↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
10/32

クロードside2




5年世界の各地を回った中で、あれは最も貧富の差が激しい国であった。


王宮や貴族の暮らしは無駄に贅沢である反面、他の人間はまるで奴隷の様な生き方をしておった。

ここら一帯の国々は戦争目前の緊張状態が長く続いており、他国との流通は殆どなく閉鎖された環境である。

この地で生まれた者は、才があれば他国へ逃げ、何も持たぬのであれば容赦のない税の追い立てに、ひとつ足を踏み外せば明日は無くなる様な日々の暮らしであったのだ。

この国の隣国に接する小さな村々では、それが最も酷く病まで蔓延しており、まるで死の国かと思ったぞ。



そこに我らは偶然立ち寄ったのだが、彼奴は時の魔法を使い次々と村人を病から治していったのだ。

病が侵されている体内の箇所を魔力で感知し、病の場所だけ時間を巻き戻すという繊細な事をやっておった。

我にも力を求められたが、我はそんな細々したことは好かぬ。村ごと巻き戻せばよかろうと言ったら、最近産まれた赤子や人々の記憶まで無くなると大反対され、仕方なく面倒くさい作業を手伝ってやったのだ。



そうして村々を回っているうちに、彼奴はひとりの女を好きになった。

この国の人々の病を治しつつ、徐々にその女の村に住み着くようになり、やがてその女は子を宿した。


そして彼奴は各地を回り色々な知識を持っていた故、耕した作物は豊かに実り、村人達は税に追われる生活から抜け出せたのである。

彼奴は国中の人間から賞賛され、崇められた。



子が産まれて3年の間は平穏に暮らしておった。

しかし、いつの時も出る杭は打たれてしまう。善いことをしても、それを悪いと思う者もおる。全てにおいての善とは無いのかもしれぬな。


彼奴のお陰で国が潤った分並行して軍事力も上がり、隣国との力の均衡が崩れた。焦った隣国は彼奴の元へ次々と刺客を送ってきたのだ。

我がついているのだ彼奴に人間の刺客など通用はせんが、程なくして家族も同様に狙われていった。

そしてついに彼奴の隙をつき、子供が隣国に連れ去られたのだ。


普段温厚な分、彼奴は想像以上に怒り狂った。

すぐさま隣国へ向かい子供の元へたどり着いたが一足遅く、子供はすでに息の根が止まっておった。




そうして彼奴はついに一線を超えてしまった。




我の力を望み、怒りの赴くまま一瞬でその国を暗黒の炎で包み込み灰と化したのだ。


子供の心臓は止まっておったが、魂は体から離れていなかった故に、我の大魔法で命を吹き返したのが幸いであった。

でなければ彼奴の怒りはこの国だけでは済まなかったであろう。


彼奴の眼の色は以前と変わり闇に落ち、溢れて止まらぬ力は周りを汚染した。

もう彼奴は人間と共に生きる事の出来ぬ身体になってしまったのだ。


彼奴の女は以前から王宮で匿ってもらっていた。眉目好い女であった故、国王とやらに色目を使われていたが、その分生活と命の保証はあると見込み彼奴は去った。


命があった子供は彼奴の両親の元へ託し、彼奴は人間のいない瘴気の濃い土地で静かに息を潜む。

すぐに自害しようとしておったが、我は伝えたのだ。

あの女のお腹には其方との子がおると。



潜んでいても彼奴から漏れ出す力は瘴気を広げ、人間の生活にも影響する。そうして子が産まれるまでの命の彼奴に、ホワイティアの契約者なる人間が仲間を連れて向かって来おった。

我は歴史を知っておる。今回もホワイティアが勝つのだと。


彼奴が最期の希望を持って生きることの何が悪い。


何が悪いのだ。




我は、人間は愚かな生き物として気にも止めていなかった。

いや、止める事が怖かったのであろう。


人間は刹那の命。目を開けて生きていると確認し、瞬きをする。

そして我がつぶった目を開けたら、そこにはもう、

生きてはおらぬのだから。


これではいちいち人間を相手にしていては、目を開けることが嫌になるであろう?



ならば我はもう目を閉じぬ。

せめて彼奴が産まれてくる子供を見るまでは、目を閉じずに我の全てを出し尽くそう。



300年ぶりに会うホワイティアは、我の目を見て驚いておった。我の心は言わずとも分かるのであろう。


それもつかの間、戦いの火蓋は切って落とされる。



しかしその瞬間、彼奴は我を見て笑って言ったのだ。



「クロード、ありがとう」と。



彼奴のそれは、生きることを諦めた目ではなかった。我が彼奴の為に死を選ぶように、彼奴も我の為に死を選んだ決意の目であったのだ。



彼奴は何も分かっておらぬ!我はもう目を閉じて開けたくはないのだ!!

目を開けて彼奴がおらぬ世界が怖くて怖くてたまらないのだ‥





無常にも歴史は変わる事なく刻んでいく。







………………………………………………………………









『ふむ、お主か?我と契約したいと言う阿呆は』



あなたは誰‥?





そして次に目を開けて見た人間は、彼奴と似て心根の優しい変わった奴であったのだ。



我は思う。

今回こそはきっと、目を閉じて再び開けることは無いのであろうと。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。