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私の答え

 私は彼を愛している気持ちを受け入れた。だけど、許せないという気持ちが完全に消えた訳じゃなかった。だから、私は私なりの気持ちにけじめをつける方法を考えた。彼自身が考える償いとは別に、必要だと思ったからだ。


 私が考えた方法とは、彼の前で苦しむ様子を見せて、彼に自分がしたことを思い知らせること。定期的に訪れる発作に一緒に耐えてもらう。それが私の考えた彼の償いだった。私も痛みを伴うけど、彼は自分の罪を思い知らされてもっと苦しいはず。


 離れてしまったら、彼は私にしたことを忘れて私だけ苦しむ。そんなのは許せなかった。


 だから、私は辛くても彼と一緒にいることを選んだ。


 歪んでいるとは思う。でも、そもそも歪んだ形で始まったのだ。もう一度初めからやり直したくても、やり直すことなんてできない。

 それに正しい愛の形なんてあるのだろうか。これが私たちの愛の形。それでいい。


 いずれ時間が二人の傷を癒していく。私が苦しまなくなったその時に初めて、私の考える彼の償いは終わる。これはある意味で、私の復讐なのかもしれない。


 でも、その時に私が一方的に捨てられるようなことがあってはならない。それは以前の女性を弄ぶ彼から、何ら変わっていないということ。


 私はそんなことは許さない。


 それでは本当に単なる巻き込まれ損になってしまう。彼を見張る意味でも一緒にいることは必要なのだ。その間に彼が改心しているのか見極めるのだと私は決めた。


 でも、何だかんだ理由をつけてはいるが、結局はただ一緒にいたいだけなのかもしれない。


 そうやって手探りでも、ちょうどいい距離をとりながら二人の関係を築いていければいいと思う。


 社交シーズンが終わり、私たちは再び領地に戻った。本当の意味で、これからはここが私の帰る場所なんだなと思うと感慨深いものがあった。


 ◇


 それからしばらく経った日。私は彼と共に食事をしながら、ふと思い出して口を開いた。


「カイル様は子供が欲しいですか?」


 案の定、彼は吹き出した。また咳き込み始めたので、期待を裏切らない人だと思い、彼のところへ行き背中をさする。


「前にもこんなこと、ありましたね」


 懐かしさに目を細める。でも今はあの時とは違った気持ちで聞いている。咳き込んでいたカイル様は水を飲んでようやくおさまった。


「また君は突然……でも、懐かしいな」


 彼も目を細めて笑う。

 まだ発作は出るものの、こうやって核心に触れる会話をしても耐えられるくらいには私の心は安定してきている。


「それでどうなんですか?」

「ああ、そうだな……今度は君に似た男の子がいいな。賑やかになりそうだ」

「私より貴方に似た方が美形になりそうだからいいと思いますけど」

「いやいや、君に似て可愛い方がいい」


 そんなやりとりをする。まだ閨を共にしていないが、それはいずれ遠くない未来にやってくることかもしれない。


 不安はあるけど、一人じゃない。

 共に私の恐怖と戦ってくれる彼がいるのだ。


 考えてみればおかしなことだ。

 私にその恐怖を与えた彼が、今の私を支えている。

 おかしくなった私は小さく笑った。それを見ていた彼が不思議そうに尋ねる。


「何かおかしいことでも言ったかい?」

「いえ、おかしいのは私たちの関係だなと思いまして」

「そうかな?」

「ええ、そうです。以前の私たちからは想像できなかったでしょう? 二人目はどうする、なんて会話。これで産まれたのが男の子だったら後継ぎですよ? それこそ私の望んだ通りだろうって、あの頃の貴方は仰ったでしょうね」


 あの頃の苦々しい顔が目に浮かぶ。それでもそれ程胸が痛まないのは、私の中で過去になりつつあるからかもしれない。


「すまない……」


 そう言ってまた落ち込む彼。落ち込ませたい訳ではないけど、時々許せない気持ちが湧いてくるとつい口にしてしまう。


 ──貴方はまだ許されていないのだ。


  そんな気持ちを込めて。

 だけど、いつか私は貴方を許すでしょう。結局は愛してしまった私の負け。だから、しばらくは意地悪をすることを許して欲しい。


 まだ私たちの関係は始まったばかりなのだから──。

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