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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
9/51

始まりの神社(sideシュン) 02

 「これですか?あまり目立たないですね。」

 「そうですね、もっと目立つように鳥居があるのかと思いました。」

 僕も鳥居を見上げながら、ユウと同じように感じていた。

 僕たちは鳥居の前で一礼し、中に入っていった。

 「お初天神かぁ。久しぶりだな。」

 ヨシ先輩は、懐かしげに境内を見渡していた。

 「近すぎると、案外、来ないもんですね。」

 僕も珍しげに境内を見渡していた。

 「シュン、そうなんだよ。この辺りは、飲みに来ることはあっても、あえて、お初天神に お参りには来ないからなぁ。」

 お初天神は、恋人の聖地といわれるだけあり、境内の至るところに、恋愛関連のご利益で溢れていた。ユウは、恋愛成就の絵馬の前で難しい顔をして立ち止まっていたが、ここに来た目的を思い出したのか、何もせず僕たちの後を追ってきた。

 手水場で手を清めると、僕たちは本殿に向かった。本殿の前に到着すると会長が僕たちに声をかけた。

 「さあ、神社に来たんだから、いったん、気持ちを切り替えて、きちんと神様に向き合うぞ。」

 僕たちは、いつもどおり神社での参拝をすませると一か所に集まり、御朱印をもらうため、社務所に向かった。

 「すいません、御朱印お願いします。」

 社務所に入ると、受付には一人の巫女が座っていた。僕たちがそれぞれ自分の御朱印帳に御朱印をもらった後、会長は、八八の御朱印帳を取り出すと、受付の巫女に手渡した。

 僕たちが固唾をのんで見守るなか、巫女は、普通に御朱印を押すと会長に御朱印帳を手渡した。

 社務所を出た僕たちは、境内の片隅に集まった。

 「会長、なんか、あっけなかったですね。」

 ヨシ先輩は、拍子抜けしたような顔で八八を見つめている。

 「そうだな、何か気付いたことはないか?」

 会長も同じ気持ちなのか、戸惑いを隠せない様子でたたずんでいる。

 「特に気になったことはないですね。」

 僕も八八の御朱印帳に何か変化はないかと眺めていたが、何も見つけられなかった。

 「やっぱり、ただの御朱印帳なんですかね。」

 一緒に八八をながめていたユウが、がっかりした様子で露天神社のページを閉じようとしたが、慌てて手を止めた。

 「あ、待ってください。御朱印が消えました!」

 「なに、確かに元の白紙に戻ってるな。」

 会長も慌てて、ユウの手元を覗き込んだ。

 「みんな、自分の御朱印帳に変化はないか。」

 横からそれを確認したヨシ先輩は、僕たちに自分の御朱印帳を確認するよう言った。

 「ちゃんと押されてます。」

 「僕の方も大丈夫です。」

 僕とユウはカバンから御朱印帳を取り出して確認した。

 「『八八』には普通に押してもだめなのか。何か特別な方法があるのか?」

 自分の御朱印帳も変化がないことを確認したヨシ先輩は、呟いた。

 「どうかされましたか?」

 巫女が、突然僕たちに声をかけてきた。

 僕たちが驚いて、後ろを振り向くと、そこには、どこか普通とは違う気配をまとった美しい巫女が立っていた。

 「いえ、大丈夫です。境内で騒がしくして、すみません。」

 巫女の様子に少し気圧されながらも、会長は毅然と答えた。

 「何か、お困りのことでもあるんじゃないですか?」

 巫女は優しげにこちらを見ていた。

 「いえ、大丈夫です」

 会長は、少し逡巡した後、答えた。

 「そうですか、ここは人を正しく導くための場所です。何かお困りの事があれば、いつで もお声をかけてくださいね。」

 巫女は、僕達に優しく話しかけてくれると、その場を立ち去って行った。僕たちは、どこか呆然と巫女の後ろ姿を見送っていた。

 「さて、これからどうするかだな。」

 気を取り直したように、ヨシ先輩は僕たちの方を見た。

 「それにしても、さっきの人、凄い綺麗な人でしたね。」

 僕は、まだ、さきほどの巫女の登場に驚きを隠せなかった。

 「そうですよね、それに何か神々しい雰囲気で少し緊張しちゃいました。」

 ユウも、いつもの軽口が出ない様子で巫女が立ち去った方向を眺めていた。

 「会長、もう一度、この御朱印帳を調べてみませんか。」

 「そうだな。そこのベンチに座って、調べてみよう。」

 ヨシ先輩の提案に頷くと、会長は近くのベンチを指さした。僕たちは、会長の後ろからベンチの方に歩いて行った。

 「会長、時間ももったいないし、手分けして調べませんか。会長とヨシ先輩はここで、御 朱印帳を調べていてください。その間に僕とユウで境内を調べようと思います。」

 ベンチの手前まで来たときに、僕は会長の後ろから声をかけた。

 「確かにそうだな。じゃあ、境内の長さは二人に任せるよ。何かわかったら、ここに戻っ てきてくれ。」

  僕の提案に賛同してくれた会長は、ヨシ先輩を促しベンチに腰かけて御朱印帳を開いていた。

 「はい、じゃあ、ユウ行こうか」

 僕はユウに声をかけると、境内の調査を開始した。


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