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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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「なぁ手越、俺らが待たされたのって、この高校にいる組織の人への紹介とかそういう感じなのか?」


「お、当たらずも遠からず。ってかほぼあってるな。とりあえず校長に挨拶しに行くんだよ。その後で協力者の先生とかの名簿をもらう。そしたらこの学校内の構造を教えてもらうんだ」


「あの人ってうちの組織の人でしょ?前にどっかで見たことあるし」


「一応そうらしいな。さっき見られた時ぞわっとしたし」


 校長、周介は一度会ったことがあるが、どうやらほかの能力者の同級生たちは話は聞いていても実際に会ったことはないようだった。


 十文字の言うぞわっとしたという感覚はよくわからないが、戦闘主体の大太刀部隊である彼らなりの感性があるのだろう。


 少なくとも周介は目があったとしか思わなかったため、特に嫌な感じなどはしなかった。


「入学初日に校長に呼び出されるとか、客観的に見たら明らかにやばい奴だよな俺ら」


「いうな、それに呼び出されたっていうか俺らが自主的に会いに行くっていったほうが正確な気がするぞ」


「よりやばい奴感が増したんだけど。いきなり学校のトップに会いに行くってやばくない?」


 言葉にしてみると間違っていないのだが、確かにやばい奴のように思えなくもない。一種のカチコミのように思えてしまうのは能力者というカテゴリーの中にいる人間がこれほどそろっているからなのだろうか。


 少なくともこの中にいる男子四人は一人を除いて割と現場で活躍している能力者であるように思える。


 そんな人間が一斉に押し寄せたらどうなるのか、さすがに少し外聞を気にしてしまうのも無理のない話だろう。


「ちなみにさ、校長は俺らと同じなのか?それとも協力者か?」


「能力者。元大太刀部隊。部隊の指揮を中心にしてたけど、十年以上前に体がうまく動かなくなったってことで引退してる」


 白部の説明に、その場にいた全員が一瞬息をのむ。


 元大太刀部隊。まさか校長が戦闘部隊の人間だったという事実に周介は驚きを隠せなかった。だが大太刀部隊の人間と、長くこの組織に身を置いている数人は何となくそんな気がしていたのか、それほど驚いてはいないようだった。


「ちなみにコールサインとかわかるか?昔のでいいんだけど」


「校長のコールサイン……っていっていいかわからないけど『カズラ』って呼ばれてたみたい」


 今のコールサインとはだいぶ趣が違っているのだろうか、それとも特別な存在に与えられるものなのか、周介たちには分らなかった。


 十年前ではほとんど覚えていないものが多い。情報自体は残っていても、その詳細を知るのは難しいのだ。


「なぁ白部、校長が俺らと同じってことは、教頭もそうなのか?」


「教頭もそう。ただ、教頭は大太刀部隊じゃなくて小太刀部隊。でも教頭はコールサインもなかった。表に出て活動するタイプじゃなかった。裏方メインって感じ」


 教頭も能力者だったのかという感想を持ちながら、周介は教頭とドクが話していた時のことを思い出す。


 裏方ということで教頭のことをドクも知っていたのだろう。校長教頭両名が能力者というこの学校の組織とのつながりの深さを良く実感できていた。


「大丈夫かな?俺らいきなり攻撃されたりしないよな?」


「大丈夫でしょ。ってか百枝は大太刀部隊だからってビビりすぎ。基本的にはあたしたちとそんなに大差ないんだから」


「そりゃ長くいた安形たちはそう思うのかもしれないけどさ、俺の中での大太刀のイメージって肩パットモヒカンのヒャッハーなんだよ。あの人も昔そんな感じだったのかなって思うとちょっといろいろとな……」


「おい聞いたか?俺ら現役ヒャッハーらしいぞ?火炎放射器とか持っておいたほうがいいかな?」


「ヒャッハー!水だぁ!」


「十文字も福島もその辺にしとけって。百枝の言いたいことも何となくわかるけどヒャッハーはないだろヒャッハーは。これから会う人がそんなんだって考えると、笑えてくるだろ」


 周介たちは全員全校生徒の前で話をしていた校長の姿を思い浮かべていた。


 今は老いて髪に白髪が混じり、皺も増えていたあの姿が、昔は筋骨隆々でモヒカンで肩パットを着けているという姿を想像したからか、ほぼ全員が噴き出しかける。


「やめろ!この想像はやめよう!これから真面目に挨拶しなきゃいけないのに本人目の前にして笑いそうになる!」


「おいどうすんだ百枝!お前のせいで校長のヒャッハー姿が頭から離れねえじゃねえか!まじめな話とかしてる時にチラついたら笑っちまうだろ!」


「知らねえし!俺の中ではお前らもヒャッハーの一員なんだよ!大太刀部隊全員ヒャッハーみたいなもんなんだよ!」


「お前の中で俺らどんだけ危険物扱いしてんの!?」


「まぁ否定はしないけどな。割と危ないのは自覚してるし」


 周介の大太刀ヒャッハー部隊の話題のせいで、これから校長に会うことに一抹の不安を覚えながら、周介たちはとりあえず校長のいる校長室に向かうことにした。


「これもし会ってるときに笑ったら百枝のせいだからな」


「校長がモヒカンヒャッハーだったら教頭はヒャッハーに襲われるぼろ布着た村人って感じ?」


「やめろお前!これ以上笑う要素を増やすんじゃねぇ!」


 どちらが悪いのかという話はさておいて、全員校長を前にして笑わないようにするのに必死になることは間違いなかった。


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