勇者パーティーの失敗続き⑦
デイブック民主国、マスコミギルド
ヘイトはアオールに指示を出していた。
「ウインが英雄になったか。本物だったようだな。勇者にウインを呼び戻させよう。」
「勇者にですか?逆効果では?」
「失敗しても構わん。失敗したら勇者はCランクに降格だ。」
「なるほど。そう言う事ですか。」
ヘイトにとって、ウインを連れ戻せても連れ戻せなくてもメリットになる。
成功したらウインを連れ戻せる。
失敗したら失敗の責任をブレイブに取らせ、徐々に退場してもらう考えなのだ。
「他国からの情報によると、ウインは今魔の森の東に居るようです。」
「丁度良い!冒険者ギルドを通して手配を進めろ。」
「分かりました。」
◇
冒険者ギルド
「元勇者パーティーのウインさんをデイブックに連れ戻す依頼が届きました。失敗したらブレイブさんはCランクに降格となります。」
「は?俺が?ふざけるなよ!」
「辞退されますか。ブレイブさんのCランクへの降格の手続きを始めます。」
「おい!殺すぞ!」
ブレイブはギルド員の首を絞めた。
「ぐごおお!」
そこに冒険者が声を上げた。
「おい!ブレイブがギルド員を殺そうとしているぞ!」
「ち、違う!」
ブレイブはとっさに手を離す。
「げほ!げほ!こー、ひゅー。」
「おい!大丈夫か!」
「あ、ありがとうございます。あなたは命の恩人です。」
そこにマスコミが現れた。
「今のやり取りを詳しく教えてください!私が記事を書きます!」
ブレイブは全員を敵に回していた。
ブレイブは依頼を受け、逃げるようにギルドを後にする。
◇
ブレイブは魔の森に入った後、周りの木々に当たり散らす。
くそくそくそ!
俺がこんなお使いのような依頼を受けるのか!
おかしい!あの国はおかしい!
物音を聞きつけ魔物が集まってくる。
「くそがああ!ぶっ殺す!」
ブレイブは魔の森を探索するのに苦戦した。
レアスキル持ちとは言え、斥候のスキルを持たないため、魔物の奇襲を受け続けながらすすんだ。
◇
「ん?またブレイブか。弱ってるな。追い払ってくる」
「待ってくれないかい。ブレイブを一目見てみたいんだよ。」
「私も見てみたいです。魔眼で見極めたいんです。」
「私は二度と会いたくないわ。」
「弱ってるから危険はないだろう。エムルとルナは後ろからついて来てくれ。あいつに近づくのは無しな!」
「分かったよ。」
「分かりました!」
俺たちは撤退の段取りも済ませたうえでブレイブの元へたどり着いた。
俺だけがブレイブの前に出る。
「ウインか!」
「どうした?」
「ウイン。お前がもし、俺のパーティーに戻ってきたいなら、戻ってきても良い。」
「は?」
「昔の事は許そう。お前が戻ってきたいなら戻ってきても良いぞ。」
ブレイブは何を言ってるんだ?戻るわけがないだろう?
駄目だ。何も変わっていない。一刻も早く立ち去ろう。
俺は後ろの二人に合図を送った。
撤退する時に合図を送ることに決めていたのだ。
ルナとエムルは走って撤退した。
「お断りだ!じゃあな!」
俺は走って撤退した。
「お前!誰に向かって口をきいている!!」
あいつ馬鹿なのか?魔の森でそんなに大きな声を出したら魔物がよってくるだろ。
ブレイブは魔物に包囲された。
「やあ、お帰り。」
「おかえりなさい。」
「ああ、ただいま。」
「勇者は、駄目だね。関わっちゃいけない人だよ。」
「ええ、勇者パーティーを抜けて正解です。下手をすれば殺されてましたよ。」
「だよな。」
さっきまで機嫌が悪かった俺だが、みんなに分かってもらえてうれしくなった。
◇
その後ブレイブはボロボロになって町へと帰還した。
「ブレイブさんはCランクに降格です。」
「俺がか?俺がCランクだと!ふざけるなあああああ!」
ブレイブはギルド員を殴り飛ばした。
◇
この事件によりブレイブは謝罪記者会見を開くこととなった
「この度は、一般人の方に対して暴力事件を起こしてしまい、誠に申し訳ありませんでした。」
ブレイブは丁寧に頭を下げた。
当初は謝罪会見だったが、
・ゴブリン戦での逃亡
・ベリー、シー、マインへのセクハラ
・フェイクニュースを流し、ウインを殺そうとした件
・女性への暴行容疑
・パーティーをおとりにして逃亡した件
様々な容疑を何度も何度も何度も追及された。
今まで猫をかぶっていたブレイブは限界を迎えた。
「ふざけるなよ。」
「何と言いましたか?もう一度お願いします!」
「殺す!!ブレイブタイム!!」
ブレイブはマスコミ数十人に殴りかかり、10名以上の死者を出した。
このことで、ブレイブは罪人として一生強制労働となった。
◇
マスコミギルド
「ブレイブか、予想以上のクズだったな。」
「そうですね。」
「ウインか、奴をこの国に呼び戻そう。戻ってこなければこの国の国民を見捨てた悪者になり、戻ってくれば英雄となるように仕向けよう。」
ブレイブという矢面が居なくなったことで、新たなサンドバックが必要になったのだ。
何か起きた際に責任を押し付けるサンドバックだ。
「分かりました。時間をいただければ、最も効果的な記事で情報を拡散させて見せましょう。」
「頼んだぞ。」
「お任せください。早速担当の者と会議を開き、より効果的な案を練ります。それでは失礼しました。」
◇
魔の森
セイラから緊急の要件があった。
「急いでアーサー王国まで向かってほしいです。」
「何かあったのか?」
「アーサー王と大臣から急ぎの用があるとのことです。」
「まさか!」
「ルナ、何かわかるのか?」
「デイブックがウインを取り込もうとしているのかもしれません。」
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