スイーツ姫の謎
「エムルもいなくなったことだし、たまには3人で出かけようか。」
「デザートが食べられるランチがおすすめです!」
「ベリーもそこで良いか?」
「うん。」
「さあ、行きましょう。」
街に出ると子供がルナを指さした。
「あ、スイーツ姫だ!」
さらに近くにいた子供が騒ぎ出した。
「むーんぷりんせすぷりん!」
母親が子供に言い聞かせる。
「我慢しなさい!」
「ぷりんたべたい!!ぷーりーんーー!」
だが子供は泣きだした。
「ムーンプリンセスプリンとは何ですか?」
ルナが母親に魔眼を使って質問する。
「な、何でもありません。子供の言うことです。失礼しました!」
母親は子供の口をふさいだまま走り去った。
「この街で何かが起きています!すぐに調べねば!」
「まずは食事だ。それからにしようか。」
ルナは食事の後魔眼を使って街を調べた。
日が落ちるころルナが帰ってきてベッドでうつぶせになり、枕に顔をうずめていた。
「ルナ、どうした?」
「魔眼を使いすぎて、目が痛いです。」
「うん。無理しない方が良いぞ。」
「どうやら私は、スイーツ姫と呼ばれているようです。」
「そっかー。」
ぴったりだな。ネーミングセンスに光るものを感じるぞ。
ルナはうつぶせの状態を崩さないまま話を続けた。
「ただ、ムーンプリンセスプリンのことはまだ分かっていません。」
「普通にお菓子だと思うわ。どこかに売ってるのよ。」
「私もそう思いましたが、3大スイーツ店を調べてもそのような商品は発見できませんでした。」
「ムーンプリンセスか。明らかにルナのことだよな。」
「謎が解けません。」
「ケーキでも食べて少し落ち着こう。」
ルナはむくりと起きてケーキを1ホール完食した。
ニコニコとおいしそうにケーキをほおばる姿はやっぱりスイーツ姫だった。
次の日
「ウインも私のことをスイーツ姫だと思いますか?」
ベリーはその場から気配を消して居なくなった。
ベリー早いな!
エムルに鍛えられて危機管理能力が上がってないか?
「ん、考えた人は面白い人だなーと思うよ。」
「ウイン。私の目を見てください。」
「目の調子は大丈夫か?俺がヒールをかけよう。」
そういってルナの目を塞ごうとするが、ルナの手に阻まれた。
「私がスイーツ姫かどうか?『はい』か『いいえ』で答えてほしいです。」
明らかに魔眼を使っているな!
俺は観念した。
「スイーツ姫は似合ってると思うけど、そこがルナの愛されポイントでもあるから気にしなくてもいいと思うぞ。」
「ウインにまでそう思われているとなると、みんなにそう思われていますね。」
ルナは深刻な顔をしていた。
そこにホープ大臣がやってきた。
「ルナ様、スイーツコンテストの審査員が1名急遽欠席となってしまいました。ぜひともルナ様に代わりをお願いしたいのです。今回のテーマはロールケーキ対決です。王女であるルナ様に参加いただければ主催者側の顔もたちます。皆さんを助けると思ってぜひ参加いただきたいのです。」
「そうですか。そういう事なら仕方がありません。皆さんの顔をつぶさないために私が参加します。」
「ルナ様!ありがとうございます。」
ルナは嬉しそうにスイーツコンテストに向かって行った。
やっぱりスイーツ姫だな。
ルナがスイーツコンテストから帰ると俺ともう一度3大スイーツ店に向かうことになった。
1店目の店に入り、ルナの姿を確認すると、店員は急いでルナの前に立った。後ろでは何やらごそごそと隠ぺい作業の指示が行われていた。
俺は真っすぐ裏の隠ぺい現場に向かうと、
スイーツ姫のタルトという札を見つけた。
俺はその札を目にもとまらぬ速さで奪った。
「おーい!ルナ!これを見てくれ!」
店員は俺とルナの間に強引に割り込んだ。
「ケ、ケーキなどいかがですか!?ルナ様にぜひご試食いただきたいのです。もちろん料金はいただきません。そうだ!せっかくなので無料でケーキをお渡しします。いつもルナ様にはお世話になっていますからね!ささ、お選びください。ルナ様の後ろのケースの中にあるものからお選びください。遠慮はいりません。どうぞどうぞ!ルナ様の後ろのケースを見ながらお話ししましょう。」
明らかにルナの視線を後ろにやろうと誘導してるし、やたらと饒舌になったな。
そんなにばれたくないのか。
スイーツ姫のタルトの表記はすべて撤去されており、その動きは熟練の職人を思わせた。
ルナがケーキを夢中で見ていると、店員が俺に、『い・わ・な・い・で・!』
というジェスチャーをして必死で謝っていた。
そこまでするか?今回は言わないでおこう。店員さんが必死すぎる。
言うのも悪いような気がしてきたのだ。
ルナは帰った後にタルトを1ホール完食していた。
食べていたのはスイーツ姫のタルトだ。
本人にばれないように店員は包む箱を普通の物に変えて、ルナにばれないように万全の偽装がされていた。
ルナのことがかわいくて俺は後ろから頭を撫でた。
「な、なんですか?」
「ルナがみんなに愛されるのもわかると思ってな。」
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