迫りくるゴブリン
ブレイブはフードをかぶり町に潜入していた。
新聞を見ると、ゴブリンキングの軍団が南から進行しているという記事が目についた。
「これで北の守りは手薄になる!北でまた人や魔物を殺して強くなってやる!」
ブレイブはまたデイブック北部で暴れだした。
◇
マスコミギルド
「南はかなりの被害を出しています。」
ヘイトは少し思案して最終兵器の使用を決断した。
「切り札を使え!魔呼びの魔道具を搭載したオートマタを全機投入して魔物を引き寄せろ。」
「なすりつける国はアーサー王国ですか?」
「いや、魔王国だ!」
南の戦場にオートマタが現れた。
オートマタは人の形をしていたが、中途半端に人を模しているため、気味の悪さを覚える。
255体のオートマタの胸が黒く光ると、ゴブリンがオートマタをめがけて攻撃を開始した。
オートマタはゴブリンを引き連れて北の魔王城を目指した。
だが、ゴブリンの精鋭は魔呼びの魔道具の効果を受けなかった。
「キング、あいつらを追うか?」
「追わない!ほおっておけ!俺たち精鋭はここにいるやつらを狩りつくす!」
3000のゴブリンの精鋭たちは、デイブックの南部に残り、侵略を続けた。
◇
マスコミギルド
「オートマタの作戦はうまくいったか?」
「はい、ほとんどのゴブリンは北に向かって移動を開始しています。」
「ほとんど?というのは?」
「それが、ゴブリンの精鋭部隊は、デイブックの南に残ったようです。数は約3000です。」
「それと、デイブックの北ではブレイブが暴れています。」
「生きていたか!」
「今回もヘイト様のお力でどうかこの国をお守りください。」
ヘイトは自分の力を隠していた。
この国で目立つと批判にさらされる可能性が高いからだ。
だが、アオールはヘイトの力を知る数少ない人物。
「・・・わかった。まずはブレイブからだな。早速向かう。」
「ヘイト様、ありがとうございます。」
アオールが編集室に戻ると、ギルド員が声をかけてきた。
「アオール様、やはりマスコミギルドはヘイトさんが支配しているんですか?」
「それ以上は言うな!聞かなかった事にする。長生きしたければ、余計な詮索はせず、黙々と自分の仕事をこなせ!」
ギルド員は異常な量の汗をかき始めた。
「わ、わかりました!申し訳ございません!」
ヘイトの支配は徹底していた。
内部の不穏な動きをする者を察知すると、その者はすぐに僻地や危険地帯に左遷する。
行方不明になるものまでいた。もちろんすでに死んでいるのだろう。
さらにヘイトは直属の斥候部隊をいくつか持っており、政治、裁判、冒険者ギルド、軍部にもマスコミギルドの人間を送り込み、目を光らせていた。
マスコミギルドは国民に対しての対策も徹底していた。
まず、国民全体を批判する記事は絶対に書かず、魔王という悪者を作り、国民の敵意を魔王にそらす。
マスコミに敵意が向きそうになると、巧みに他の記事を書き、国民の目をそらした。
それでも強力な敵対するリーダーが現れると、徹底的に調べてスキャンダルの記事を書く。何も見つからなければフェイクニュースを流すのだ。
リーダーさえいなければ組織が瓦解することを良くわかっているのだ。
それでもつぶせなければ、暗殺する。
暗殺の仕方も巧妙だった。
ある冒険者を暗殺する際は、人気のない森で暗殺し、その後にその森から魔呼びの魔道具を使い魔物を溢れさせ、『この森は危険地帯!』という記事を流して、みんなの疑念が向かないよう徹底した。
さらに政治家には法案を通すように裏で圧力をかけておきながら、法案が可決されると、国民と一緒に政治を批判する記事を書き、政治家の責任にした。
徹底的に国を掌握していたヘイトが直接動くというのはまさに最終手段だった。
◇
魔王城
魔王はセイラに連絡を受けた。
「20万のゴブリンがこちらにくる・・・か。」
「はい、ウイン様とアーサー王国に援軍の申請は出しましたが、ここまでの距離が遠すぎて援軍が間に合わない可能性が高いです。」
「援軍の到着は遅れるか。今すぐに国民の避難を開始する!西の街を目指すぞ!」
魔王たちの避難は迅速だったが、ゴブリン軍団の進行も早かった。
「このままでは追い付かれる!私と四天王、オガの6人でしばらく敵を引き付ける!」
西の町の途中にある防壁のある町で、たった6人だけでの足止め作戦が始まった。
町の人間は一人残らず西へと避難させた。
町の東門にゴブリンが迫った。
「来たか!|マジックタイム《魔法詠唱を一定時間不要にする》!ブラックホール!」
魔王の両手から2つの黒い球体が発生し、防壁の外に居るゴブリンへと放たれた。
2つの黒球が、ゴブリン達を吸い込んだ。
「MP0!」
魔王ガルゴンの固有スキルで、次に使う魔法のMP消費を無しにするスキルだ。使うのは当然。
「ブラックホール!」
「今回のゴブリンは統率が取れていない!ばらばらに攻めてくるぞ!」
ゴブリンキングがいないため、ゴブリンは統率が取れていなかった。
そのため敵がばらけてしまいブラックホールの効果が薄い。
「あの人形はなんだぞ?」
さっきまで人形の胸が黒く光っていたが、今は光がやみ、まるで魔王たちを盾にするかのように陰に隠れている。
「あの人形がゴブリンを引っ張ってきたようにも見えたが、わからん。」
「あの人形を倒しましょうか?」
「チョコ、あの人形に矢を放ってみてくれ!」
チョコが矢を放つが、人形の一体を打ち抜くと残りの人形は物陰に隠れ始めた。
「難しい。」
魔王「人形は放置だ。倒しきれん!ゴブリンを倒す!」
チョコが魔法の矢を放ち、バンピーが雷の魔法で敵を倒していく。
「だめだよ!東門を壊されるよ!」
アカが東門へと向かう
「オガ!行くんだぞ!」
「ひ!ひいい!」
オガはぶるぶると震えていた。
アカが一人で東門に向かうが、門は破壊され、ゴブリンがなだれ込んだ。
「影の騎士!」
黒いアカが2体現れてゴブリンと応戦する。
オガはおびえながら物陰に隠れていた。
「これ以上はアカが持たない!撤退する!セイラ!足止めを頼む!」
セイラが服をバンピーに渡して青竜へと変身する。
空中からコールドブレスを連射している間になんとかみんなで街を抜け出した。
アカがしんがりを務めてみんなを先に行かせるが、アカの陰の騎士が1体やられた。
ゴブリンはものすごい勢いで魔王たちに迫り、アカの最後の陰の騎士もやられた。
オガ以外の者は疲弊している。
ゴブリンの群れがアカを取り囲もうとしたとき。
「うおおおお!」
オガがゴブリンにこん棒を横に払いゴブリンを吹き飛ばした!
オガはおびえて泣きながらもゴブリンを吹き飛ばし、アカを守りながら西へと走った。
「オガ!助かったんだぞ!」
オートマタの胸が再び黒く光り、ゴブリンを引き連れて西へと向かった。
◇
西の町
防壁が高く丈夫で、防御力の高い町だ。
「西の町だ。みんなよく頑張ったな!オガもよくやったぞ!」
オガは疲れ果てて目に力がなかった。
「ん?人形の動きがおかしいぞ!」
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