382話 魔界の魔王
暗い夜空に『赤い月』が浮かんでいる。
(前に見たのは黒い月だったか……)
そこから異界からの侵略者がやってきた。
(黒い月は外宇宙と、赤い月は魔界と繋がってるわ)
女神様の御声が聞こえた。
(なるほど、ありがとうございます)
つまりあの赤い月には魔界の魔族たちがいるということだ。
赤い月は移動しているようでゆっくりと大きくなっていく。
こちらに近づいている。
(水の国に落ちたりしないよな……?)
俺は隣で心配そうに夜空を見上げているソフィアのほうに視線を向けた。
「ちょっと、先に見てきますね。…………風の精霊さん」
俺は風の精霊に身体を浮かせてもらった。
一人だけならこの方法で飛ぶのが一番簡単だ。
飛行魔法苦手なんだよね。
「気をつけてくださいね」
「ええ、様子を見るだけです」
俺はソフィアが安心するようなるべく明るい表情で言った。
「じゃあ、私もいくわ!!」
「私もー!」
ルーシーとさーさんがそう言ってくれるのは想定通り。
「じゃあ、俺が先頭で行くから二人はあとをついてきて」
俺が言うとルーシーとさーさんはこくん、と頷いた。
そして、夜の空に向かって上昇する。
上空は少し風があった。
そして赤い月はゆっくりとこちらへ近づいている。
ゆっくりに見えるが、視認できるほどということはかなりの速度のはずだ。
(まさか、本当に落下してるんじゃ……)
ありえないと思うが、月の女神様の前例もある。
警戒はしておこう。
「ねぇ、マコト。このまま飛んでいくの?」
「赤い月って宇宙にあるんだよね? 高月くん」
ルーシーとさーさんに言われ、少し考える。
「んー……、飛んでいくのは微妙だな」
地上から月までの距離は、たしか地球だと38万キロメートル。
こっちの世界の月との距離は知らないが、似たようなものだろう。
「ルーシー、赤い月まで空間転移できるか?」
「む、無理よ! ママじゃあるまいし! 魔力が保たないって!」
断られた。
「るーちゃんのママはできるんだ……」
さーさんが驚きの表情になった。
「俺なら魔力枯渇はないけど、三人で空間転移して失敗したら怖いな……」
「マコトのテレポートって大雑把だもんね」
「…………」
くっ!
まさかルーシーに魔法を大雑把呼ばわりされる日がくるとは。
間違ってないけど!
運命魔法って癖が強いんだよなー。
水魔法と違って。
女神様の影響だろうか。
(誰がクセの強い女神ですって!)
運命の女神様に聞かれていた。
(失礼しました、イラ様。ところであの赤い月に行くための良い方法はありませんか?)
(んー、あんた一人で空間転移で乗り込めばいいんじゃないの?)
(やっぱりそれしかないですか……)
俺一人で乗り込むか。
それとも地上で待つか。
水の女神様からの神託だと『今夜、魔界の魔王が水の国に現れる』だから待ったほうがいいのだろうか。
でも、後手に回るのものな……と思っている時。
「マコト! あれ見て!」
「船がこっちにくるよ!」
ルーシーとさーさんが言う通り、赤い月を背にしてこちらへ近づくてくる物体があった。
「船……だな」
俺はぽつりと呟く。
飛空船ではない。
通常なら海や湖を渡るような帆船だ。
それが何故か、空から落下することなく空宙を進んでいる。
(あれに魔王が……?)
少なくとも巨大な船をまるごと宙に浮かせるような魔法をかけられる者がいるのは間違いない。
俺とルーシーとさーさんは、船がやってくるのを待った。
(でかい……な)
船というより巨大な船の形をした建造物だった。
ローゼス城がすっぽり収まりそうなほどの空中船。
…………ズズズ。
宙に浮く船が、俺たちの目の前で止まった。
船から一人の魔族の女が現れる。
浅黒い肌に長い耳。
ダークエルフだろうか。
そのダークエルフの女性が口を開いた。
「問おう! 貴様たちがこの国の代表か?」
大きな声で聞かれた。
「いや、俺たちはただの冒険者だ。この地を治める王族は別にいる。何の用事だ!?」
俺も大声で返す。
「ならば国王に挨拶がしたい。案内を希望する!」
ということだった。
「「「……」」」
俺とルーシーとさーさんは顔を見合わせる。
(やめといたほうがいいんじゃない? )
(危ないよー)
ルーシーとさーさんは反対のようだ。
一応、今のところ礼儀正しいが魔界からやってきた魔族だ。
急に態度を豹変させて襲ってくる可能性はある。
「悪いが用件をここで聞きたい。水の国の王族と会わせることはできない」
俺が答えると、魔族の女性の表情が変わった。
「貴様! 炎帝ゼパル・パイロクラフト様をこのような場所で待たせるというのか! 無礼者が! ゼパル様にかかれば、このような小さな国、一瞬で灰になると思え!」
やっぱり乱暴者だった。
(んー、精霊魔法で追い払うべきか?)
アポなしで来たくせにかなり威圧的だし、短気な様子。
ただ、特にまだ向こうからの直接的な攻撃はない。
ルーシーとさーさんをちらっと見ると、同じく迷っているようだ。
さて、どうしたものかと思っていると。
――あまり、大声を出すな。地上の民が怯えるであろう
低いよく通る声が響いた。
「ゼパル様! 失礼を!」
女性の魔族が慌てて跪く。
赤い人影が現れた。
身長は二メートルほどだろうか。
長い赤髪に鋭い目の大柄な美丈夫だ。
年齢は三十代に見えるが、魔族の見た目と年齢は一致しない。
大魔王は子供の姿だったしな。
そして、その魔族の一番の特徴は全身が燃えていた。
宙を火花が舞う。
気温が一気に上がった。
(炎の大精霊よりも膨大な魔力と瘴気……)
これが魔界の魔王か。
凄まじい威圧感だった。
古竜の王に匹敵するか、それ以上の。
炎を纏った魔王は、俺たちをゆっくりと見回し、そして視線が止まった。
魔王の目が大きく見開かれる。
視線の先にいるのはルーシーだった。
(なんだ?)
と思いつつ、俺とさーさんはルーシーを護るように前に出る。
ルーシーは警戒するように杖を構えている。
「うちの仲間がどうかしたのか?」と俺が聞こうとする前に。
「ルーシー! おまえはルーシーか!!」
魔王が叫んだ。
「……え?」
ルーシーがぽかんとする
「ルーシー、知り合いか?」
「るーちゃん、知ってる人?」
そんなはずないのだが、俺とさーさんは思わず聞いた。
「し、知らないわよ!」
ルーシーが首を横にふる。
そうだよな。
この声を聞いた魔王は、さきほどよりさらに大きな声で叫んだ。
「ルーシー! 遭いたかったぞ、我が娘よ!」
「は?」
魔王の言葉に、今度こそルーシーが固まった。
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■次の更新は、2026年2月25日です。
■感想返し:
>まさかのルーシーパパ登場ですか?
>ルーシーの父親には熱い戦いを期待してるよ。
→なんで皆さんに先の展開がバレてるん?
未来視持ちの読者さんでしたか。
>アニメ化おめでとうございます!すごく楽しみです!
>やった! アニメ化おめでとうございます めちゃ楽しみ
ありがとうございます。
■作者コメント
信者ゼロの女神サマ コミック10巻の発売日です!
フリアエさんの表紙!! よい!!
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