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真の英雄

アーサー王国では問題が発生していた。


「で?なんで呼ばれたんだ?」


そしてルナとエムルは俺に抱き着く勢いで体を寄せてくる。


「ベリー、これどういうこと?」


「エムルとルナはしばらくウインと会えなくてさみしかったのよ。」


「僕はここが落ち着くよ。」

「ウイン、久しぶりです。さみしかったんですよ。」


「わ、わかった、で?呼ばれた理由はなんだろ?」


ホープ大臣が深刻な顔をする。

「国の財政が厳しいのです。ウイン殿の株式投資によって会社は発展しました。ですが国の財政は枯渇しつつあります。そこでウイン殿にお願いしたいのは、ウイン殿が投資している株の一部をお貸しいただきたいのです。もちろん返すまでに数年かかり、ウイン様の得にはならないと思いますが、どうかお願いします。」

アーサー王国は橋の整備や農地開拓、移民の受け入れなどの様々な費用をかけて国を発展させたが、思いのほか移民が多く、国の財政が一時的に枯渇しつつある。

公共事業は長い目で見れば経済を活性化させるが、すぐに利益を回収できるものではないのだ。


「俺の株式投資の資金なんかで助けになるのか?」


「なる。」

「なります!」

「なるよ!」

「なります!」


アーサー王、大臣、ルナ、エムルが同じ反応をした。



「ウイン殿の株式投資の株価ですが、10倍以上に跳ね上がっています。この金額は国の運営を左右するほどの金額になっているのです!」

そういえば前エムルが言ってたな。交易で不足しているものを売っているから利益はかなりのものだと。一時的に俺一人で交易してたからその時のが効いてるのか?


「うん、こういうのはどうだろ?今俺が持ってることになってる株券を、俺、エムル、ベリー、ルナの4人に25%ずつで分割して、俺の分はアーサー王国に寄付しよう。」


「それなら私もお父様に差し上げます。」


「ディアブロ王国との友好の証の意味も込めて寄付するよ。」


「私もみんなを助けるために使ってほしいわ!」


4人全員が言った後笑った。


「他の用事はあるのか?」


「ありません。ですが、それではこちらがもらいすぎになってしまいます。」


「俺は、魔物狩りに行ってくる。町の近くに魔物が多くいる場所があるんだ。すまないが後は任せるぞ。経済のことはわからないんだ。みんなにお願いしたい。」


ウインは窓から風魔法を使って一瞬でいなくなった。


「ウイン殿、行ってしまったな。」


「ですな。」


「せっかく会えたのにもう行ってしまいました。」


「ねえ、すこしウインに意地悪しちゃおう。」


「ベリーがそんなこと言うなんて珍しいじゃないか。ぜひ聞きたいよ。」


「ウインには今よりもっと英雄になってもらいましょ!ウインが寄付したことを新聞で宣伝できないかしら?」


「さすがだよ。くっころ女騎士属性がうずいて、次会った時にウインに自然な流れでお仕置きし」

「違うわよ!」

ベリーはエムルの話を遮った。


「ですが良い考えだと思います。ウイン殿はもっとみんなに称えられるべきです。」

「早速演説の準備に取り掛かる。新聞への記事も書いてもらう。1週間特集が組めるぞ。」

王都大臣が活性化しだした。


「え?話が大きくなってるわよ。私はそこまでする気はなかったわ!」


「必要な行いです。!」

「必要なんだよ!」


「どうしよ。もう止められない・・・」









ベリーは演説の檀上に立っていた。

どうしよ。どんどん話が大きくなってる。


ルナの斜め後ろにエムルとベリー、さらにその横にホープ大臣が立っていた。


ルナに魔道マイクが渡され演説が始まった。


「英雄ウインについて、話しておくことがあります。ウインは国家予算の3年分以上の金額を国に寄付してくれました。これにより多くの孤児が救われ、ポーションで病気の皆さんを救うことが出来、道路や家の整備も進み皆さんの生活は一層豊かになります。10年以上かかると言われていた問題をウインは1年以内に解決したのです。私は、私は・・・」

ルナが感極まって涙を流した。


このことで国民の感情に訴えプラスに働いた。


「立派だったぞー!」


「思いは伝わりました!」


国民からエールの嵐が巻き起こった。




エムルは倒れこみそうになるルナを抱き寄せて、マイクを取った。


「ウインはここにいないんだ!なぜだかわかるかい!?今この瞬間も、ウインは戦っているんだ。町の近くに魔物が出て、誰かが殺されてしまうかもしれないから!ウインはみんなが気付かないところでみんなを助けて傷ついているんだ!そしてその魔物を売ったお金で僕たちを助け続けているんだ!!僕は悔しい!国民のみんながウインの苦しみをわかっていないのが悔しいんだ!」

エムルは泣きまねをしながらしゃがみこんだが、国民はすっかり騙されていた。

ウインは鼻歌交じりに余裕で魔物を狩ることが出来るが、そのことは決して言わない。

エムルにとって、ウインの英雄度が上昇することが大事なのだ。



「エムルー。泣かないでー!」


「わかってる!ウインのすごさを俺はわかってるんだ!」


代わりにホープ大臣がマイクを取り話を始めた。


「私は一点だけ皆さんに伝えたいことがあります。ウイン殿が盗賊退治をする時のことです。捕まえた盗賊を強制労働させるかどうかでもめたことがありました。その時は盗賊に強制労働をさせることで国民の批判が集まる恐れがあったのです。その時にウイン殿はこう言いました。『俺が全部の責任を取る!もし批判が出たら俺のせいにして俺を追放してくれ!』と。あの時私は泣きそうになりました。ウイン殿はみんなを守るため悪者になろうとしたのです!ウイン殿のおかげで今盗賊を一掃でき、農地の開拓も進み、安全な生活ができています!!」


ホープ大臣は目頭を押さえた。

泣きそうになっているのだ。


「頭の良い方はお気づきかと思いますが、ウイン殿は真の英雄です!みんなの為に両国の交易路作りの為動き、街道の魔物と盗賊を一掃し、海路の開拓のために船を作り、地味な内政の為尽力し続けました。内政の大切さは頭の良い方にしか理解しにくい部分があるとは思います。しかし、わかる方にはわかるはずです。ウイン殿は真の英雄であると!」


これにより『頭の良い人はウインが真の英雄だってわかるよね?』と言うムーブが完成した。


「俺、ウインは真の英雄だって思ってたんだ!」


「ウインは真の英雄だ。俺頭良いし!」


「俺もわかるぞ!」


「俺も俺も!」





次の日は国王が演説し、新聞ではウインが真の英雄であるという記事が10日間にわたって大きく掲載された。


ウインの真の英雄ウエーブはさらなる高波に乗った。









ウインが街に着くと、明らかにみんなの反応が違っていた。


「英雄ウインの帰還だぞ!」


「あ、しんのえいゆうだ!」

子供も交じってウインを称えた。


「なんだ?何が起きてる?」


ウインはみんなの影の暗躍に気づいていなかった。


最後までお読み頂きありがとうございます!ここまで少しでも、ほんの少しでも面白いと思っていただけた方はブクマ、そして下の☆☆☆☆☆から評価をお願いします!

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