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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十六話「その光を辿る先の」

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 二日目の周介たちの調査も順調に進んでいた。丸一晩しっかりと休んだおかげで周介も気力を十分に回復し、調査の手伝いも着々と進み、二日目を終える頃には、既に調査のほとんどを終え、以前のように問題もなく、着々と調査は進み、三日目、月曜日の昼には周介たちは再び高速航行に入り、日本への帰路を辿っていた。


 何度も潜行してデータをとるだけの仕事だ。時折玄徳や言音、猛などもその海底の様子を見て楽しんでいるようだった。


 問題はこの後。周介たちにとってはむしろここからが本番とも言うべき項目が残っている。


「目標地点に到達。減速、通常航行へ」


「了解。玄徳、能力解除。通常航行に移行する」


『了解っす。能力解除します』


 玄徳の能力が解除され、船の速度が著しく低下していく。周りの海流が変化し僅かに艦内に揺れが生じると同時に、周介たちは今の時間を確認していた。


 今の時刻は深夜零時を少し回ったところだ。現在位置は日本にかなり近づいた場所だ。あらかじめドクから知らされていた無人島の近海までやってきている。


「これより浮上する。現在位置を確認後、指揮系統をラビット隊へ委譲する」


「ラビット隊了解。これより浮上します。艦内全員、揺れに注意してください」


 周介の合図とともに潜水艦は浮上していき、しばらくして海面へと到着していた。周辺は暗く、深夜ということもあって月明かりしかない。潜望鏡を使って艦内の人間が周辺を確認するも、深夜で特定の島を探し出すのは至難だった。


 だがここにいるのは全員が能力者だ。それも索敵に特化したノーマン隊が多くいる状態でもある。自前の能力も併用してどの場所に何があるのかなどを把握しようと努めていると、少ししてから報告が上がる。


「島影を確認。目標の島かどうかは確認できない」


「確認するには上陸する必要がありますかね?」


「少し待ってもらえれば、解析できるよ。日本にかなり近づいているから、ここなら問題なく測定できるはずだ。それまで準備をしていてくれるかな?」


「了解しました。ラビット隊各員、装備を身に着けてブリッジに集合。位置を確認している間に軽く打合せするぞ」


 周介の指示から三分と立たない間にラビット隊の面々が装備を身に着けてブリッジにやってくる。


 ようやく仕事ができるのかと、今までずっと暇だったメンバーはやる気を出しているようだった。


「あの島が目標であると確認出来たらまず偵察を行う。偵察は上空から知与の索敵。そこに人間がいるかどうかの確認だ。人間が確認できた場合、潜水艦を遠くに移動させ潜水させておく。そこから行動開始だ」


「もしいなかった場合は?」


「いなかった場合、一度潜水艦に帰還して日の出を待ってから行動開始する。知与がいれば周辺状況はわかるけど、それでも俺ら全員がほとんど何も見えない状況で行動するのはリスクが大きい」


 野生動物が相手の場合、深夜となれば相手も寝ている可能性が高いが、ただでさえ草木などが生い茂っている状態でさらに暗く視界も悪いとなると後手に回りかねない。


 早い段階で知与が目標を特定してくれればいいが、それも相手が能力を発動してくれない限りわからないのだ。無人島ということもあってそこまで大きな動物はいないだろうが、中型犬程度の大きさの動物がいるだけでも人間にとっては十分脅威だ。


 そんな場所の深夜をうろつくほど周介は馬鹿ではない。


「つまり、いてもいなくても一度潜水艦には戻るってことね?いなかった場合はしっかり休みをとってから万全の状態でやると」


「そういうことだ。ただし、人間がいた場合、潜水艦を別の場所に移動させてから再度島内に侵入。その人間を捕縛する」


「そりゃこっちから仕掛けるってことか?」


「攻撃するかどうかは微妙なところだけどな。相手が寝てたら寝ている間に拘束する。そこから尋問だな。相手が暴れるようなら攻撃。ただし何度も言っているようだけど殺すなよ?」


「会話よりも攻撃が先か?」


「相手が起きてたら先に会話を試みるのもありだけど……その時矢面に立つのは猛、お前だぞ?悠長に話をしてると場合によってはお前も危ないんだ。まずは無力化する。話をするのはそこからだ」


 自分の能力ならば相手の攻撃くらい耐えてやると猛は言いたそうな顔をしていたが、実際無駄なリスクを負う必要はない。


 周介の言うように、無力化してから話を聞けばいいだけの話だ。現段階で周りの人間に被害を出した能力者という報告は上がっていないし、組織に照会してもらってレッドネームなどに列挙されていなければ身柄を保護するということもできる。


 多少手荒なことは認めるが、まずは自分たちが無事でいることを周介は前提に考えていた。そうしなければ相手を助けることもできないかもしれないのだ。


「俺の提案に異論や意見がある奴はいるか?」


 周介が全員に聞くと同時に知与から手が上がる。


「隊長、相手が人間でも動物でも実弾の使用は許可してくれますか?」


「……許可する。あぁそれとこれはペイント弾でもそうだけど、排出された薬莢などは回収すること。それと、撃つタイミングは、各々の判断に任せる。ただし、何度も言うが殺さないようにすることが前提だ。できるか?」


「できます」


 はっきりと言い切った知与に、猛が短く口笛を吹く。知与の射撃能力は一級品だ。日々の射撃訓練からもそれはわかっているし、実戦でも何度も助けられてきた。その実績は確かなものだ。だからこそ周介もそれを信じられる。少なくとも、自分が撃つよりはずっと。


「カタパルト設置完了。若、いつでも行けます」


 目視できている島が目標の島であるということが確認できた周介たちは全員甲板に上がっていた。


 周介たちは言音の能力によって収納されていたカタパルト六台を潜水艦上部甲板に設置していた。すでに飛行用のクマも用意され、いつでも飛行が可能な状態になっている。


「それではこれより偵察を行う。上空百メートル程度の位置から偵察を行い、人間の有無を確認する。確認が終了でき次第、一度潜水艦に帰還する。全員搭乗」


 周介たちが飛行用クマのぬいぐるみに入っていくと同時に、飛行装備が起動を始める。


「瞳、姿勢制御任せた。玄徳、加速準備。知与、カウントを頼む」


「了解。五秒で行きます。五、四、三、二、一、発射!」


 知与のカウントが終わるのと同時にカタパルトから勢いよくクマ型飛行装備が打ち出される。玄徳の加速によって急激に速度を上げた機体は、周介の装備による推進力を得て一気に安定した飛行を始めていた。


 急激な加速にも慣れたものだ。僅かに揺れるが、それでも周介の操作と瞳の姿勢制御のおかげで影響は最小限に抑えられている。


『うぉぉ、これが例の輸送か。話には聞いてたけど、こんなに簡単に飛べるんだな』


「あぁ、そういえば猛は乗るの初めてだったか。これでも飛べるようになるまでだいぶ練習したんだぞ」


『っていうか、すげえな、普通に空飛んでるのか。ちょっと感動だ』


「話は後だ。知与、島の上空を旋回する。玄徳、加速カット。速度落として機体の推進力だけで飛行する。索敵頼むぞ」


『了解しました。少々お待ちください。現在索敵中です』


 周介は島の周りを大きく回るような形で旋回する。知与の索敵の精度であれば、島の全容を理解するのに時間はかからないだろう。その予想は正しく、知与は一分と経たない間に索敵を終えたようだった。


『隊長、該当の島には人間はいません。小動物がいくつかいる程度ですね』


 知与の報告に周介は小さく安堵の息を吐く。少なくとも人間を相手にしなくてもよくなったという点においては良い報告だった。


 同時に、この島での探索が長引くことになるだろうということを考えると頭が痛くなる。


 小動物を相手に、相手が能力を使わない限りそれが判別できないのだ。最悪この島にいる生き物を全滅でもさせないといけないかもしれない。周介としてはそんなことはしたくなかった。


「了解。島自体の地形はどんな感じだ?」


『島の上部は山岳に近い傾斜の多い地形が目立ちます。同時に木や草なども多く生えています。そしてブリーフィングにあったとおり、がけ崩れが起きている場所が確認できます。そしてその一角に洞窟のようなものも』


 能力らしき光が確認できたのは洞窟という話だった。調べる場所は洞窟が第一候補。あとは島の上部といったところか。


「洞窟の深さとか長さとかはわかるか?」


『少々お待ちください。かなり入り組んでたり、逆に広くなったりしているところもあります。そこまで長くはないようです。ただところどころ海水がたまっています。台風の時に溜まったのかもしれません』


 台風の時にどの程度潮が満ちていたのかは不明だが、その時の影響で洞窟内に海水がたまってしまっているらしい。


 つまり洞窟内は島の内部に繋がっているだけで海に直接つながっているわけではないということでもある。


 地形を即座に地図などにできればいいのだが、あいにくそういうわけにもいかない。少なくとも調べる場所の詳細が分かっただけでもよしとするべきだろうと周介は考えていた。


「了解。まずは地形把握と、その洞窟の探索を目標にしよう。では予定通り一度引き上げる。日の出とともに行動を開始する。あと……どれくらいだ?」


『四時間くらいじゃない?四時間も寝られれば十分でしょ』


「オーケー。じゃあ潜水艦に戻って四時間休んで、そこから行動開始だ。能力を使う動物の可能性が高い。各員気を引き締めるように」


『なんだよ、もう戻るのか?』


「満足に明かりもないような無人島を歩けってのか?能力を使う動物がいるかもしれないっていうのに?俺は怖くていやだね」


『もうちょっと飛んでいようぜ。なんか見えるかもしれねえしよ』


 猛はクマの内部に取り付けられている画面から島を確認しようとしているのだろうが、この暗さだ。月と星の明かりだけでははっきり言って何も見えないに等しい。


 島の輪郭や、そこの木々などがあるということはわかってもそれ以上のことはわからない。もしかしたら猛の能力による強化が働いていれば何かわかるかもしれないが、それも上空からでは期待できないだろう。


「……知与、もっと細かく……どういう生き物がいるとかは確認はできるか?」


『もっと細かく索敵を行えばできますが……どうしますか?小さな生物全てとなると少し時間がかかります』


「……いや、そこまでするのはまた後で問題ない。猛、ここは戻って休憩だ。しっかり準備を整えてから再度出撃する。いいな?」


『へいへい。大将に従っておくよ。ようやく出番が回ってきたんだ。ばっちり仕事はしてやるから』


 潜水艦の中でずっとじっとしていたことによって多少フラストレーションがたまっているのだろう。猛からすれば暇でしょうがなかったからこそ勇み足になってしまっている。まだいうことを聞いてくれるだけありがたいと思うしかなかった。


「それでは帰還する。知与、細かい誘導頼んだ」


 周介たちは島の上空から再び潜水艦に戻ることとなる。そして夜明けとともに、周介たちは再度島に上陸する。


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