海路開拓
ディアブロ王国からアーサー王国に冒険者を呼び込むには時間がかかる。
内政はエムルやルナ、ホープ大臣にお願いした。
ビリーも広報活動で手伝う事になったようだ。
俺は、アーサー王国西の海路開拓を手伝うことにした。
「一人旅もたまには良いもんだ。」
昔は、多くの船が出入りし、にぎわっていたようだが、今は港と王都の間の街道に魔物がはびこり、船も年々数が減っていったらしい。
今となっては外国との交易はほとんど行われていない。
まずは王都と西の港を結ぶ陸路だが、思っていた以上に魔物の数が多い。
魔物狩りだな。
「魔物呼び!」
色々な種類の魔物が合わせて1000体以上集まってきた。
魔物の数が思ったより多い。
「時間がかかるな。」
アーサー王国王城
「ウォール、ウイン殿の海路開拓の進捗はどうだ?」
ウォールは王に深々と頭を下げながら報告した。
「ものすごい勢いで街道の魔物を狩っているようです。じきに西の港町へと到着するでしょう。報告によれば、あと数日で街道の魔物の討伐は終わるようです。」
「相変わらず、ウイン殿の討伐速度は規格外だな。」
「街道の魔物狩りが終わるタイミングで、ホープ大臣に西の港へと向かってもらうよう協議を進めます。」
「うむ、頼んだぞ。」
ウイン殿のおかげで内政がはかどるな。本当に感謝しても感謝しきれん。
◇
「ここが港町か、港、結構でかいけど、船が少ないな。」
とりあえず、船を錬金術で一隻作ってみるか。
俺は大型船を一隻作っていた。
ウインの錬金術師のレベルは100だ。船の製造も問題なく行える。
港町の人が興味深そうに見ていた。
「あの方は?偉い錬金術師様か?」
「わからんが、きっと偉い人に違いない。1日もかからず船を作ってしまいそうだ。偉くないわけがない。」
船つくりに没頭していると見知った顔が現れた。
「ホープ大臣。ウォールもいるのか。」
「俺はホープ大臣の護衛だ。すぐに帰る。」
「お久しぶりです。早速船作りですかな?」
「うん、どうだろ?8割以上は完成してるけど、何か要望はあるか?」
「いえ、素晴らしい出来です!後は試運転してみて、不足があるか確認するだけですな。完成はいつ頃ですかな?」
「あと30分で終わる。」
「素晴らしい!それでは早速人員の割り当て作業を行います!それでは失礼。」
「俺は帰るぞ。」
「ああ、お疲れ様!」
俺は船作りを終えると、その日は休んだ。
◇
次の日
「まだ試運転を少し行っただけですが、船の評判も良く、問題ありません。」
「ホープ大臣、船はあと何隻必要だろう?もう少しなら作れるぞ。」
ホープ大臣「そうですな。欲を言えば、同じものをあと10隻ほしいです。もちろん難しいとは思います。なので、3隻ほどあれば助かります。」
「10隻か、作るよ。作ったら、港に浮かべておくから、ホープ大臣の方で処理してほしい。」
「あ、ありがとうございます。」
ホープ大臣は人員の割り当てなどで、あわただしく動き出した。
俺も頑張ってみよう。
俺は黙々と船を作り続けた。
ストレージに木材などの材料は豊富に入れてある。
10隻は余裕で作れるだろう。
◇
10隻の船すべてが完成し、ホープ大臣に連絡しようとすると、ホープ大臣の後ろにいる人間が全員起立し、ある者は礼をし、ある者は敬礼した。
「ありがとうございます!これで内政が大きく進みます!」
「いや、俺は箱しか用意できていないんだ。船の運用の方が大変だと思うけど、よろしくお願いします。」
ウインはみんなに頭を下げた。
ホープ大臣は驚いたような顔をしていた。
「それじゃ、俺は街道の奥の方の魔物を倒して、王都に戻るよ。」
ウインは走って遠くへと消えた。
「船を数日でこんなに作って・・・英雄ウイン殿は自分の功績をわかっていないのでは?」
「あれが英雄ウイン・・・これだけみんなを助けたのに、まだ救おうとしているのか。あそこまでしないと英雄にはなれないんだな。」
「あの方のおかげでこの国はどんどん良くなっています。海路開拓によって、海産物や塩、輸入や輸出も大きく前進しました。感謝してもしきれません。」
ホープ大臣は見えなくなったウインの方向にもう一度礼をした。ホープ大臣の目には涙があった。
海路の開拓はホープ大臣の夢だったのだ。
大型船の製造は、多くのコストがかかり、一隻作るだけで1年はかかる。
ウインが大型船の製造という偉業をなした後、船の運用の方が大変と言ってみんなに頭を下げたことが衝撃的だった。頭を下げるのはこちらの方なのに。
私の夢をかなえて、さらに街道の周辺の魔物まで倒してくれるとは、ウイン殿は真の英雄です。
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