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花束と笑顔を皇子達に。  作者: はつい
第Ⅲ章:黒の皇子は世界を見る。
101/207

Ready! 皇子はついに動き出す。【前】

チラシ裏を除いて、今回が通産100話目です。

皆様が読んでくださっているお陰で気づくと3桁になりました。

本当にありがとうございます。

これからもよろしくお願いいたします。

 全力で頭を抱えていた。

例のアイシャ姫に言った発言の事じゃないぞ?

いや、あれはあれで2、3日は頭を抱え、悶える事数十回。

アイシャ姫に合わせる顔も無く全力で遭遇を回避しようとしたくらいだ。

まぁ、そんな努力も虚しく再開した瞬間、アイシャ姫の顔が赤面し始めてオレは更に激しく後悔したのは言うまでもない。

ではなくて、現状の問題はだ。

「いたか!?」

「いや。」

「早く探せ!」

 只今、逃走中。

なのである。

何故こうなったか?

オレにもわからん。

あの夕食会の翌日、外出届けを申請して受理された数日後。

久し振りの外出が、見事に追いかけっこ。

「拙いよな、手際が。」

 恐らくの例のオッサンの差し金だろう。

施設内なら問題になるだろうこの行為も、外出時なら好都合だ。

大体、本来の身分ならともかく、現状の身分でオレが狙われるような理由はそれ以外にない。

だってそうだろ?

今のオレ、トウマ・グランツには何の背景も過去もないんだがら。

「さて、どうしたものか・・・。」

 武装はしている。

鎧も盾も身に着けていない状態ではあるが、双剣と長剣のを一振りは身に着けて来た。

挟撃や包囲に気をつけながら、細い路地で徹底抗戦。

あるいは、衆人環視の広場で応戦。

この辺りが効率的だ。

命に支障がない程度に叩きのめせば、相手も諦めてはくれると・・・。

「・・・馬鹿らしい。」

 何でオレがわざわざ疲れるような事をしなきゃなんないんだ?

いや、もう既に二、三人は叩きのめしてしまったんだが。

でも、それとこれとは別で・・・。

「いたぞ!」

「あ、ヤベ。」

 オレに向かって走ってくる集団。

さっきより人数増えていやがる。

ん~。

「うっし。」

 逃げると見せかけーの反転、双剣を抜いて突破!

そのまま、知っている道へと走り抜ける。

突破する走路にいた刺客に思った以上の傷を負わせてしまったが、大丈夫だろう。

目的地は、すぐそこだったからそういう手段を取った。

この方が早いからな。

「待ちやがれっ!」

 走り去る後方で、そういう声が聞こえた。

それで止まったら、俺はどこまで馬鹿なんだよ!

「あなた・・・。」

「ん?」

 何処かで聞いた声が耳に入って思わず立ち止まる。

「オリガさん?」

 買い物の包みを抱えて不思議そうにオレを見つめる女性。

「あそこだ!」

「だぁぁーっ!」

 立ち止まってんじゃん、オレ!

馬鹿決定。

「ごめん、オリガさん。後で怒られるからぁっ!」

 彼女と話しているところを見られてしまっては、彼女が何をされるかわからない。

かと言って、彼女を守りながら大立ち回りというのもアレだ。

少なくとも玉砕しないように必死にならないと。

「ちょっ、あなたっ!」

 腹を括ってオリガさんの手を取り、強引に引っ張る。

一度怒られる覚悟をした後は、もう全力だ。

「ごめん!すぐそこだから走って!」

 路地を出たり入ったりを繰り返し、目的地へと急ぐ。

ミランダみたいな純粋な文官というか侍女のオリガさんがいるので、追っ手を撹乱しながらじゃないと、何処に逃げ込んだかバレる。

「ヒルダ!悪い!追われてる!」

 オレは目的地であるヒルダの店に駆け込むと、すぐさま扉を閉める。

「相変わらずだねぇ。」

 苦笑しながら、何時もの(?)下着姿で奥から出て来るヒルダ。

その大胆な姿に開いた口が塞がらないオリガさんは、とりあえず置いておこう。

説明するのも面倒だ。

ちなみに今日のヒルダの下着は紫だ。

「この人を裏から逃がしておいてくれないか?途中で巻き込んだ。」

「アンタは?」

「適当に相手を蹴散らして逃げる。ある程度蹴散らさんと、向こうさんも失敗の言い訳を主に出来ないだろ?」

 それに思うところがあって。

「何なのあなた?」

 ようやく現実に帰ってきたオリガさんがオレを睨む。

「元を正せば、君の愛しの王子様のせいだよ?アイツ等、クロアートの手の者だ。」

 責めるつもりもないし、一応確たる証拠はないけれど。

逆に、それ以外の心当たりもないけれど。

唯一の心当たりは、ディーンの剣を奪ったヤツ等だが、あいつらの狙いは剣であってオレじゃない。

それに相当に用意周到だったから、こんなわかりやすい手を使うとは思えない。

「すっかりオレまでセルブの手先だと思い込まれたじゃないか、全く。」

「クロアートの次はセルブかい。いやはや、アンタも大変だねぇ。」

 ヒルダは半ば呆れつつも楽しげだ。

「好きでこうなったワケじゃないが、話の通じないヤツは仕方ない。」

 正直、殺すのを躊躇ってるオレも相当だ。

一人殺したら、後は何人殺めようと同じなんだからな。

「そうだねぇ、そういう馬鹿は何処にだっているさね。」

 その通り。

「どっから見ても、女誑しの博愛主義者なのにねぇ。」

 それもその通り。

反論の余地もない。

オレは殺されそうになった時にしか、今まで相手を殺めた事はない。

さっき倒したヤツ等だって、峰打ちだ。

「あぁ、ヒルダ。双剣は"負荷"だったよ。」

「ん?だから、ソイツは"付加"持ちだって・・・。」

 峰打ちをした瞬間の手ごたえで気づいた。

「違う。その付加じゃなくて、負荷。瞬間的だけれど重量が変化する。」

 使い慣れた武器の重量が変わると使い難いだけなんだが、切り下ろす瞬間と引き上げる瞬間のみ重量が変わると、剣撃が軽いという短所がが解消される。

そして、速さを生かす長所が強調される。

これは双剣使いだったら、嬉しい特典だ。

「成る程。だから振った時にアンタが感じた違和感がソレだったんだね。」

「あぁ、じゃ、彼女を頼んだよ?今度、酒でも奢るからさ。」

「それは、一晩中付き合ってくれるのかい?」

 ニヤリと笑うヒルダ。

まだそういう事を言うのか・・・。

あぁっ!オリガさんが軽蔑の目で見ている?!

でも、なぁ・・・。

「考えとく。」

 オレは苦笑しながら、そう言うと双剣を抜いて素早く外に出た。

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