孤児院訪問
四天王とベリー・ルナは疲れた様子だったが、エムルだけ笑顔でスライム狩りが終わる。
最後に大きなログハウスを作り、みんなに休んでもらったが、俺が風呂に入るまでに5時間かかった。
みんな、長風呂だった。
スライムに受けた屈辱を洗い流すように風呂とサウナに入っていたようだ。
エムルだけいつもより肌がプルプルしており、テンションも高かったが放置だ。
魔王への報告が終わると、エムルが何やら裏で動いて居た。
当然放置した。
みんなを連れて、またスライム狩りをしたいな。
あれは良かった。
良すぎたと言って良い。
そのころエムルは達成感に満ちていた。今まで準備してきた孤児院が正式に動き出したのだ。
今まで人員の配置、教育、施設、かなりの労力を使いやっと正式稼働までこぎつけたのだ。
そうだ!みんなに見てもらうんだ!
「孤児院に行かないかい?」
「孤児院か、行ってみるか。」
「行く!」
「いきます!」
ウインにみてもらえる。
ベリーとセイラは子供が好きだからね。行くと思っていたよ。
「私も行きます。」
ルナも立候補する。
「ルナ、今日は休んでくれ。顔色がよくないぞ。それにアカ、バンピー、チョコも休んだほうが良い。」
「くっころ女騎士属性を持っているベリーとセイラ以外は、スライム戦の疲労がたまっているようだね。」
「違うわよ!」
「そんなの持ってません!」
「孤児院に行くのは、ウイン、ベリー、セイラ、全部で4人だね!」
俺たちは孤児院に向かう。
「エムル、人としての気持ちを持っていたようでうれしいぞ。」
「もっと罵ってくれてもかまわないよ。」
「話がかみ合ってないわよ。」
セイラは口を閉ざしていた。
それが一番利口だ。
「ん?あれだな。」
子供の反応が多数感じられた。
「そうだよ。さあ、入ろう。みんなに見てもらいたいんだ。」
孤児院の中に入ると院長のエムリアが出迎えた。
「ようこそお越しくださいました。歓迎します。」
エムリアはエムルと同じで頭から羊の角が生えていた。
エムルと雰囲気が似ている。
エムルのお姉さんっぽい感じがした。
「今日はよろしく頼むよ。」
中に入ると子供たちが遊んでいる。
「え、エムルがまともなことをしている!信じられない!」
俺は子供を見て、イメージと現実のギャップに驚いてしまった。
エムルだからだな。
「僕を何だと思っているんだい?」
そうこうしているうちに子供が近づいてきた。
男の子は叫んだ。
「あ、くっころ女騎士だ!」
女の子もそれに続いた。
「セイラとベリー二人のくっころだ!」
セイラとベリーは固まる。
そこに年上とみられる女の子が止めに来た。
「駄目だよ!言っちゃだめ!」
「ほっ」
「まともな子もいるのね。」
二人はほっとしていた。
「本当のこと言っちゃかわいそうでしょ!だから言っちゃだめなんだよ!」
「「!!」」
「そっかー。本当のこと言ってごめんなさい。」
「ごめんなさい」
「違うのよ!本当に違うのよ!」
「エムルお姉さんの言うことは信じちゃだめだよ!」
ベリーとセイラは激しく動揺していた。
エムリアは優しく微笑みながら話しかけてきた。
「私はみんなの食事の用意をしてくるので、皆さんには子供の世話をお願いします。」
エムリアは明らかに人が足りていないようで忙しそうだった。
「やはり人が足りないようだね。もう少ししたら、人員を補充するから我慢してほしいんだ。」
「大丈夫ですよ。それに今、子供の世話をして生活できるのが幸せなんです。」
「俺、食事作ってもいいか?パンはあるから唐揚げとスープを作りたい。」
「お願いするよ、エムリア、ウインの料理はおいしいから問題ないよ。僕たちは子供の世話をしよう。」
男の子は元気にしゃべりだした。
「くっこ、…セイラはどうやって四天王になったの?」
「今くっころっていおうとしたわよね。」
セイラは男の子のほっぺをつんつんした。」
「そんなことない。なさすぎる!」
「エムル。なんで私のことが知られてるの?四天王はまだわかるけど。」
「それはね、勉強のために新聞の内容をみんなに教えてるんだよ。」
素早くベリーが反応する。
「くっころなんて新聞にのってないでしょ!」
「子供は飽きっぽいからね。色々と話を織り交ぜながら飽きさせないように工夫しているのさ!」
「私たちの話じゃなくてもいいでしょ!」
「そうはいっても子供は英雄のようなわかりやすい話が人気なんだよ。どうしてもせがまれてしまうんだ。それと、女の子には恋の話が人気だよ。例えば、僕とベリーとセイラはウインのことが好き、とかね。」
ベリーとセイラが赤くなった。
「あ、赤くなった!」
「だめでしょ!そんなこと言っちゃかわいそうでしょ!」
そう言って年上の女の子は男の子の口を押えていた。
「いいにおいがする。」
男の子がすぐに反応する。
「ウインが唐揚げを作っているんだ。とてもおいしいんだよ。」
「くっころ!からあげ!」
「エムル様、くっころ唐揚げとは何ですか?」
「気にしなくても大丈夫だよ。食事の用意ができたみたいだね。」
食事の用意ができたが、ベリーとセイラは真っ赤だった。
「あの、エムル様、席の間隔が狭くないですか?」
ウインの隣にセイラとベリーが座っているのだが、席は子供用の椅子のため、どうしてもウインと密着してしまう。しかも今日は4人分座る人間が増えている。当然間隔は狭くなる。
「子供用の椅子だからね。ベリーとセイラにはご褒美だよ。」
「二人とも真っ赤ー!」
「なるほど、これがくっころ・・・」
エムリアは納得していた。
「赤くなって二人ともかわいいな。」
俺が声をかけると二人がますます赤くなった。
「もちろん僕もウインの隣に座りたかったけど、ベリーとセイラには喜んでもらいたくて、二人に席を譲ったよ。ドキドキしてもらえたかい?」
ベリーとセイラは無言になった。
「早く食べるぞ。」
「そうだね。」
「「いただきます!」」
男の子は顔をクシャっとさせて、「くっころ!」といった後においしそうに唐揚げを食べていた。
ほかの子供たちも同じようにして唐揚げを食べた。
「これ何?なんなんだ?」
「おいしいものを食べるときは、くっころと言ってから食べるのが流行ってるんです。」
「素晴らしいよ!くっころ属性の本質を理解しているんだ。嫌がるそぶりはするけど本当は押し倒されたいというくっころ魂がよくわかって」
「ストップストップ!子供の前で言うのはやめろ。」
セイラとベリー、疲れてるな。
「ウインがここで二人を抱きしめたら二人はもう何も抵抗できなく」
「エムル黙れ!」
こうしてドタバタしながら食事は終わった。
エムルはウインをじっと観察していた。
ウインのもとに3人の子供が寄ってくる。
「俺はウインだけど、みんなの名前は?」
小さい男の子が大きな声で答えた。
「ぼくねー、リュウだよ。」
小さい女の子は控えめだった。
「私ミナ。」
大きな女の子はさっきのかわいそうでしょ発言をした子だ。
「チウだよ。」
「何して遊ぶ?」
「ちょっとみんな並んでくれ。」
みんなは素直にならんだ。
ウインは一人つづ首をこちょこちょした。
「くすぐったい。」
「あはははは!」
ミナとチウは普通にくすぐられて反応した。
そして最後のリュウ
「ぐ、ほうわああ、ごおおおお!」
リュウはくすぐりに特に弱く、立っていられなくなった。
「リュウってくすぐられるのに弱いのかな?」
「よわいよ!」」
「そんなことない!ぼくつよい!」
「リュウ、もういっかい。」
ウインはリュウをくすぐる。
「だ、だめ。ご、くうぉおおおおお。こー、ひゅうー、こー、ひゅー!」
リュウはくすぐりに弱かった。
ウインの顔が笑顔になった。
その様子をエムルは見ていた。
来たよ!この中で一番いじられるのが好きなリュウ君を瞬時に選び、弱点もすぐに発見したんだ。
君はエリート【S】だよ!
「俺の得意技を見せるよ。」
「とくいわざ?」
「笑顔の魔法だよ。」
そう言ってウインをくすぐった。
「ぐあ!ごおおお!おごおおおおお!」
「ほら!笑顔になったね。良かった良かった。」
「だ、だめ、だめすぎる!」
「え?まだ笑顔じゃないの?そこまで言うならしょうがない。」
そう言ってリュウをくすぐった。
「ぐあ!ごおおお!おごおおおおお!」
「私も笑顔の魔法やる!」
「ふふふふ!」
リュウはみんなにくすぐられた。
リュウの髪はぼさぼさになり、呼吸も荒くなっていた。
「もうダメ!これダメ!だめすぎる!」
「そっかー、違う遊びにしようか。」
「えーーー!もっとやりたい!」
「しょうがない。リュウがそこまで言ってるからね。次は悪の組織ゲームね。」
「アクノソシキ?」
「ま、やってみよう。俺は悪の組織の一番偉い人ね。チウとミナは2番目に偉い悪の幹部。リュウは悪い命令を失敗して逃げ帰ってきた一番下の人ね。」
「ぼくせいぎののヒーローやる!」
ウインはすっとリュウのおなかと首に手を当ててこちょこちょした。
「ごおおおおおおおおお!」
「もう一回言うね。リュウは悪い命令を失敗して逃げ帰ってきた一番下の人ね。」
「ぼくせいぎの、ごおおおおおおおおお!」
リュウがしゃべるのを遮るようにウインはこちょこちょした。
ウインはリュウの脇腹に手を当てたまま言った。
「リュウ、やってくれるよね?」
リュウ「・・・・・や、やる。」
リュウは『くおーーー』と奇声を上げながら、ウインの顔色をうかがう事しかできなくなる。
ウイン「リュウはここに座って、ミナとチウは、両方からリュウの腕を抑えてね。」
みんな言われた通りにして、リュウは押さえつけられた。
「俺が指をパチンと鳴らしたら、ミナとチウは、リュウをお仕置きこちょこちょして、またパチンと鳴らしたらお仕置きこちょこちょをやめてね?」
「「うん。」」
「だめ!それだめ!」
リュウは暴れだしたがミナとチウに抑えられた。
「じゃ、悪の組織ゲームを始めるね。まったく!リュウのやつ!こんな簡単な任務に失敗しよって!お仕置きが必要だな!」
俺が指を鳴らすと、リュウはこちょこちょされた。
「んごおおおおおお」
もう一度パチンと鳴らすとこちょこちょが止まる。
リュウは激しく呼吸した。
「反省してくれたかな?」
「だ、だめ!ずるすぎる!」
「まだ反省が足りないようだ!」
パチン
「ごおおおおおお!きゅ、おごおおおおおお!」
パチン
「反省してくれたかな?」
リュウ「こー、ひゅー、こー、ひゅー。」
そこに人が集まってきた。
「なにやってるのー?」
結果悪の幹部は6人に増えた。
パチン
「んごおおおおおおおお!ぐ、ごおおおおおおお!」
リュウ君はしばらくこちょこちょされる役をやり続けた。
ウイン!すばらしいよ!やはり君は素質があるんだ!
こうしてエムルの観察が終わった。
「夕飯はコロッケにしたいけど大丈夫か?」
「それでお願いします。」
夕飯の準備ができると、ウインの隣にはエムルとリュウが座っていた。
俺はリュウのほっぺをつんつんする。
さっきまであんなにこちょこちょされてたのに、もう気にせず俺の隣に座っている。
子供は純粋で良いな。
「ベリーとセイラは恥ずかしがって君の隣を辞退したよ。」
エムリアが言った。
「くっころ女騎士ですね。」
ベリーとセイラにみんなの視線が集まり、二人とも赤くなっていた。
みんなで食事を食べだすが、
リュウ君は、
「くっころ!コロッケ!」
そう言っておいしそうにコロッケを食べた。
それを見ていたみんなが笑い、みんなまねした。
「くっころ!コロッケ!」
「コロッケ!くっころ!」
そのあと、くっころコロッケが人気になった。
「この孤児院、まともか?エムルの思想に侵食されてない?」
「おかしいわよ!すぐに直さないと!」
「その通りです!」
「細かいことを気にしすぎだよ。これから孤児院をどんどんおおきくして沢山の子供を救うんだ!」
ベリーとセイラを疲れさせて、孤児院への訪問は終わった。
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