妾の戦後
妾は七日かけて王都に戻ってきた。
王都の歓迎はすさまじいものであった。
勇者の凱旋ではない。だがフレデリカの城壁で兵士を鼓舞し続けた武勇伝はこちらにも伝わっていた。
しばらく追い返すだけで精一杯だった戦いが久々の圧勝であった。
王都の興奮は数日間続いた。
妾と楓はイワン王に呼ばれた。
部屋に入るとどちらが妾か聞かれたので妾だと伝えると抱きつかれた。
「この国を、フレデリカを守ってくれてありがとう」
イワン王は泣きながら感謝を述べた。
妾から離れると今度は楓に抱きつこうとしたが妾とフレデリカが鉄拳制裁で止めた。
砦の報告が終わると妾と楓は退室した。積もる親子の話もあるだろう。
三ヶ月たった。
覇王の軍の侵攻は一ヶ月たっても二ヶ月たってもなかった。
一度に失うには多すぎる犠牲を払ったのだ。
イワン王は講和の使者を覇王に出した。
覇王は簡単に突っぱねて使者は帰ってきた。
首だけにならず、生きて帰ってきた所を見るとこの間の戦いの覇王の国の少なくない被害が伺いしれた。
軍部の若い者たちは覇王領への侵攻を唱えたが簡単に棄却される。
攻め取れてもその土地を維持できる人口がないのだ。
多少は人類と共存してもいい、と考える魔族はいるかも知れない。そんなのはごくわずかなのだ。
魔族の協力者からの情報を三ヶ月間集めに集めた。
防御魔法使いの圧倒的不足から覇王の国は野生生物から身を守る術を人海戦術に頼るしかなくなり国力をわずかばかり減らしているらしい。
この情報からリスタ王国は国力増強に努めた。
静かな静かな戦争が始まった。
妾は常にフレデリカとハクレンさんと一緒に慰問にまわり国中を動き回っていた。
楓は利き腕による魔法の発動しやすさの違いを魔法省に発表すると研究員に驚かれていた。なぜ今まで誰も気づかなかったのか不思議だったのだが、世紀の大発見らしい。
最近の楓は普段は魔法省に入り浸り城に帰ると妾にデレデレと甘え、妾が公務に行くとそれに付いて行くという生活をしている。
亮は砦で訓練を続けている。
おだやかな日々がまだまだ続くと思ってた。




