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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
三話「外れた者の生きる道」
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0089

「よし、それじゃあ運用試験を行おう。周介君安形君、一緒に来てくれるかな?各班の人間は各所に散らばって異常がないかの確認を。これから通電するから何かがあったらすぐに報告してほしい」


「今からやるんですか?発電するってことですよね?」


「そうさ、今だからこそやるべきだ。今やらないと後々間違いなく面倒くさいことになるからね。何せメーカーも僕のチームもここにいるんだ。何かあった時に即座に対応できる。これを逃す手はない!」


 ドクは周介と安形の手を取ってどんどんと先に進んでいってしまう。周介たちの考えなど完全にお構いなしといった様子だった。


 瞳はもはやそういった対応に慣れているのか、あきらめた様子でドクの後に続いている。


「あのドク、俺が発電するのはいいんですけど、どれくらいの速度とかそういうのはわかるんですか?」


「大丈夫、君にもわかりやすいように図解してあるモニタがすでに用意してあるよ。今から案内するのがさっき話した君たちの部屋だ。そこから発電用の回転端子が置いてあるから君はそれを回せばいいだけさ」


 発電のために必要な回転数や、どの程度まで能力を高めていいのかなどまったく知らない周介でもわかりやすいようにそのあたりは事前に用意してくれているらしい。


 とはいえまさか今日実際に発電することになるとは思っていなかっただけに周介は目を丸くしていた。


「ちなみにドク、万が一なんかあったら、あれですよね、大変なことになりますよね?もうちょっと待ったほうがいいんじゃないですかね?」


「大丈夫さ、僕らがついてる。何か壊してもすぐに直してあげるよ。世の中スクラップアンドビルド!壊して作ってを繰り返すようになってるのさ!」


 ドクはもはや聞く耳もたないという様子だった。もうどんな理屈を並べてもドクを止めることはできないだろう。


「あぁそうそう、余談だけど安形君の人形のいくつかをすでにその部屋に移してあるんだ。ついでに確認してくれると嬉しいな」


「わかりましたから引っ張らないでくれます?痛いんですけど」


「おっとこいつは失礼。それじゃあどんどん行こうか!時間は待ってくれないぞ!タイムイズマネー!」


 無駄に良い発音で叫ぶドクをしり目に、周介と瞳はため息をついてしまっていた。こうなったドクは止められない。手越あたりにでもついてきてもらえばよかったかなと思いながら周介たちがついていく先には一つの扉があった。


 先ほど辿り着いた大きく頑丈な扉ではない。普通に人が入るために用意されたものであるということはすぐに分かった。


「各班聞こえているかい?これから発電試験と通電試験を同時並行でやるよ。配置についているだろう?各班報告よろしく。メーカーの皆さんは配電設備を重点的にチェックしてください。各所にいる班長は班員が感電しないように入念に注意してくれるとありがたいね」


 無線で各員にそう伝えていく中、ドクは扉の前で仁王立ちして恭しく頭を下げて周介たちに扉を紹介する。


「よし、ここが君たちの専用の部屋になる。ここまでの道のりはあとで教えるとして、後で自分たちでいろいろとそろえていくことを勧めるよ。必要なものがあれば言ってくれれば手配はするから」


 そう言って中に入ると、その中は薄暗く、内装をよく確認することはできなかった。


 周介はもっていたヘッドライトを点灯させると、中を確認していく。


 基本的には何もない部屋だった。目につくのは壁につけられている一つのダイヤルのような物体と、その近くにある椅子と机、そして七個ほど並べられた大きめのロッカーだった。


 部屋の広さは二十メートル四方といったところだろう。個室にしては大きすぎる。ここで人が何人も生活できるほどの空間がここにはあった。


 殺風景すぎるこの部屋の中をどんどん進んでいく。部屋の最奥にあるそのダイヤルのような物体の前に立ったドクは、周介に見えるようにそのダイヤルのようなものを照らす。


「これが君専用の回転用の部品さ。これを回すことで発電機が始動することになる。所謂駆動輪だね。こいつを回してくれれば発電が開始される。そこの机の上に専用のモニターも用意しておいた。それを見ればこの発電設備の許容値がわかるはずだよ。さぁ、席に着いてくれ」


 ドクに勧められて、半ば強制的に周介は用意してあったパイプ椅子に座る。


 そして早く回してほしいというドクの視線に、周介は困りながらも壁に埋め込められる形で存在するダイヤルのようなもの、駆動輪に視線を向ける。


「じゃあ、回しますよ?他のチームメイトへの連絡は大丈夫ですか?」


「あぁ大丈夫さ。じゃあ僕の合図に従って開始してくれるかい?これより発電試験を開始する。発電五秒前、四、三、二、一、ゼロ!」


 唐突に始まったカウントダウンに焦りながらも、周介は能力を発動し駆動輪を回転させ始める。


 机の上にあるモニタが反応し、ゆっくりとだが現在の発電設備の状況を表示し始めていた。


 まずはゆっくり、いきなり高速で回して壊れても困る。そのため周介は非常にゆっくりとした速度で回していた。


 だがそれでも問題なく発電はされているようだった。まだ少量の電気しか発生していないようだが、それでも間違いなく電気は発生している。


 ドクの持っている無線機から通電が確認できたという報告が飛んできたのを聞いて周介は安堵の息をついていた。



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