タバコの残り香
あああ。大失敗。
都内でもっとも古い「ロック喫茶」。
そこのオーナー様。
取材とかもあまり好きではないとは知っている。
近年は調べられるけど、インターネットとかなかった時代には、情報があまりなかった場所。
なのに、そのオーナー様となぜか話すことができた!
そして、20分ぐらい引き留めてしまった!
相手がソワソワしていたのは、わかっていた。
だが、千載一遇のチャンス!と我慢できなかった。
いま、逃げるように店を出て、ものすごく反省している。
あああ、やらかした。
しかし、とても面白い話を聞けた。
特に気になったのは「技術のその先」について。
技術が上手いだけではなく、その先があること。
無形な「もの」を形成する「何か」。
一体、何があるのだろう?
それは、俺が探しているものに近いのだろうか?
とりあえず、電車の中で行動を振り返る。
へし折ったフラグをペシペシしながら。
ここでは、ナポリタンという、それは過去、純喫茶という場所で食べられていた料理を食べた。
「お席にナポリタン、置いておきますね」
夢中になってしまう、調べ物にお話。
今、調べている物語の主人公。その調べ物のひとつ、サインを探しに、今日は都内で最も古い「ロック喫茶」にきた。
「地下見ます?」
気持ちのいい声と雰囲気の店長さんをじっと見ていたら、余程怪しい人に思われたのかご許可を頂いた。
まあ、食べる前にサインの場所を聞く客である。ホスピタリティの素晴らしさ。お酒飲めないからホットミルク。そんな客にも大変優しい。
サインや場所も気になるが、このお兄さんも気になる。失礼でない範囲がわからないけど、ちょっと聞いてみた。
だいぶ特殊な場所の店長さん。アルバイトから店長さんになるとか、優秀な方でした。
まあ、そうだよね。サインの場所に光を当ててくれたり、もう、ファンにはたまらないだろう。
店長さんを質問責めにしながら、地下の音楽を聞く場所から上がってきたら、ナポリタンができていた。
困った。
冷めてしまったこともそうではあるんだが。
ノリで頼んだが、ピーマンが食べれない。
苦味は苦手。諦めて残す。
まだまだ、聞きたいこといっぱい。
お客様もいっぱい。もう無理かな。
今も昔も、現役の社交場。
音楽が染み込んだ机の飴色と無数のサイン。
不思議な場所。居心地は悪くない。
染み付いているのか、タバコの匂いがする。
また、きてみようかな。
冷め始めたホットミルクを飲みながら、そんなことを思っていた。
さっきまで。
完全に出禁。
お忙しいオーナー様捕まえて質問責め。
しまった。後悔先に立たず。
時間が巻き戻るなら、落ち着いて話をさせていただきたかったし、次回、オーナー様がいらっしゃる日を聞きたかった。
とりあえず、謝りたい。
ごめんなさい。
車窓から見える満月を見ながら、取りきれなかった残りのデータを、名残惜しいと悔やんでいる。




