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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十六話「その光を辿る先の」

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『それではこれより地質調査を開始する。潜水艇一号機、二号機、準備はいいか?』


 最終位置調整を終えた周介たちを乗せた潜水艦は、目的の調査場所にたどり着くと直接調査を行う潜水艇を起動させ、出航できるように準備を整えていた。


 一号機には周介が、二号機には瞳が乗り込んでいる。すでに潜水艦は一定の深度まで潜水しており、ここからさらに深い場所、海底まで潜水艇で向かう手はずになっている。


 潜水艇一号機および二号機の外周部には潜水装備を身に着けた人形たちが何体も引っ付いている。傍から見れば密航しようとしているようにも見えるその姿はシュールで、何というか間抜けにも見えてしまう。


「一号機問題ありません」


『二号機同じく問題ありません』


「了解した。これよりエアロックを閉鎖。注水完了後、一号機二号機の調査活動を開始。海底の地質調査へと向かわせる。時間制限は約二時間。制限時間に気を付けること」


「エアロック閉鎖了解。左舷、右舷エアロック閉鎖。注水開始」


 潜水艇が配置されているエアロックの扉が完全に閉じ、浸水しないようにすると同時にエアロック内に周辺の海水がゆっくりと入ってくる。


 そしてエアロック内が海水で満たされると同時に、周介はさらに潜水艇を操作する。


「ハッチ開放。これより調査を開始する。一号機、二号機、発進」


 周介の言葉と同時に、機体を固定させていたアームが解除され、潜水艇はゆっくりと真下へと降下していく。すでに潜水艦で光の届かない程度の深さまでやってきているため、潜水艇は即座に搭載されているライトを点灯する。


 とはいえ、そのライトでさえ照らせるのはそこまで遠くはない。真昼だというのに光の届かない場所にいる周介たちは目の前の海を眺めながら同行しているノーマン隊の人間に気を配る。


「このまま潜水します。細かい位置調整は指示をください。二号機、大まかな位置までの操作はこっちで行う。その後の位置調整はそちらに任せる」


『了解。互いの距離には注意ね。コードの維持は任せて』


 周介が機体の操作をし、瞳の人形は潜水艦から延びる通信用のコードを適度に伸ばし続けている。


 周介と瞳が乗るそれぞれの潜水艇一号機二号機は、以前にも利用した水中用の通信維持装置を活用している。その個数を減らすため、途中までは有線で接続し、その末端部分から人形を使った無線通信へと切り替えるのだ。


 目的地がある程度決まっており、なおかつある程度動き回ることを前提とした潜水用の通信機能はまさに調査用というほかない。


「海底まであと十五……十……五……」


「速度低下、着地します」


 周介は潜水艇のアームを展開し、海底にうまく着地して見せる。何度も何度も行ってきた動作だけに淀みは一切ない。


「さて、ここからは僕らの仕事だね。百枝君、ここからはこっちが担当するよ。上手く操縦頼めるかな?」


「了解です。一号機から二号機へ、ここからは手動操作をお願いします。ぶつかりそうになったら注意するので」


『了解。仕事に取り掛かるよ』


 潜水艇は周介の能力から解放され、それぞれが電動のスクリューなどで動き出す。そしてアームなどについている調査用の機器や、潜水艇そのものについている機材などを使ってノーマン隊の人間は器用に調査を行っていた。


 能力だけではなく、機材なども使って海底の地質を調査しているのだろうということはわかったが、周介にも瞳にもそれ以上のことはわからなかった。


「大体何カ所くらいやるんですか?」


「結構たくさんあるよ。何せプラントを作れるだけの調査をしなきゃいけないんだ。時間制限の中でどれだけ精度の高い調査ができるかが肝になってくるね。ぶっちゃけ何回も往復して……今日と明日丸々かけてどれくらい調べられるか」


 単純に空気の問題もあるが、何かあった時のために定期的にデータを潜水艇に持って帰ることも制限時間の理由でもある。


 あとは一か所だけではなく何カ所も大きく移動して調査を行うのも理由の一つだ。


 一回の制限時間が二時間。そこから移動をしながら調査をするとして、一日に十二時間作業を行ったとしても最大六カ所しかできない。すでに昼を回っているために、今日の調査は三カ所から四カ所できればよいところだろうか。


「候補地自体はある程度絞られてるから、決まったところを調査して一番いい場所に主柱を置いて、あとは調査結果によってプラントの形状を決定するって感じかな。もちろんある程度大きくするつもりらしいけど」


 話を聞く限り、海外の人間も使えるようにするということだったため、かなり巨大なプラントを計画しているのは周介も知っている。


 つまりそれだけの主柱をたてるということでもある。浮上している状態のプラントを建設することもできるのだろうが、その辺りは今こうして調査をした結果によるのだろう。


「すまない、人形でこの辺りを照らしてくれるかな?」


『了解しました』


 瞳の人形たちが潜水艇の周囲を漂うように泳ぎ、潜水艇の仕事を補助するように持っていた高出力のライトで海底を照らしていく。


 こういう時に瞳の能力は本当に役に立つなと、潜水艇の外にある深海の世界を見ながら感動していた。


 この光景を見るのも久しぶりだ。綺麗だな。そんなことを考えながら、周介は潜水艇の調査の手伝いをし続けていた。


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