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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Worse! 皇子はだから立ち上がる。

「王錫の事、すみません、先生。」

 全員の命は無事だった。

怪我したのは、オレだけだったし。

だが、神器の二つ目が奪われた。

傷口の血が止まり、先生の術の力なのだろうか薄皮が形成さていく中で、オレはリディア先生に謝罪した。

「気にしていませんよ。寧ろ、私がお礼を言わないと。」

 その言葉が逆に痛い。

そういえば・・・オレは先生と話している間中、ずっと気になっていた既視感を思い出していた。

金の美しい髪と瞳。

何処か寂しげな憂いがあって、おっとりとした瞳。

「そっか・・・先生、シルビィに似ていたんだ。」

 一人納得。

「えぇ、遠い親戚みたいなものですから。」

「えぇっ?!」

 今回、一番驚いた。

そりゃ、こんな美人がわんさかいるような説明が、血だというのならば理解出来なくもない。

「それと奪われた杖は複製品です。」

「うえぇぇっ?!」

 一番驚いた事をあっさり更新。

そういえば、一言も先生はアレを神器だとは言っていない。

「何処から整理すれば・・・。」

 傷口が塞がっても、流れ出た血は戻らない。

そんな頭で考えろと言われても。

「私が・・・説明を・・・。」

 シルイビアが憔悴しきった表情で声を上げる。

「シルビィ、大丈夫か?」

「はい・・・。」

 それよりも、話をする事に力を入れるのが手に取るようにわかる。

でも・・・。

「でも、まぁ、そんなのどうでもいいや。」

 かなり酷い言い草ではある。

が、実に単純だが目的は達した。

あとは誰も他に傷つかなければいい。

出血が止まってなんとか動けそうだし。

「ここにあった王錫は神器の複製品で、アイツはそれを知っているかいないかわからないが、目的は神器という事。」

 要点だけ掴めればいい。

「問題の使い手の為にシルビィを選んだのは、王錫を使えるリディア先生が遠い親戚みたいなものという魂資質の為。」

 神器を、しかも二つも使って何をするかが不明だが。

「先生、本物の王錫は?何処に?」

「法王様がお持ちですよ。」

 オレの手当てを終え、一息ついたリディア先生の答え。

「つまり、ヤツの目的としては複製品でも構わなかったというコトか・・・。」

 法王とやらが本物を持っているのならば、厳重過ぎる程に守られているだろう。

対して、こちらは警備なんて無いに等しい。

この二択で後者を選ぶのだから、複製品でコトが足りるという事なのだろう。

案外、使い手がいなくてもいいような別の使い方をするのかも知れない。

「とりあえず、多少の整理が出来たから、事態の収拾をしますかね。」

 装備の状態を確認して、緩んでいた防具をつけ直す。

次はアイシャ姫の所か。

行くまでに終わっていると楽でいいな。

兄上がちゃんと向かってくれているなら、大丈夫だろうし、終わっているというある意味で楽観的な考えもしたくもなる。

ヤツが兄上を襲う可能性もあるが、オレの時や今回の時とはわけが違う。

兄上は、正真正銘の正当な神器の使い手なんだ。

まぁ、シルビアがオレについてリッヒニドスに来たところを考えると、最初から双剣は対象外なのかも知れない。

「あ、アルム様・・・。」

 黙りこむオレにシルビアが不安げな顔で覗き込む。

「大丈夫だよ、シルビィ。先生、オリエ、シルビィを頼みます。」

 多分、もうヤツは来ないとは思うが、シルビアを取り返しに来る事も考えられる。

「先生、セルブのオリガさんは味方です。逆にそれ以外は信用しないで下さい。」

 あぁ、シルビアがアルムと呼んだから、もう意味がないんだったな。

「・・・兄上が来たら、セルブのラスロー王子を探して下さい。何処かに本物が囚われているはずです。」

 やっぱり血が足りない。

少しふらつく。

頷く先生を見ながら、自分の体調も再確認。

斬撃の重さもあるが、三、四回も打ち合ったら限界かな。

「あ、先生。"エメト"と"マヴェット"って古代語知ってます?」

 ヤツは知っていた。

オレの両腕にある円盾。

両刃の状態ではあるが、ディーンの剣を止めた盾。

「言語の意味ですか?」

 そう聞き返す彼女にオレは頷く。

「"生"と"死"という意味です。」

 エメトが前者、マヴェットが後者。

魂と生命に関する言葉が込められた盾か・・・。

ヤツの手を止められた理由もそういう事なのか?

「んじゃ、ちょっと行ってきます。」

 オレは多少フラついた足取りで、アイシャ姫の住む屋敷へと向かった。

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