Xeno! 皇子のたからもの。(シルビア視点)
さて、とうとうアルファベットタイトル【X】です。
残すは数話ですね。
皆さんのお陰です。
朦朧とした意識の中で、私に命令する言葉以外にはっきりと聞こえてくる声。
"運命の神器の皇子"
操られている私を信じ、約束を果たしに・・・。
『でも、まぁ、そんなのどうでもいいか。』
何も聞かず、こんな私をもう一度受け入れてくれた。
「これ・・・。」
彼が部屋から去った後、ふと私の横にいた少女が"それ"を差し出す。
銀製の指輪。
「アナタの・・・でしょ?」
私の、私だけのモノ。
少女はオリエと呼ばれていたかしら。
「ありがとう・・・。」
震える手で指輪を取ると涙が溢れてくる。
「大丈夫。アルム、許してくれる。」
私の手を握る少女、オリエ。
「アルム、アタシに何も聞かない。娘か妹にしてくれる言った。」
左腕に嵌められた銀の腕輪を私に見せつける。
「アナタとお揃い。」
私に再び身につける資格があるのだろうか?
こんな私に・・・。
「何も聞かないのなら、そういう事なのよ、貴女も。」
私を遠い親戚のようなものだと言った彼女。
「言わなくても、彼はわかっている。そういう人なのでしょう?」
手にある指輪をゆっくりと左手の薬指に・・・。
以前、アルム様がそうしてくれたように。
「アルムの心。ずっとごめんなさい言ってる。でも、ずっと大好き言ってくれてる。」
私の未だ震える手を握るオリエという少女。
彼女"も"術使い。
「・・・わかってる・・・わかっているの。」
私が出会った時もそうだった。
生きている事への辛さ、罪悪感。
それに負けない前向きさと愛情。
太陽と月が同居したような精神性。
だから、あの剣は彼を選んだ。
「でも・・・私・・・。」
それを、深い親愛を私は裏切った。
「ダメ。誰がいなくなっても、アルム悲しむ。」
握る手に力が籠もる。
真っ直ぐに私を見る瞳。
「貴女に進む力をアルム様はくれたのね?」
私がいた頃には彼女はいなかったから、きっと私と入れ違いに出会ったのだろう。
彼女もきっと彼に照らされた人間の一人。
「アルム、アタシを大事にしてくれる。アタシも、アルム大事。」
「そうね。」
言われなくても私には。
"私達"にはそれがわかる。
そういう存在に生まれついてしまった私達なら。
「なら、笑顔で二人共、戻りましょうね。貴女にかけられた術は、私達で処理しないと。」
にっこりと私達の様子を見て笑う女性。
「それにしても。つくづく"私達"は彼に魅かれてしまうのね。」
リディアと呼ばれた女性は私とオリエ、二人の肩に手を置く。
「それも、これも、魂と血のなせる業かしらね?」
「違う。力無くてもアルムは見つけてくれた。」
「そうね。」
全く違う生まれと立場にいても、同じ力を持ってしまった三人。
本人達だけが、そうだと感じる事が出来る。
そして、出会ってしまったのだ"私達だけの皇子"に。
ようやく、シルビア視点が書けました。
ずっと謎持ちキャラだったので、なかなか出せなかったので、ちょっぴり嬉しいです。
あはは。