追い詰められるアオール②
デイブック マスコミギルド
アオールは屈辱に震えていた。この俺がアーサー王国に移民できず、他の無能たちは移民を受け入れるのか!!
デイブック民主国に徐々に人が居なくなり、魔物の恐怖に国民はおびえ、さらにアーサー王国への移民者は増えた。これによりさらに魔物の脅威は増え、デイブックの危険度は増していた。
デイブックのマスコミギルドに勤めていたものは、入国審査が厳しくなっていた。
「アーサー王国への入国は出来ない!ヤマトに行くしかないか。おい!お前!ヤマトへの入国ルートを調べろ!今すぐだ!」
マスコミギルド員に当たり散らすように命令し、アオールは安全な上の階へと昇って行った。
「なあ、あいつを置いて、みんなでヤマトに行かないか?」
「ああ、そうだな。マスコミギルドはもう終わりだ。あいつと一緒にヤマトに行ったら俺達まで入国出来なくなる。」
「後、ここにいるとアオールがうるさい。場所を変えて事を進めるぞ。」
アオールの信頼は失墜していた。マスコミギルド員の中には、『アオール死ねばいいのに』と呟く者まで出てきていた。
アオールの居ない所で話は進められ、アオール以外の者全員がヤマト行きの船に乗り込んでいた。
「やっとアオールともおさらばだな。」
「ああ、徐々に港まで向かう陸路も魔物が増えて危なくなってきている。残されたものは苦労するだろうな。」
「残った人を心配している余裕はないぞ。俺たちは無事にヤマトに移民して新しい生活を始める必要がある。」
「確かに、これからみんなで乗り越えて行こう。」
「そうだな。」
マスコミギルドにアオール以外の人間が一人も居なくなった。
アオールは焦った。
みんなどこへ行った!俺の指示を守らず何をサボっている!あいつらは本当にくずばかりだ!!
い、急いでヤマトへ向かわねば!
港へと向かう陸路でアオールは魔物に遭遇した。
「う、うさぎか。まったく、驚かせるな。」
うさぎはアオールにうなり声をあげて突進し、アオールのすねにかみつく。
「ぎゃあああああ!!!」
アオールは必至でうさぎを殴りつけ、何とか引き離した。だが、アオールの叫び声によって魔物が集まってきた。
「き、きぇええええええええい!」
アオールは奇声を発しながらその場を全力で逃げだした。
命からがら逃げだしたアオールは、次の日漁場へと向かった。港と違いここなら魔物も少ない。
アオールは小さな漁船に目を付けた。
「こ、これに乗ってヤマトに向かえば何とかなる!そうだ!誰も使っていない。私の命がだれよりも大事だ!食料を買い込んでこの船で脱出する!」
無い!ないないない!食料が無い!!!
どうなっている!どこの店も食料がない!
デイブックの物流は機能を失いかけており、店に食料が運ばれなくなってきたのだ。もし運ばれて売りに出されてもすぐに無くなる。
食料が不足すると、ため込んで隠そうとする。それが人間の心理だ。
信頼を失ったアオールに食料を分け与える者は誰一人として居なかった。
アオールは家にある食べ物をかき集めて漁場へと向かう。
漁船を物色し、魔道具のついている小さな帆のついた船に乗り込んだ。
帆から魔道具の力で後ろに風を送ることで、進む仕組みになっている。
「動いた!よーしよしよし!これでヤマトへと向かえる!」
航海1日目
魔道具が動かなくなった。
「あああ!動かない!なんでだ!動け!動け!」
実際には魔道具のエネルギー切れであったが、漁船の扱い方を良く知らないアオールはそのことが分からなかったのだ。
仕方がない。オールを使って手でこぐしかないか。
馴れていないアオールにとってオールで進むことは難しかった。
「なんだこれは!進まないではないか!」
アオールは何度もオールを蹴って当たり散らした。
デイブックの陸地からほとんど進まないまま一日目が終わった。
航海2日目
「なんだ、慣れると普通に前に進むじゃないか。」
アオールはオールの使い方に馴れ、機嫌を戻していた。
だが、オールを固定している縄が切れてアオールは海へと転落する。
「あああああああ!」
ざばーん!
「ひええええええ!」
アオールは必至でオールにつかまるが、船がどんどん流されていく。
縄が切れた原因はアオールが何度もオールを蹴ったせいだった。
アオールは丸一日陸のあるデイブックに向かいバタ足を続けた。
陸地になんとかたどり着くとアオールは呟いた。
「戻ってきてしまった。」
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