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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Yourself! 皇子が皇子である為に。【前】

「少し・・・いや、かなり認識が甘かったな。」

 余りにも平和で楽しくて、腑抜けてしまっていた。

オレにそんな余裕や幸せばかりが持てるはずもないのに。

もうすぐ、アイシャ姫の屋敷の門をくぐる。

「もっと強く、もっと考えないと。」

 そうでなければ、オレという存在は全てを失ってしまう。

もっとしっかり最初の事件について調べていたら。

もっときちんと二国間の問題に注目していれば。

その前の街での決闘だってそうだ。

・・・違うな。

もっと一番最初からだ。

神器が持てる事、神器とはそもそも何故存在し続けているのか。

シルビアの時折見せていた言動。

「少しどころじゃないじゃないか。」

 悔しい。

今更になって、物凄く悔しい。

「アイシャ姫!」

 屋敷に入り、人の気配の少なさに焦りながら、出来る限り走る。

「兄上!」

 オレの声に反応して気配が動いているのがわかる。

逆に言えば、オレを認識した相手。

敵なのだろうか?

「ここだ、アル!」

 兄上の声が奥から聞こえる。

人質にされるような失敗をする人じゃないとは思うが、一応腰に下げた剣を抜く。

剣がさっきより重く感じるのは、身体が疲弊してきているという事に他ならない。

自業自得だけどな。

「兄上!アイシャ姫!」

 視界に入る二人の無事を確認すると、少し安心した。

兄上は神器ではない方の剣だけを抜いて、アイシャ姫の横に立っている。

アイシャ姫は何時もの真紅の服を身にまとっていた。

「流石。」

「アルの頼みと聞いて、いささか張り切ってしまったよ。」

 涼しげな笑みをたたえている我が兄は、何故だかこの現状と比べ場違いに感じる。

「アルの部下とラスロー王子の部下は、私の護衛に任せてある。」

 弟の褒め言葉に上機嫌になっているところ悪いんだが、そんなに浮かれていいのか、次期国皇。

「アイシャ姫の方は?」

「他の人間は奥にいます。戦闘が出来る者は大叔父様の方へ。」

 大叔父様というのは、きっと一緒に夕飯を食べた人物だろう。

「姫様の従者は?」

 本来彼女を守るべき人間の姿が見えない。

まさか・・・。

「彼女等も大叔父様の所へ。私と違って、大叔父様は中央の要人ですので。」

 いくらなんでもそれは・・・。

確かに彼女は、自国の貴族では傍流だと言ってはいたが。

「姫様~。」

 と、緊張をブチ壊す間の抜けた声。

この声はオレも聞き覚えがある。

「マール、ここよ!」

 そういえば、最近、彼を見かける事は少なかったよな。

見えない所での仕事か・・・。

オレは兄上に目配せをして、アイシャ姫の斜め前に立つ。

「ご無事でしたか~。」

 とてとてと歩いて来る亜人の少年。

これなら、そう思うよな。

「やぁ、マール君。君も無事だった?」

「あ・・・トウマさん、お陰様で。」

 互いににっこりと微笑む。

「で、マール君?誰を殺したんだい?」

「はぃ?」

 ラスロー王子は、別の誰かとすり代わっていた。

オリガさんも武器の確認はしなかった。

ではマール君は?

あの決闘の時、武器を確認出来た人間は、何もセルブ側だけじゃない。

つまりはそういう事だ。

残るは彼だ。

彼とラスロー王子が共謀していれば、双方とも気づかなかったという構図には出来る。

「可哀想にマール君。偽王子は目的を達成して、さっさと退散したよ?知らなかったかな?」

 剣の切っ先をマール君に向ける。

「君は見事に一人取り残されたワケだ。」

 息を呑む音とマールと微かに呻く声が後ろで聞こえる。

ごめんな、アイシャ姫。

本当は君にこんなのを見せたくなかったよ。

「これって、アレかな?"捨て駒"って言うんだっけ?」

 ここまで揺さぶれば、本当に彼が共犯者かどうかがわかるハズだ。

・・・オレの中では、彼の自白がなくても、関係ない話なんだが。

何故なら、剣が・・・オレの剣が微かな殺気に反応している。

そして、彼からは微かだが、本当に血の匂いがしていた・・・。

正直、兄上、万能過ぎじゃね?

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