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婚約破棄されたので、猫になりました。  作者: 本見りん


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それぞれの企み


「───いや。こうなっても兄上は考えを改めるような方ではない。それに『筆頭公爵家』の肩書欲しさに縁を結びたい貴族など世間には腐るほど居る。───例えシャーロットの顔に傷があったとしてもそれは変わらないだろう」



 父グレゴリー伯爵の言葉に三兄弟は感情を露わにする。



「クソッ! それでは振り出しに戻っただけだ」

「それではエドワルド殿下かそれ以外になるかだけの違いじゃあないか……!」

「……何か打つ手はないのか!?」



 三兄弟は怒り苛立ち思案した。



「───待て。ここからだ。まだ我らにチャンスはある。

おそらく明日、シャーロットは郊外の大使館からオルコット公爵邸に移動する」



 グレゴリー伯爵はそう言って仄暗い笑みを浮かべた。それを見た3人は父の考えに気付き戦慄する。



「───ッ!」

「父上まさか」

「……確かにそれしか方法はありませんね」


 三兄弟は驚き動揺しつつも最後には父の考えに同意した。



「今を逃せばおそらくもう我々に公爵家を手に入れるチャンスは二度と来ない。───これは最後のチャンスだ」



 ───たった一歳違いの兄弟。ただ先に産まれたというだけで、広大な領地を持ち人々に敬われる筆頭公爵としての座を欲しいままにしている兄オルコット公爵。一伯爵である自分とは天と地ほどの差があった。

 子供の頃から抱き続けていた……妬み僻み。常に人の上に立ち輝き続けるその兄の座るその場所を……奪える時が来たのなら間違いなく奪うと決めていた。

 

 グレゴリー伯爵は嗤う。

 それは昔からの願いが叶うかもしれない機会がやって来た、ある意味心からの笑みでもあった。……しかしその顔は醜悪であった。

 ───そしてその同じ醜悪さを持った3人の息子達も、その事に気付く事はなかった。




 執務室の窓枠には一羽のコマドリが欲に塗れた愚かな親子の様子を眺めていた。




 ◇




「……シャーロットが……見つかった!?」


「……はい。王宮中その話題で持ちきりでございます」 


「……ッ!!」



 ガシャーンッ!!



 エドワルドは余りの苛立ちに側にあった花瓶を叩き付けた。



 王宮の敷地の隅にある、何代か前の国王が王妃の嫉妬から愛妾を隠す為に建てられたという古い小さな離宮。

 そこに幽閉されている第二王子エドワルドは怒りで打ち震えていた。そして元々運動などしていない上にこ約10日程この狭い離宮から外にも出られず、体力が落ちてゼイゼイと肩で息をした。

 しかしその目だけはギラギラと怒りに燃えていて、その情報をもたらした元側近を睨み付け叫んだ。



「シャーロットの恩知らずめ……! 居るのならさっさと私を助けにくれば良いものを! それだから私に見捨てられるのだ、愚か者め……!」


「───まったくその通りでございます」



 エドワルドに情報をもたらした青年はそう言って頭を下げた。そして王子の激昂にも動じず言葉を続ける。



「……令嬢はあの時ベランダから落ち大怪我を負ったそうですが、保護された屋敷から明日にでも公爵邸に戻るとの事です」


「……はッ! 大怪我だと? ふん、いい気味だ! ……私がこんな目にあっているというのに……! もっと苦しむがいい!」



 エドワルドはそう言って、元々は高級だがかなり古いソファにどかりと乱暴に座った。そして苛々と考えもまとまらず、嫌そうに部屋を見渡した。部屋の隅では王妃のグレーの猫が毛繕いをしている。この離宮までも猫は自由に行き来しているのだ。

 ……自分はここから出られないというのに気ままなものだと思うと同時に、両親に対しても怒りが沸々と湧いてくる。



「───父上も母上も、私を守ってはくださらなかった……!」


「殿下……! いいえ、陛下は公爵令嬢に騙されておいでなのです! そして殿下を愛するが故に、今はこうして幽閉という形で殿下を守ってくださっているのです。

それにそもそも公爵令嬢さえいなければこのような事には……!」



 元側近の青年の言う自身に都合の良い言葉に、エドワルドは目の色を変えた。



「───そうだ。私が父や母に叱られこのように狭くて古臭い所に押し込められているのは、すべてシャーロットのせいなのだ……! 

クソッ……! このままあの女だけが元の生活に戻るなど、決して許せぬ……!」



 エドワルドはシャーロットへの憎しみを募らせ爪を噛んだ。



 ◇



 ───オルコット公爵邸。


 王都の王宮のすぐ側にある広大な敷地に立つ壮麗な屋敷。

 美しく広がる庭園には美しい鳥達も集う。……そしてまた一羽のコマドリが飛んで来た。



 その屋敷のベランダに立つ黒髪の美しい女性が伸ばしたその腕に、引き寄せられるように一羽のコマドリが止まった。



「───いい子だ」



 黒髪の魔女ブレンダは満足そうに微笑んだ。







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