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英雄オガ

「みんなでディアブロ王国の西の町に来て欲しいみたいなんだ。」


「なんの用事なんだ?」


「僕とウインに渡したいものがあるからぜひ来てほしいみたいなんだ。」


「いや、行くよ。行くけども、最近2国間の行き来多くないか。」


「確かに多いね。でもそのおかげで交易がはかどっているんだよ。」

俺は国を移動するときに交易品を大量に持っていくようにしていた。


「まさかそのために!」


「冗談はこのくらいにして、早速準備に取り掛かろうじゃないか。」

エムルに冗談を止められるとなんかむかつくな。

お前冗談以上のことを言いまくってるだろ!

怒るとエムルは喜ぶし、エムルの思うつぼなんだよな。


「どうしたんだい?僕を攻めたいなら自由にして良いんだよ?我慢することは無いんだ!」


エムルは少し期待したように俺に近づいてくる。


距離が近い。


エムルは怒っても嬉しそうにするだけだから逆効果なんだよな。俺は呪文のように心で唱えた。


怒れば味をしめてもっと俺を怒らせようと色んな所に種をまいておくようなやつだ。


反応しないほうがいい。


「準備を始めようか。」





◇





ウイン一行が到着すると、兵士がざわつきだした。

「皆様、長旅ご苦労様です。今日は宿でごゆっくりお休みください。」


ルナの好きなケーキ、エムル用のコーヒー、みんなの好きそうなものが多く用意されていた。


「今日はゆっくり休もうじゃないか。」


ルナはケーキをじっと見ていた。


「お菓子タイムにするか。」


「それは良い考えです。一緒に食べましょう。」


「それと明日は式典があるらしいんだ。服装は自由だけど不参加はだめだよ。」

ディアブロ王国は大雑把な人が多く、形式にこだわる人は少ない。

式が苦手な俺としてはうれしいが、できれば式を無しにしてほしかった。



「分かったわ、それじゃ、お菓子を食べましょう。」


「ふむふむ、このケーキは前よりもレベルが上がっていますね。」

ルナはアーサー王国の3大お菓子店のメニューをすべて制覇している。

人口の少ないアーサー王国では王族も庶民と同じものを食べる機会が多い。

ルナの場合はお菓子に特化しすぎている気もするが、楽しみは人それぞれだな。


「言われてみれば、前よりおいしい気もする?わね?」


エムルはいつものようにメイドプレイを楽しんでいた。


「これもうまいぞ」

そういって、スプーンでルナとベリーに食べさせた。


エムルは素早くこっちまで来た。


「僕にもスプーンですくって食べさせてほしいんだ!出来れば冷たい目で強引に口に入れてほしいんだよ。」


「後半の注文は聞かないからな。」


エムルにも食べさせた。


「後半の注文は聞かないからなっていうその顔!最高だよ!」

エムルは身をくねくねとよじらせた。


くそ、罠にかかったか!!





「サウナもあって、風呂もある。最高だな。」


俺は早めの風呂を済ませて風呂上がりの牛乳を飲んだ。


ゴブリンの侵攻とかあったけど、飢餓問題が解決したよな。


アーサー王国もディアブロ王国も確実に前より豊かになっていた。






3人は風呂が好きだからしばらく戻らないだろう。


少し街を歩いてみよう。


アーサー王国をベリーと一緒に観光したときに、俺は街をゆっくり見ていないことに気づいた。


ディアブロ王国の街も少し回ってみようと思えた。


外を見まわすと、ものすごい数の建物が同時進行で建てられていた。

ここを首都にするつもりなのかもな。


俺は屋台を回り、片っ端からちょっとずつ食べ物を買って、気に入ったものを大人買いしてストレージに収納した。

周りからはじっと見られていたが気にしない。



もう夜だから屋台もしまるな。帰ろう。






俺が宿に帰るとエムルが抱き着いてきた。


「最近一緒に眠れてなかったんだよ。今日のベッドは大きいんだ。みんなで眠れるよ。何なら僕が枕になるよ!」


「最近ウインと会えなくてさみしかったです。」


「ウインから良いにおいがするわ!」


「屋台を見て回ってたんだ。」

俺はストレージからクレープを取り出した。


「みんな食べてみるか?」


「食べます!」


「食べるわ。」


「僕には口移しか、食べさせてもらうプレイをお願いするよ。」


「エムル以外は食べると。」

俺はベリーとルナにクレープを渡した。


エムルはしつこく迫ってきた。

「一口だけでいいんだ!」


「分かったよ!」

俺はクッキーを取り出してエムルに食べさせた。

クレープを食べさせると、『まだ全部食べていないんだ!』とか言ってしつこく食い下がるに決まってる!

一口で食べられるクッキーに変えたのだ。


エムルはメイド服を着たまま両手を後ろにしてクッキーを食べさせてもらうプレイを楽しんでいた。

「んああ!」

エムルが変な声を出すがスルーする。


「そろそろ休みましょう。」


ルナとベリーは俺の横に寝て、エムルはみんなの足に体が当たるようにして寝ていた。


「ウイン、僕のおなかに足を乗せても良いんだよ。」


俺は無視して眠った。







今日が式典か。


俺たちはみんないつもの服のまま式典へと向かった。


会場の奥には魔王がいて、左右に四天王が二人ずつ、四天王の手前にオガがいた。


「みんな、よく来てくれた。まずはエムル、前に出てくれ。」


エムルはお姫様っぽい動きで前に出た。

まあ、お姫様なんだけども。


「私の魔王の腕輪を託す。」


そういうと魔王は両腕の腕輪を外してエムルにつけた。

腕輪はエムルのサイズに合わせて大きさを変えた。

あの腕輪って魔法の威力をアップさせるやつだな。


最近エムルの方が戦うことが多いから渡したのかな?

色々考えているうちに俺が呼ばれる。

「ウイン!前に来てくれ。」


俺は前に出た。


「これは生命の腕輪だ。自身のMPをHPやスタミナに自動変換する。さらにMPをチャージしておくことも可能だ。今までの功績に報いるために国の宝をウインに与えたいのだ。」


「これってさ、もらっていいってことか?」


「その通りだ!」


「もらったら俺が自由に使っても良いのか?誰にプレゼントしても大丈夫か?」


「ウインの物だ。自由に使ってくれ。」


「もらおう。」

俺は生命の腕輪を受け取ると、オガの元に向かった。


「オガ、プレゼントがあるんだ。」


俺はオガの腕に生命の腕輪をはめた。


「でもこれは、ウインがもらった物だー。受け取れねーだよ。」


「ああ、だから俺の好きなようにオガにプレゼントしたんだ。」


「なんでおらに!?」


「オガはこの国を守った英雄だろ。」

俺はオガにつけた腕輪を掲げた。


「みんな!英雄オガに拍手を!!」


ぱちぱちぱちぱち


「うおーん!うおーーん!」

オガが号泣する。


ふう、終わった終わった。って言いたいところだけど!


さっきから魔道カメラがカシャカシャうるさい!


「クロノ!最初っからずっとカメラがうるさくないか?」


「我慢してください。私は英雄をたたえるための褒める記事を書いていくと決めているんです。」


「そういうことじゃないだろ!」


「オガさんに腕輪を送ったその心を詳しくお聞かせください。」


「魔王、式典は終わりで特に用もないよな?」


「ああ、大丈夫だ。」


「アーサー王国からの交易品をすぐに受け渡して帰りたい。」


「分かった。すぐに用意する。」


俺はクロノを無視して速攻で帰り支度を進めた。


クロノはしつこかったが、俺はかかわらないようにした。




◇





「ウイン様たち、もう帰ってしまいましたね。」


「セイラ、さみしそうだよ?」


「そういう話じゃありません!」


「宝はオガの物になったか。」


「おら、魔王様に返すだよ。」


「いや、受け取ってくれ。確かにオガと生命の腕輪は相性が良い。ウインはすぐに腕輪の本質を理解したな。」


「ウインはすごい人だ。」


「そうだな。」

魔王は思った。

ウインのおかげでこの国はとても豊かになり、ウインの動きのおかげで私の政務の時間も大幅に減った。


「ウインに与えるつもりが、与えられてばかりだな。」







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