表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
110/207

Voice! 皇子は想いで生かされる。【後】

「新手か・・・。」

 チラリと視線を逸らす少年。

「フッ!」

 そんな隙を見逃すわけにはいかない。

わざと作られた隙だとしても。

息を吐いて、全力で剣を振り下ろす。

「フンッ!」

 力を籠め過ぎたせいか、反動で腕ごと後ろに跳ね返るのを無視して蹴りで相手の足元を薙ぐ。

足先はあっさりと跳躍によってかわされ、ヤツはオレの顔面に手を伸ばしてきた。

妖しく光る右手を。

ヤベぇ。

あの手はヤバイ。

剣の力なくても元来ある生存本能が警告を鳴らす。

「ぐっ。」

 上体を蹴り出した足の方向に捻りながら、転がるように逸らす。

触れらたらヤバイと感じた手だけに集中し、頭を庇って左手を咄嗟に突き出した。

「ぐあぁっ。」

 悲鳴?

オレに触れようとしたヤツが、自分の手を抑えながらオレから離れる。

「あ・・・。」

 右腕と同じように左腕の円盾の文字も淡く光を放っている。

「マヴェットの盾・・・?」

 アイツが片方をエメトの盾と呼んだのなら、こっちの腕にある盾の名はそういう事になる。

「・・・潮時か。」

 また消えやがって!

「芸がねぇんだよッ!」

 次に現れる地点なんざ、わかっている。

床に転がった王錫の前!

「オマエにはコイツをくれてやる!」

 懐から短剣が投げつけられる。

それがヤツの手から離れるか離れないかの刹那で、それが何処へと向かうのかオレは理解する。

今は叫び声を止め、頭を抱えたままの姿勢で蹲っているシルビアへとだ。

コイツは奇術師かっ。

オレはすぐさま足を止め、右手の剣と円盾で飛来する短剣を弾こうと試みる。

どう見ても、それだけじゃ防ぎ切れない数だな。

本当に何処に隠し持っていたのやら。

オレは諦めて、身体全体を使うしかない。

何本かを身体で受け止めヤツに斬りかかろうと歩を進める。

「目的達成。あばよっ!」

 ゆっくり消え始める。

手には王錫。

「逃がすかッ!」

 こういう時、知覚が広がるってのは悪い事だと思う。

もうヤツには攻撃が通らない。

遅かった。

それすらも理解出来てしまうのだから。

「・・・剣に続いて、王錫か。」

 兄上は無事だろうか。

・・・殺しても死なないか。

それに引き換え・・・。

「オレのなんと無様なコト。」

 右手の平は剣で貫かれ、左の肩口、右の太腿は短剣が突き刺さっている。

・・・オレ、本当に弱ぇ。

剣と円盾一対、両方とも付加持ちの一級品でコレ。

この有様。

情けないにも程がある。

流れる血を呆れながら眺めた後、多少フラつきながらもシルビアに歩み寄る。

「アルム様・・・。」

 額に大粒の汗を浮かべながら、何かを言おうと呻くシルビア。

「おかえり・・・シルビィ。」

 ずっと決めていた。

彼女の肩を抱き寄せて、絶対に言ってやるんだと・・・。

「約束通り、捕まえに来たよ。」

 言おうとしていた言葉をちゃんと言えて満足だ。

すぐさま彼女の嗚咽が胸の辺りで聞こえてくる。

「それと・・・ありがとう・・・オリエ。」

 息を荒げながら立ち尽くす小さな姿。

付加持ちの剣を選べた事、彼女が読んでいた粒子に関する本、一晩で治った傷、オレの本当の名を言えた事。

そして、あの炎の柱。

全ての謎を共通で解けるモノは一つ。

彼女は賢く強大な"術使い"だ。

だから・・・。

オレの言葉にビクンと肩を震わせている弱々しい存在。

「そんな声してたんだ。」

 何一つ持たずに、ぼろぼろになって世界を彷徨っていた姿を思い浮かべる。

オレはその声さえも永遠に失われたモノではない事を、今は喜ぶべきだ。

「オリエは声も可愛いんだね。」

 オレは彼女を丸ごと受け入れると、とっくに覚悟を決めている。

誰が何というと、彼女はオレの妹兼娘候補なんだからな。

「さ、シルビィもオリエも一緒にリッヒニドスへ帰ろう?」

 二人に力一杯微笑む。

「大丈夫。どんな事をしても、オレは二人の自由を取り戻すから。」

 強大過ぎた力を恐れて自ら声を封じた少女と、魂を拘束された女。

その鎖を完全に断ち切る。

「の、前に・・・アイシャ姫の方の確認もしないとな。」

 声に出しても力が身体に入らない。

血が足りないかな?

そういえば、三箇所。

特に右手の傷は一向に出血がおさまる気配がない。

短剣には毒を塗っているようには感じられないが、右手の傷は神器につけられた傷だしなぁ。

「ヤベ・・・。」

 立ち上がろうとして、逆にペタリと尻餅をつく結果になったオレを心配そうに駆け寄ってくるオリエ。

「私が治療しましょう。」

 にっこりと微笑んで、近づいてきたのはリディア先生だ。

「命の恩人ですもの。」

 そう言ってオレの身体を調べ始める。

オレはそれを確認すると、その言葉を信じて歯を食いしばりながら、身体に突き刺さった短剣を二本とも一気に引き抜いた。

何度も言うが、オレは決して無痛症とかじゃないからな?

すっごく痛いんだぜ?

それこそ涙が出る程に。

でもさ、流石に自分を心配してくれる女性三人の前で痛みで泣くのは・・・できないだろう?

乱入者はオリエちゃんでした。

これで、よくやくオリエちゃんが喋らなかった理由が発覚。

ちょっと展開が駆け足過ぎですが、作者の限界です。

許して下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ