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絶望のドラゴン討伐

兵士たちの希望は完全に断たれていた。


兵士は攻撃を諦め、逃げ惑うばかりだった。その兵士の後ろからドラゴンが殺しにくる。


地獄絵図だった。


兵士は戦う者ではなく、ドラゴンに食われる餌となり果てていた。


ウォールは死ぬ覚悟を決めた。

「メア、出来るだけ多くの者を避難させてくれ。俺がおとりになる。」


「無理ですよ!ドラゴン5体ですよ!おとりにもなれません。一緒に逃げるんです。」


「一体だけでも俺が倒す!」


「無理です!もうろくに動けないでしょう!」


そうこうしている内に、騎士の数は半分以下まで減っていた。









ドラゴンと騎士の戦い前日

アーサー王国王城


「ドラゴンか。倒せば良いんじゃないのか?」


ルナは意を決したように話しだした。

「・・・・この国には、十分にドラゴンに対抗できるだけの戦力はありません。精鋭騎士団1000人で討伐に向かっても全滅する可能性があります。ですが、その精鋭騎士団がドラゴンの討伐に向かいました。」


「俺行ってきても良いか?」


「そうだよ!ウインなら簡単に倒せるんだよ!」


「失敗したら、闇の森に逃げるから迷惑にはならないと思う。」


「・・・・・・・・・・分かりました。お願いします。どうかこの国を救ってください。道は大通りを南に進むだけなので迷うことは無いと思います。」


「じゃ俺行って来る。」


「僕も行くよ!」


「エムルを肩で担いで走ることになるけど、大丈夫か?具合悪くなるぞ?」


「大丈夫さ!むしろご褒美だよ!」


こうしてウインとエムルは南へと向かった。





二人を見送るルナは、固有スキル【魔眼】の持ち主だった。


魔眼の能力は、見た者の本質を完全ではないにしろ見抜く力がある。

ウインの人柄と力を見抜き、ウインに託したのだ。


ウイン様、お願いします。この恩は私のすべてを以て返します。


ですからどうか、みんなの命を救ってください。










ウインはエムルを担いでダッシュしていた。


「エムル、大丈夫か?」


エムルを見るとぐったりとしている。


「エムル、時間が無いから置いていくぞ」


するとエムルはウインの服を掴んだ。


「おんぶ」


「うん、おんぶに変えるか、ただ、転んだ時に受け身を取れないかもしれないけど良いか?この速度だと、下手をすれば死ぬけど?」


「それで頼むよ。」









ルナは王に面会を求めた。

あっという間に王との面会が始まる。

アーサー王は優秀な男であったが、娘のルナを溺愛しており、ルナにはとても甘かった。

「ルナたん、どうしたんだい。」


「ディアブロ王国からの使者、ウイン様とエムル様に、ドラゴン討伐の援軍をお願いしました。」

ルナは、金色の髪と、青色の瞳を持ち、白い動きやすそうなドレスを身にまとっていた。

その美貌から、国民には天使と呼ばれていた。


「今から援軍を呼びに行くのかな?」


「ウイン様とエムル様が援軍です。ウイン様はおそらくウォールを簡単に倒せる能力を持っています。」


「ウイン君の年がルナたんの一個上で、エムル君の年がルナたんと同じだったね?」


「そうですね。若いですが、魔眼で確認した所、強い力を感じました。ウォールを簡単に倒せる力を秘めています。」


王も異常な速度で南へと向かった使者の報告は受けていた。

「なるほど、強いのは分かったけど、今からだと間に合うか分からないね。」


「そうですね。私がすぐにお願いすれば良かったのですが、もしディアブロ王国からの使者に何かあったらと思うと、・・・すぐに決断できませんでした。」

ディアブロ王国からの使者が死亡しようものなら、両国間の大きな問題になりかねない。

慎重になるのも無理からぬことだった。



「責任の話は無しにしよう。今はウイン君たちが、ドラゴンを倒してくれるのを祈るしかないよ。終わってから考えよう。」


「父様、お疲れではないですか?顔色が優れません。」


「ルナたん、心配してくれてありがとう。少し休むよ。」


「ええ、お時間を取らせてしまいました。ゆっくりお休みください。」








アーサー王国南の町は危機を迎えていた。

ウォールとメアも絶望で動きが悪くなる。


「くそ!どうしようもできないのか!」


「短い人生でした。逃げることも出来そうにないです。」



その時、ものすごい勢いで何かが近づいてきた。


ものすごい突風と、砂埃。


目をやるとそこには、


幼さの残る青年と、寝ころぶ魔族の姿があった。









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