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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
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Scheme! 皇子の指差し火の元確認。【中】 (オリガ視点)

なんだが、この章は女性視点少ないですよねぇ?

『わかった?』

 私は言われた言葉を頭の中で反芻する。

不思議な程優しく穏やかな声。

その声に言われるがままに私は導かれる。

大丈夫。

機会は少ないけれど、きっとそれは巡って来る。

私は、頷き。

自分の心を奮い立たせる事だけに神経を注ぐ。

「あら?」

 彼はこの時間、大抵ここにいる。

その印象は掴み所が無い。

時にはその存在さえ儚げで、薄く感じる。

でも、気弱に見えた彼が、王子の刺突を見切った時の事は記憶に新しい。

しかも、故国にも名が通っている"グランツの武門"の出という。

「やあ、オリガさん。」

 締まりのない笑顔。

やはり、あの光景を見ないと信じられない。

「水車の件はすごく参考になったよ、ありがとう。」

 そして、彼は基本的に笑顔だ。

グランツの姓を持つ武官のはずなのに勤勉家でもある。

図書館で会った時の集中力も凄かった。

「聞きたい事があるのだけれど?」

 この時間なら二人きりで話せる。

だから、私はここに来た。

幾つかの噂が流れ始めて、各国の動きが慌しい反面、決定的な手が打てなくなっている今に。

「珍しい。オリガさんからオレに話があるなんて。」

 苦笑しつつ、いいよと了解する。

「あの噂はあなたが?」

「噂?」

 他に考えられない。

私以外の人間は彼を武官と認識しているようだけれど、彼は文官にも匹敵するというのを私は知っている。

「オレに関する事なの?案外、他人の噂は別として本人に関するする噂は入ってこないんだよねぇ。」

 腕を組んで首を捻る。

彼のこのわざとらしさは、正直好きになれない。

人を小馬鹿にしているとしか思えないからだ。

「ヴァンハイトとセルブ・クロアートに関する噂なんて、あなたしか関われないでしょう?」

「あぁ、その噂ね。確かにラスロー王子にもアイシャ姫にも会ってるし、ヴァンハイト出身でもあるけど。」

 クスリと笑って。

「それだけじゃあ、弱いなぁ。」

 本当に人を小馬鹿にしている。

でも、今は彼に賭けるしかない。

「第一、それ、ヴァンハイトにもオレにも利はないじゃん。」

「でも、時間稼ぎにはなるわ。」

 彼は目先の利益のみでは動かない。

「それに利益だけで動く人間じゃないでしょう?」

 だとしたら、王子の誘いを受けてもおかしくはないはずだ。

「あはは。随分と高評価だ。だとしたら、ハズレ。」

 私を正面に見えるように姿勢を変え、声を出して笑いながら胡坐をかく。

「オレは利で動くよ。ただ、その基準は"オレだけの基準"なだけ。故にオレを本当に従わせるには殺す事だね。」

 指で自らの首を刈る真似をしながら。

「ただ簡単に殺されるワケには、"今は"まだいかないし、そうだなぁ。」

 沈黙。

「どうせ死ぬなら、愛してくれる人の腕の中で死にたいな。無理そうだけれど。」

 何処まで本気なのだろう?

「あなたはあなただけの味方なの?」

 どれだけ自分勝手だというのだろう。

「自分が正義とは思ってないけど、少なくとも進んで戦を起こそうとという人間よりは、人間らしいと思うけど?」

「あ・・・。」

 気づくと最初の質問の答えを想像出来る言葉が出ている。

全く、どこまで小馬鹿にしているのか・・・。

「世の中にさ、戦を望み利を得ようとする者がいるなら、戦を排する事で利を得ようとする人間が居ても構わないだろ?」

「なによ、それは。」

 私はほとほと呆れた。

捻くれている。

「そういう世の中の回り方があってもいいだろう。」

 この目だ。

背筋が少し凍りそうになる鋭い瞳。

王子と姫の戦いに乱入した時の。

「ま、人それぞれってコトで。」

 ふっとその鋭さが消え、再び微笑む。

「なら・・・。」

 これが本題。

「クロアートの誘いを受けたのなら、我が国との会食を。」

「・・・噂の信憑性を上げる為に?」

 聡い。

こちらの意図をきちんと汲めている。

やはり、彼は武官というより文官なのだろうか?

「帯剣を許可願えるなら。」

 ・・・彼は一体何者なのだろう?

「あぁ、それとオレからも一つ聞きたい事がある。」

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