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人生のハズレを引く時のカオは、どんなものだろうか。
人が生きる80年、それは大きな物のはずだが、それでもハズレを引いたならば。それはじゃあ大袈裟だというならば、それがもし1年か2年か……まぁ10年だけならば?
我ながら思うんだ、青春とはなんぞやと。共学の高校、その隅っこでゲームし続ける日々は。
こんなだよ……。
何か無味無臭の衣食住がある。
透明で満たされている空気は仕切りとして、その雨風を防ぐ机は俺一つだけのパーソナルスペースとなって色の強い香りからは遠ざかる。木と無表情なパイプの匂いを漂わせて。
勉強も特別できるわけじゃなく、無聊をかこつだけのような。会話もない。制服はどこか歯がゆくて色がないんだ、俺のは。話相手はいるにはいるけど記憶は……そのメモリーはいつも漫ろ(そぞろ)。慢性的なイベント不足を露呈していて。
この生き様はまるで陽射しまぶしい朝の教室のようだな。今パチ――パチと確認のように、一人が消して灯した、光ってるけど気づかないんだ。周りが十分明るくて。
光に遠く、しかし太陽に繋がるには力量不足のスタイルと生まれと口数と、影が差す。これを凡庸と名付けようか、でもだけども凡庸とは一説には、家庭を持つらしい。
それでどうだろうか、本当にそんな所まで行くのだろうか。2軍、このまま人生を走って、いや歩いて――ダラダラ行ってこのさき突然覚醒して我は彼女なるを囲いてそこそこの会話を持って楽しみ、時には喧嘩して生きて行くんだなと。
裸の女を前にして、この女のこの姿も少し見飽きただなんて。でも二人もの子宝は愛おしくて。
本当にそんな覚醒が来るとは思えない。
青春、青春は……青いからだめなのか。晩春? 俺の考えが駄目なのか機が熟してないだけか、駄目か。そうなんだろう、そうだ、じゃあ今の時間はなんだろうな。
俺は楽し気な美少女を見守るんだ。画面を見て、その可愛い顔を見て。
やっぱり画面を見るんだ、十分十分。
それでもあえて寂寥を告げるのならば色を撒いて馬鹿な声を上げれる1軍さまが五月蠅い。すぐ近くでさ。
「あぁーあ、つまらないなぁ~」さっきまで女子とはしゃいでたにも関わらず全てが嫌味に聞こえるようなその。
「まぁま、どん欲だねぇ、上定ちゃんはさぁ?」
そこでだ、目をつけるのはコイツだ。隣のこいつ。大体は自称人気者くんがしゃしゃり出るから「じゃあやっぱさぁ~、頼むなら面白い人間が基本だろ~、なぁ? ほらなんか面白い事いえよ~っ、お前ぇ」
「……」「おぃ、オマエだって、お前」
お前よ、ほらぁ!
コイツ馴れ馴れしいんだよな……、ほんと気持ち悪い。しかもパワー系なんだよ、俺がせっかく座ってるのに脇に手を入れて立たせようとしてくるから。しかも立ったらもう、なにか成立したような空気も出して来るしな。
大体俺の何が楽しいのかって、そうだよ、この座ってるだけの男が、座ってる事にクラスでの価値があってそれに全力の俺が。
もしホントに座ってるだけで楽しいのならば朗報だ、お金を請求したいね。
俺はこの、全く話したこともなくこの色めく匂いの風に途端に挙動不審になってるような僕だよ。その少女が一人でも何か声を……、いや、良い。良いよ。
「はい発表ーーっ!」折角だらっと椅子へ溶けてやり過ごそうというところを直立させられ。冷たい男女の前、頭やワキを掻いてだ。うっすらと湧く汗が。
隣ではなんか勝手にやっといてむしろなんでこの気まずい空気に焦って慌てれるんだってくらい、心底ムカつくこの。
はよはよ……ォ、はよぉ……。
「ふつ~~にゲーム解説とかで良いよぉ、俺ら聞いてやるからぁ。な? なァ? お前のふつ~だ」女の子達の苦笑、それに更に意気上がる様子で急かして慣れ慣れしくも肩を弾き「俺ら今さ~、面白いのが純粋に聞きたいんだんわ~、異文化って大事だしぃ、いつも寂しそうだからお前さぁ、一人で」「あぁ……、うん。パズドラ、面白いよ」
チッ――。
この盛り下がってるのが辛いらしい、中山田くん殿が焦って俺になんかガナってるが相手しないでおく。女いると過度な笑いを求めるから、しかも。
「うわ、だっさ――」勝手に毎日服装チェックしてくるあの小山くんが眠そうだなと、いやホント嫌な感じで。
「ふぅ~……、お前さぁ、だから駄目なんヨ。これで人気になれるって場所を用意したのにさぁ……」それを壊すのが面白いんでしょ? 知ってますよ。そこの、こっちを目の敵のごとく無視して女の子と話してる奴も、そうだ、そう。楽しそうな園田よ。嘲笑って。
女子達はそもそも俺を見てるかも怪しいからな、だから知ってる男の――当然俺は入らないよ?――空気感が変わってって中身のない嫌味が止まればそのままで。
終わったよ。
苦虫を嚙み潰したようでいて、何の味もしなかったという白々しい空気を残し、俺だけ一度咀嚼させられる空間を黙ってまた。
「あ、そうだそうだ、良いかな?」俺の名前をクン呼びで、それは本当に慇懃で丁寧であり、なんのこともなく思いついたように自然な声で「なんか八島さんと良い感じじゃないかな……? 僕はそう思ってたんだ……」
あぁうん、コイツが最大の問題なんだよ――。
静かにしているようでいて火つけ役。金髪で端正なカオ。余郷 上定。昂然としていて世を謳歌するような、女子漫画で御用達の面長っぽさを持ちながらも優しく堂々と。
まぁ当然かよ、何よりもこの光にどれもこれもが無言でぶら下がっているからな、恵まれすぎててここまで。
むしろこの舞台が。
「あ、あっ、俺見たわー、俺も見たよ上定くん、なーんかすんごい良かったよな!」ナァ!?「あぁ~~っそうそう悪くない悪くない、おーーい、八島ちゃーん? ちょっとコッチーー」
来る気配がない、相手も嫌な予感がしてるから。
行け、行け、行け――!
でも俺が圧されて連れてかれ、面白いの来たとばかりに囃し立てられる。非常に不愉快だが言える空気にない、正直あまりに下劣で、どんな感性してればこうなるのかと。
それで使えないと分かれば空気でポイ――。
「あぁすまないね……、ごめん。人の恋路の話を勝手に。でもちょうど良いと思ったんだけれど」慇懃は過ぎると無礼になる。エガオ、眼の奥でうごめく物が見えるその。
あてられて力なく憤り、概世を嘆く者はしかし静かで。相手はオレを責める様子もなくて。
ただ気分悪そうな声が聞こえたんだ。あぁまたいじりが始まるかよ。
そうじゃないか。
そうじゃ……。
うん、まぁだからとりあえず仲間と一緒につるんでるんだよ。
「おっし、2週目ぇ! この15分休みで何週やれっかなー、こいつ弱すぎでぼろ儲けだわ」「これナーフ来る前になんとかするっしょー」「その前にゲーム終了のお知らせじゃなきゃ良いけどな~」
げんなりするが。まぁ……、世界とはそういう物か。自分のゲームは続かない物。
たくさんの数字が並び始めてもさ……、俺が強くなっても。
「別の、探しますか」「正直まぁ無料のゲームにも飽きて来たけどな」
何人かが抜けて、仕方なく誰かが入ったり寂れたり。焦ったり。無料の石を全て使い尽くすという漢の中の漢で一喜一憂したり。まぁ、そうして、可愛い可愛くないとか関係なしに女の子は基本が最小限なんだな、接するニンゲンとしての幅はないと言わんばかりで。
「これ……」
放り投げて来る、あぁ学級日誌ね。「あぁ、うん、上手だね、絵なんてさ、俺も」「ふぅん……」
歩いていく。
俺の人生の中で、オレは主役じゃない。もうね、寝て起きたら何かが変わっててくれないだろうかと。
大きなため息で机に突っ伏し、目覚める。
そうだ、目の前にはやっぱり
「ようこそ、カナリディア王国へ」
あぁぁ………、 うん? 異世、界。 あぁ異世界だなぁ。




