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八八冒険記  作者: 夢形えいて
1章
37/51

二人での御朱印巡り(sideマナブ) 04

「お待たせしました。到着いたしました。」

 俺たちを乗せたバスは、入り口に大きく華遊と書かれた旅館の中に入っていった。旅館は、海に面した大きな敷地の中に立てられており、広い庭もあった。

 「大きな旅館ですね。しかも景色もすごくいいですね。」

 予想以上に豪華な旅館に驚きながら中に入っていった。

 フロントで手続きを終えた後、仲居の案内に従って部屋に向かった。俺たちとリンさんは、別フロアの部屋が予約されていたが、知り合いであることを伝えると同じフロアになるように変更し、さらに夕食も俺たちの部屋で一緒に食べられるようにしてくれた。明日の調査の相談もしたかったので、旅館の対応は助かった。

 俺たちとリンさんの部屋は廊下を挟んで向かい合わせだった。

 「こちらのお部屋になります。お食事の時間は何時がよろしいですか。」

 仲居は、俺たちとリンさんを交互に見ながら、食事の時間を聞いてきた。リンさんに確認し、19時から食事にしてもらうことにした。

 「かしこまりました。それでは、ごゆっくりお過ごしください。」

 仲居は、一礼すると去って行った。

 「では、リンさん19時になったらこちらの部屋までお願いします。今日は、色々教えていただきありがとうございました。」

 「こちらこそ、楽しい時間をありがとうござました。では、後程、お伺いさせていただきます。」

 そういうとリンさんは、自分の部屋に入っていった。リンさんが部屋に入っていくのを見送った後、俺たちも部屋に入っていった。

 「わぁ、広い部屋です。これなら3人でゆっくり食事ができますね。」

 「そうだな、奮発して広めの部屋を予約していてよかったよ。」

 ユウは、荷物を部屋の隅に置くと、テーブルの上にある旅館の案内を手に取った。俺も荷物を置くとテーブルの上に用意されたお茶を二人分入れてユウに手渡した。

 「ありがとうございます。温泉は、本館の2階にあるみたいですね。一息ついたら夕食前に温泉に行きませんか。」

 「そうしようか。」

 部屋に用意されていた和歌山の銘菓を食べながら、少しの間、休憩をしていた。

 「もう18時だし、そろそろ温泉に行こうか。」

 風呂の用意をすると2階にあるという大浴場に向かった。大浴場は、その名前にふさわしい立派な温泉だった。中には大きな檜の風呂や露天風呂があり、他にも客はいたがゆっくりと入ることができた。風呂の他にサウナにも入り、完全にリフレッシュすることができた。

 温泉から戻ってきてしばらくすると扉をノックする音が聞こえた。

 「リンです。」

 「リンさんどうぞ。」

 部屋の扉を開けると、そこには浴衣に着替えたリンさんが立っていた。リンさんも温泉に入ってきたようで、少し上気した感じであった。おもわず、湯上りのリンさんの姿に見とれてしまっていた。

 「マナブさん?」

 「あ、すいません。どうぞ入ってください。」

 動揺を隠すようにリンさんに背を向けて部屋に先に入った。

 「リンさんいらっしゃい。リンさんも温泉に入ったんですね。すごい大きなお風呂でしたね。」

 ユウの隣に座るとリンさんに正面に座るように促した。

 「露天風呂も気持ち良かったですよね。女湯からは、海が見えたのですけど、男湯の方はどうだったのですか?」

 「海が見える露天風呂ですか。それは気持ち良さそうですね。こっちは、街中の夜景が見えましたよ。」

 ユウとリンさんが露天風呂の話で盛り上がっていると、扉をノックする音が聞こえた。

 「お食事をお持ちいたしました。」

 扉を開けて仲居を招き入れた。仲居は、多くの料理を載せたお盆を手に中に入ってくるとテーブルの上に順に並べていった。

 「料理の説明をさせていただきます。こちらから順に、「おばけ酢味噌、鯨ユッケ、鯨刺身(尾の身、ベーコン、赤身、心臓)で、こちらの刺し身は、マグロ尽くしで赤身、中トロ、大トロ、中落ち」でございます。鯨かつ、鯨ステーキは、のちほどお持ちいたします。最後には、鯨はりはり鍋もございます。お飲み物はどうされますか?」

 「俺たちは、まずはビールにしようと思いますが、リンさんは、どうしますか。」

 「私もお二人と同じで大丈夫です。」

 仲居に瓶ビールを三本、注文した。

 「では、ごゆっくりお楽しみください。」

 そういうと、仲居は空になった盆を手に引き上げていった。

 「美味しそうな料理ですね。正直、予想以上です。」

 ユウは、手元に置かれたお品書きと目の前の料理を見ながら目を輝かせていた。何となく飲み物が届くまで、手をつけるのを躊躇い料理を目で楽しむ時間としていた。

 「お待たせしました。瓶ビール3本お持ちしました。追加の注文は、内線9番でお願いいたします。」

 仲居が去った後、お互いにビールを注ぎあった。

 「今日は、お疲れさまでした。乾杯」

 グラスを軽く合わせビールを一息で飲んだ。

 「あー美味しい。どれから食べようかな。」

 リンさんも待ちわびていたようで、グラスを置くとさっそく前菜に手を付けていた。

 「このお刺身も美味しいですね。勝浦は、クジラだけじゃなくてマグロも有名なんですよね。」

 ユウは、刺身を食べながらご満悦の様子だった。

 「そうなんですよ。私も勝浦に来たらマグロは必ず食べていますよ。」

 「リンさんは、勝浦に来た時はいつもどんなところに泊まっているのですか。」

 いつ日本酒に変えようか、考えながらリンさん話かけた。

 「その時の気分によって色々で特にこれってのはないですね。こんないい宿に毎回、泊まるのは無理なので普段は、もっと小さな民宿とかですよ。」

 リンさんは、アルコールにそんなに強くないのか、うっすらと顔を赤らめながら微笑んでいた。

 「そうなんですね。じゃあ、今回は特別な旅ってことですね。」

 ユウが嬉しそうに話す横で俺は、リンさんの横顔を見つめていた。なぜか彼女が気になってしまうことに戸惑いながら、俺は残りのビールを飲み干した。

 「リンさん、ビールがもうないので次を頼もうと思いますがどうしますか?」

 リンさんは、顔を赤らめているが酔っているような様子ではなく、もしかしたら酒に弱いのではなく、すぐに顔に出るタイプなのかもしれないな。

 「マナブさんは、どうされるんですか?」

 「次は日本酒にしようと思います。確か、和歌山の地酒『熊野那智の滝』があったと思うので。」

 飲み物のメニューを確認しながら答えた。

 「いいですね。じゃあ私も同じものをいただきます。この料理ですと日本酒が合いそうですよね。」

 「会長、僕も日本酒もらっていいですか。」

 ユウがなぜか、ためらいがちに話しかけてきた。

 「そうか、じゃあ『熊野那智の滝』を二本もらおうか。確か、内線で注文だったよな。」

 席を立ち注文に行こうとするとユウが立ち上がり、自分が注文してくるというので任せて、座椅子に座りなおした。その後、『熊野那智の滝』が届くと、飲んで食べて大いに盛り上がった。あまりの料理と酒の美味しさと会話の楽しさにここに来た目的を忘れしまいそうになった。

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