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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
二話「手を取り合うその意味を」
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『今回、周介君が見つけたのは、確かに能力者だったんだよ。能力を発動している状態のね。そういう意味では確かに危なかった。この時期に見つけられたのは幸運だったというべきか、この時期だったからこそ良かったというべきなのか』


 今の時期はもうすぐ三月になろうとしている。暖かくなってきているとはいえまだ寒い。冬であることに変わりはない。


 そんな時期であったことで、何か良いことがあったというのが周介は気がかりだった。


「あの時、光は出しっぱなしでした。つまり発動されっぱなしだったってことですよね?周囲への影響とかはなかったんですか?」


『そう、そここそ不幸中の幸いだったのさ。現地に行ってもらえればわかるけれど……実は負傷者も出ていてね。失敗したよ。いくらあの状況だったとはいえ、判断を間違えた』


 負傷者が出ているという言葉に、周介と瞳は一瞬視線を合わせる。能力というのは一歩間違えば人を簡単に傷つけられる。


 その能力が発動されっぱなしの状態は危険な状態であることに変わりはない。


 そんな状況に、ほぼ素人の周介と、あまり外に活動をしていなかった瞳が出て行っても問題はないのだろうかと心配になってしまう。


 だが周介は不安を何とか取り除こうとゆっくりと深呼吸をしていた。


「負傷者は、どういう状況なんですか?」


『今は安定しているよ。負傷の原因も判明したから治療も終わっている。けど、能力が解明されたせいでこれ以上手が出せない状況なんだ。別動隊を呼びたいんだけど、ちょっと遠いのと、目立つからね。最悪夜まで待たなきゃいけないかもしれなかった』


 今はまだ昼だ。ここから夜まで待つとなると最低でも六時間は待たなければいけなくなってしまう。


 そんなに悠長に待っている時間はない、ということで周介たちが呼ばれたのだろう。


「相手の能力は一体何なんです?相手は動けるような状態なんですか?」


『いや、相手は動ける状態ではないらしい。それで安全な場所まで移送したいんだけど……まぁ能力が常時発動されっぱなしなせいで近づけなくてね。能力に関しては現地にいるエイド隊が詳しく調査済みらしい。又聞きになるより、彼女たちに聞いたほうがいいだろう』


「わかりました。安形、エイド隊って?」


「エイド隊は治療目的のチームで、外で活動する人と、組織内で活動する人の二つに分かれたチーム。この間転んで擦り傷作った時に保健室みたいなとこに行ったっしょ?あそこにいた人もエイド隊」


 周介は訓練中に負傷した時などに傷を癒してくれた人のことを思い出す。負傷した時などにそれを直すための保健室のような場所があり、そこに何人か待機しているのだ。


 能力を使って治療を施してくれる場所で、小さな擦り傷などが多くなってしまう周介からすれば半ばよく通う場所になっていた。


「あの人たちか。でも外と内で分かれるってことは、あの時の人じゃないんだよな?」


「たぶんね。あたしはエイド隊の人とそんなに関わることなかったからよくわかんないけど」


 瞳の能力は体を動かす必要がないため、怪我をすることもなかっただろう。そのためエイド隊のことはよく知らないようだった。


 周介も保健室のような場所にいた人の名前も知らない。先生っぽい人という認識しかなく、相手も事務的に仕事をしていたためそこまで意識できていなかった。


『エイド隊は二人、そして現地には他の隊から二人来ているんだ。小太刀部隊の人なんだけど、今回は混成部隊でね。全員はそろってないから、自己紹介もしておくといいよ』


「普段部隊は全員がそろった状態で出るものじゃないんですね」


『それができればいいんだけどね。やっぱり個人によって私生活とかあるからさ。そこまで毎回スケジュール合わせられないんだよ。だからいろいろな人とマッチアップすることもあるし、顔をつないでおいたほうがいいよ』


「了解です。なんだかこういう行動をとるのもこれから増えそうですよね」


『突発的な事件に関してはそうだね。どこかからか依頼があった場合はしっかり態勢を整えてから行動するけど。まぁそのあたりは置いておこう。安形君も、ちゃんと自己紹介するんだよ?君もこれから外で行動するんだから』


「えー……あたしもですか?」


『そうだよ。君はこれから周介君とチームを組むんだから、外の活動はどんどん増えていくことになるよ?もっと外に目を向けていかないとね』


「めんどくさ……」


 マイクに拾われないほどの小声でそういう瞳に周介は苦笑してしまっていた。その気持ちは周介も同じである。


「あのドク、俺まだ素人なんでそこまで外に出るって言われても困りますよ?そもそもまだ全然、その、扱えてないですし、何より俺のは回すだけですからね?」


『そりゃ最初からすべてができるようになるなんて思っていないさ。君はこれから少しずつできるようになっていけばいいんだよ。大丈夫さ、君の隣には熟練の能力者がいるんだよ?きっと君をフォローしてくれるさ』


 といわれて、瞳は誇るでも自慢げに笑うでもなく心底面倒くさそうにため息をついている。


 確かに瞳はかなり熟達した能力者だろう。周介などとは比べ物にならないほどの経験値を有しているのは間違いない。


 だが、本人からすればいい迷惑なのだ。それはこの表情とため息を聞くだけでよくわかるというものである。


 それに、一体何をさせられるのかもわかっていない状態でここまで期待されても困るの一言だ。周介にとっても瞳にとっても。


 とはいえ、周介は借金があるために従わざるを得ない。なんとも情けない状況だなと思いながら、周介たちはメイト11のナビに従って目的地に進むことにした。


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