スピードホースの捕獲
薬草と魔物の肉を出した後ウイン一行は魔物を狩りつつ馬の生息地へと向かった。
魔物の肉は結局半分程度しか受け入れられなかった。ストレージの容量が限界でこれ以上受け取れないようだった。
エムルはしばらく俺におんぶされたまま離れなかったため、ベリーとルナだけで魔物を倒す。
「エムル!そろそろ離れろ!中々目的地に着けないだろ!」
「大丈夫です!私の修行が出来ますから!」
「ウインのにおいがするよ。」
すんすん。
こいつ話聞いてないな。
「エムルはどうやって魔王やセイラたちを追い詰めたんだ?」
「僕はまじめに仕事をしてただけさ。」
「エムルは国民を扇動して色々な法整備を進めたけど、そのせいで内政の処理能力を大きく超える仕事をすることになって、途中から文官が倒れだしたのよ。それでもどんどん法整備を前倒しで終わらせていったわ。そのせいでみんなが毎日14時間勤務になってしまったのよ。ひどいときは一日の睡眠時間が3時間になったみたいね。」
「僕はみんなの為になることを進めただけだよ。」
「エムルは自分をウインの元に返さないと、ずっと自爆攻撃を続けるよと言ってみんなをおどしつづけてたそうよ。」
「ウインの元に帰りたいと言っただけだよ。」
「エムルは国民には人気があるし、まともな法整備だから、みんな強く怒ることもできないまま、結局最後はエムルにみんなが屈して、今ウインにおんぶされているわ。」
「エムル、ほどほどにしろよ。」
こうして俺たちの移動は大きく遅れた。
「馬がいたぞ。あれを弱らせてテイムすれば良いんだよな?」
テイムは斥候ジョブの者が使える。
テイムできるのは俺とルナだけだな。
「ちょっとやってみる。」
俺は馬を殴りつつテイムをかけていく。
テイムが成功すると、馬はおとなしくなった。
成功率20%くらいか。
「私もテイムしたいです。」
「やってみよう。俺が殴って弱らせていくからルナは後ろからテイムしてくれ。」
「分かりました!」
「テイム!テイム!テイム!」
ルナがテイムをかけた馬たちはすべてルナに近寄り人懐っこい反応を示した。
ルナのテイム、100%成功してないか?
俺は焦りだした。
「もっとテイムをかけてほしい。」
「分かりました。テイム!テイム!テイム!」
やっぱりだ!ルナのテイムは100%成功していた。
いや待て!俺がたまたまテイムを失敗し続けただけじゃないのか?もう少しテイムを続けてみよう。
「テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!テイム!」
ど、どうだ?
テイムを成功したのは1体だけか!
テイムの成功率はレベルもあるが、本人の魅力によって決まる部分が大きい。ルナじゃないとだめなのか。
・・・・・・
「俺が弱らせるから、ルナはテイムをかけ続けてほしい。」
俺は心を無にして馬を弱らせた。
「もうMPがありません。これ以上のテイムは無理です。」
「俺が口でMPを補給しても良いか?」
「だ、大丈夫ですよ。」
こうしてその日はちゅーちゅーテイムをし続けた。
俺はテイムした馬にニンジンを与えようとしたが、プイっと顔を背けられた。
・・・・・・・・・・
ま、まさか!
「みんなちょっと来て欲しい。」
「どうしたのよ。」
「馬にニンジンを食べさせてくれないか。」
「わ、分かったわ。」
ベリーがニンジンを食べさせると馬はおいしそうにニンジンを食べ、ベリーにすり寄った。
「可愛いわね。ウイン?どうしたの?」
「な、何でもないんだ。ルナもニンジンを食べさせてほしい。」
・・・・・・・
結果、俺以外の3人は馬に気に入られ、俺だけが嫌われていた。
え、エムルに敗北しただと!
くやしい!こんな屈辱は勇者パーティーを追放されて以来だ!
「この馬って女が好きで男が嫌いとかあるのか?」
「無いと思いますよ。」
「そっかーやっぱり魅力かー。」
俺はそういって風呂に入った。
嫌なことがあったら風呂に入るようにしているのだ。
その日は2時間の長風呂になった。
次の日
「俺はみんなを呼んでくる。馬の世話は三大天使がやった方が良いと思うんだ。俺じゃ無理なんだ。」
そういって俺は走って西の町へと向かった。
「どうしたんだい?いきなり。」
「スピードホースに気に入られなかったのがショックだったんです。そっとしておいてあげましょう。」
ルナの大活躍によってスピードホースは1500体ほどテイムされ、ディアブロ王国へと送られた。
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