10.足の早いお馬さん
俺は遠距離キャラを使うことにした。
シューターだ。
俺の相棒たるバーサーカーをボコボコにしてくれた忌まわしきシューター。
その力を我が物としてやろう。
「遠距離じゃなくて近距離をピックしてくれませんか?」
キャラ選択画面で味方が言った。
だが断る。
俺はシューターをプレイすると決めたんだ。
何者も俺に指図はできない。
俺は構わずシューターをピックして決定する。
「gg shooter」
味方がチャットする。
ggとはくたばれ・しね・ゲームオワタという意味だ。
ふん、今に見ていろ。
試合が終わったとき、お前は吠え面をかきながら俺のシューターに感謝することだろう。
試合開始。
俺はggとか抜かした味方と行動を共にしたくなかったので、一人でマップの隅っこから進軍する。
いた!
ちょうどいいことに敵の脳筋キャラが一人で向かってくる。
何やら槍を振り回す下半身が馬のキャラだ。ケンタウロスだ。
俺はゴリラでシューターに繰り返しボコボコにされた。
これがどういうことかわかるか?
シューターの扱いを完璧に学習したということだよ。
もはや近接キャラなど赤子の手をひねるようなものだ。
ケンタウロスだか何だか知らねえが芸術のような逃げ撃ちで蜂の巣にしてやるよ。
俺の分身たるシューターが華麗に銃を構える。
ズシャアアアアア!!!
滑るような動きで馬が突進してきた。
早えええ!?
俺のシューターの2倍くらい足が速い。
とても逃げ撃ちできずに俺は槍に切り刻まれて死んだ。
おいどういうことだよ。
遠距離は最強じゃなかったのか?
殴り合いしか能のない筋肉ダルマなど敵じゃないんだろ?
何とか言えよシューターさんよお!?
俺はその後も馬に挑み続けたが、一人で4デスして負けた。
「だから遠距離やめろっつったろうがnoob」
口の悪い味方が罵倒してきた。
「黙れよ暴言厨。お前も死んでただろうが」
「一人で4回も殺されたチンパンがほざいてんじゃねえよ」
「は? お前4回死んだことないの? あるだろ? お前みたいな暴言マンがいるから民度が下がるんだよ」
「ブーメラン投げてんじゃねえぞカス」
「はいブーメラン乙」
「gg noob」
「go uninstall」
「report plz」
「report plz」
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