら。」

 このオリエの答えに更なる嵐が吹き荒れる事になったのだった。




「皇子!これでは予算が!」

「予算だぁ?そんな問題は解決しているだろ!」

 翌日からは違う意味で嵐だった。

「シグルド皇太子から、一つの治水潅漑工事の試案として補助金の言質は頂いている。それは資料にも記載してあるろう!」

 例の水車を使った大規模な治水工事の話だ。

「しかし、それでも。」

「不足分は、州の名義で債券発行する。成功したら、何割か乗せて買い取る方向で商人にでも買い取らせろ。」

 資金などというのっけから躓くような所に引っかかるオレではないのだ。

でなければ、カーライルもこんな会議を開いたりしない。

これは単なる形式的なものだとカーライル自身は認識しているのだろう。

だからと言って、論議をしないワケではないのだが。

「人手不足に関しては、ダークエルフだろうが獣人だろうが受け付ける。入植希望者もいる事だしな。」

 オレはどんどんとまくし立てる。

しかも机をばんばんと叩いて。

「材木の大半は、ダークエルフかの森から分けてもらえるように手配は済ませてある。設計図もある。さぁ、可能かどうかだけを言え!」

「か・・・可能です。」

「よし。次、官吏登用の件はどうなった?」

 本音としては、内政など参加したくなかった。

いや、外交とかも参加したくないけど。

だから帰城した時も、資料をカーライルに丸投げしたのだが・・・。

オレのいない間に官吏登用の件も含めて、オレの参画が決まっていた。

ここにいる人間達は、あの事件でのオレを見ている。

そのせいか、少しずつ待望論が増していったらしい。

・・・というのが、カーライルの談だが、絶対に嘘だ。

いや、全部が全部嘘だとは流石に思わないが、カーライルの推しがあったのは確実だ。

「その案につきましては、資料をまとめておきました。」

「そうか。では、今夜にでも確認する。それと、この州府において騎士団を結成し、駐在させる事にした。」

 最後のオレの発言にその場にいた全ての官吏に驚きが広がった。

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