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エムルの暗躍

ベリー。

女子会の後恥ずかしがり屋さんが悪化してるな。少し恥ずかしがらせてみたくなってきたぞ。


そこに100人隊長が入ってきた。


「ウイン殿!至急王城までお越しください!」

今夕方になって暗くなってきたところだ。

こんな時間に呼び出しか。

緊急事態だろう。



「なんかわからんけど行ってくる。」


「僕も行くよ。」


「いえ!ウイン殿一人だけでお越しください!」

100人隊長は焦っている様子だった。


「俺一人で行ってくる。」





王城内の円卓会議室

この円卓会議室はアーサー王国全盛期に12人の騎士と王が円卓を囲んで話し合いをした名残で今も使われている。

石の椅子が12席あり、部屋自体広くないので、大人数の会議には向かない。

俺も入るのは初めてだ。


中に入ると、セイラ、ホープ大臣と文官が4人居た。


セイラは俺の顔を見ると泣き出して抱き着いてきた。


「助けてください!もう無理です!うええーーん!」


セイラがこんなに泣くなんて!

しかも俺に抱き着いてくるってよっぽどだぞ!


「何があった!」


「その前に人払いをします。後は下がってくれ。」

文官はホープ大臣に礼をして、ウエイターのようにスマートに去っていった。


「何があったんだ!」

俺は真剣にセイラを見つめた。




「エムル様が!婚姻届けを改悪しようとしてるんです!」







「ん?」

意味が分からないぞ。婚姻届けを改悪?どういうことだ?

重要性が全く分からないんだが?


「ごめん、もう少し詳しく聞かせてほしい。良く分からなかった。」


「婚姻届けの紙に女性側を奴隷にする項目を追加したんです!」


「それって、男と女が結婚したら女が奴隷になるってことか?」


「婚姻届けの欄にチェックをすると女性が奴隷になります。」


「そういう文化でもあるのか?」


「一部ではあります!」

ん?なら問題ないんじゃないか?

もっと聞いてみる必要があるな。


「どういう問題があるんだろ?」


「今度は婚姻届けのチェックを入れないと自動的に女性を奴隷にするように改悪しようとしてるんです!」


「エムルが動いて改悪しようとしてるのか?」

説明がいつもより分かりにくい。

セイラがいつもより取り乱してる。


「そうです!」


「婚姻届けを出すと、知らないうちに女性側が旦那の奴隷になってしまうことは十分考えられます。」


「緊急事態だな。わかってきたぞ。ただ、わからないのが、どうしてエムルを止めないんだ?」


「エムル様は却下されないギリギリの条件を狙って法律をねじ曲げようとしてくるんです。」

なるほど、エムルならやるな。そういう事をする奴だ。


「しかも、魔王様の政務を一時的に一気に増やしてその中に婚姻届けの件を紛れさせてくるんです。」


「う、うん。魔王の政務の時間はいつもはどのくらいで、エムルが仕掛けてくると魔王の政務時間はどのくらいに増えるんだろ?」


「日で言うと、魔王様の通常の政務時間は6時間ほどです。ですが、エムル様の計略によって、魔王様の政務時間は14時間ほどに増えます。」


「なんだと!6時間の仕事を14時間まで増やした挙句にトラップを仕込んでくるのか!」


「私も毎日仕事漬けにされてもう限界です!」

あ、これ魔王が怒って俺になんとかさせようとしてる案件だな。

でも待てよ?


「そんなことしたらエムルが魔王に怒られるんじゃないか?」


「打たれ強いんです。」


「ん?」


「エムル様は異様に打たれ強いんです!!何度怒られてもゾンビのように起き上がってきます!ウイン様!何とかしてください!!」


「確認なんだけど、エムルが仕掛けてくる政務時間を増やすやつは全部必要な仕事なんだよな?」


「はい、エムル様は後回しにできないことをうまく調整して一気に仕掛けてきます。」


「うーん。エムルは俺が怒っても嬉しそうにするし、普通の対応はダメなんだよな。あ、最後に一つ。これ大事なんだけど、なんであいつはこんなふざけたことに全力を出してるんだ?」


「エムル様はウイン様の奴隷になりたいんです。自然な形で奴隷になろうとしているんです。」


「あいつおかしいんじゃないか!?みんなを巻き込むなよ!」

そういえばエムルとの婚姻届けを出していないし、せがまれてもいない。

あいつ裏でこんなことやって条件を整えてから事を進めるつもりだったな。

『隷属の紋章を刻む文化があるんだ!』とか言って平気で俺をだましてきそうだよな。

あいつドMだし!

断固止める!あいつの思うようにはさせない。


「ちょっと案を書きたいから紙とペンを出す。」

俺がストレージから紙とペンを出そうとした。


「私が書記をやります!」

ホープ大臣がさっそうと準備を済ませる。


「ありがとう。エムルは何重にも防壁を張らないと止められない。一つ目の案だけど、アーサー王国から文官をもっと派遣できないか?文官を補充すればある程度政務の処理能力が上がると思うけどどうだろ?」


「十分な文官の派遣は無理ですが、追加で100人以上は派遣できると思います。」


「セイラはどう思う?俺内政はわからないし。」


「良いと思います。」


「後エムルは罰としてしばらくディアブロ王国で政務漬けな!俺の命令でセイラが連れていく方向で頼みたい。」

俺には心残りがあった。前にエムルを魔王に投げ飛ばして俺は素早く帰るという計画を奴は阻止した。だが今となっては流れが変わった。魔王おそらくは激おこ中なのだ。

エムルを突き返して政務漬けにしても反対しないだろう。

この際さらに魔王の政務時間を6時間から5時間に削減するまで帰っていけないルールをねじこむぞ。


「分かりました。」


「今後は四天王や魔王から定期連絡をほしい。なんかあったらエムルが本気で嫌がる方の罰を与える。」


「分かりました。」

セイラの顔が少しづつ明るくなってきた。

まるで絶望の淵から希望を見い出したようだ。


「後エムルは四天王と同格に格下げしよう。魔王と話をしてすぐに決めてくれ!」

エムルは魔王、俺に続いてディアブロ王国のナンバー3だったが、一個下の四天王と同格にすることで職権乱用を防ぐ狙いだ。

あいつは有能だが性格に難ありだ。いや、難がありすぎる。


「分かりました。」


「エムルは魔王の政務時間が5時間に改善されるまで魔王の下で政務漬けの刑にするか。一つ問題があるとすれば、俺がエムルを取り押さえようとすると、エムルが喜びそうなんだ。うまくいけばスリープで眠らせることはできるかもだけど・・・・あいつには間違ってもご褒美を与えない方が良いぞ。」


「アカとオガを連れてきます。」


「うん、それで大丈夫だろう。他に案はあるかな?ホープ大臣は何かないか?」


「私の立場でうかつに発言するのはよろしくないかと・・・」

ホープ大臣がエムルの罰を考えるのは、他国の姫の罰を考えることになりかねない。

魔王だから大丈夫だとは思うけど・・・

慎重になるのは当然か。


「すまない。全部俺が出した案だ!セイラはすぐに動いてくれ!」


「はい!」

セイラは俺に抱き着いたままだった事に気づき、慌てて俺から離れた。



「セイラ、もう一度俺の胸に飛び込んで来て良いんだぞ!」


「結構です!」

セイラはいそいそと部屋から出ようとした。


「待て!ホープ大臣のメモを持って行ってくれ!」


セイラは俺から距離を取りつつメモを受け取った。

異様に素早い礼をして部屋から出ていった。

セイラは最後まで取り乱していたな。






◇






「いやだーーーー!僕はウインと一緒にいるんだーーー!」

エムルは必至で抵抗していたが、アカの影の騎士まで使って強引に取り押さえられていた。


なんかこんな光景見たことあるぞ。

孤児院の時の子供な。5歳児か!


俺はアカ・オガ・セイラに連れていかれるエムルを見送った。


俺は笑顔で手を振った。




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