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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十話「分水嶺に立つ小動物」

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「というわけでだ、今回はドクが用意してくれた装備の使用感を確かめてほしい。特に前に出ることの多い俺と玄徳は使いやすさ重視で選んでみてほしい」


 銃を正式採用するにあたり、実際の銃を使ってみてその使いやすさを体感してもらうことにしていた。


 ペイントトリモチ弾を使った攻撃は全員で行って初めて意味を成す。全員が同じ効果を持つ弾丸を使うことで、より効果を高めるのが目的だ。


 もちろんその中でも効果的に使えるものを選択してもらうことにしていた。


 周介の場合は小回りの利く拳銃と、サブマシンガンを選択している。周介の場合、射撃精度があまり良くないため、連射できる方がよいと考えたのである。


「とにかく当てられればいいんでしょ?それなら……あたしはこれ」


 瞳が選択したのは、というより瞳の人形が選択したのはアサルトライフルと周介がもっているものと同じサブマシンガンだった。


 数を揃えて戦う彼女にとって、命中精度よりもその弾幕に期待したいところだった。中距離における一斉射撃は間違いなく相手に当たることだろう。


「俺は……近くに一気に行けたり逃げられたりするし……じゃあこいつで」


 玄徳が手に取ったのは所謂ショットガンと呼ばれるタイプのものだった。周介たちが使っている弾丸よりもずっと大きな弾丸を使っている。その分高い効果は望めるが、距離がある場合の射撃精度は著しく下がることになる。


 そういう意味では確かに玄徳のように近づいたり離れたりがすぐに行える人間が適切だろう。


 玄徳の能力なら加速によって投擲式のトリモチ弾も十分に当てられる。近中距離における射撃攻撃は玄徳に任せて問題ないだろう。


「じゃあ私はこれを」


「あぁ、お嬢はそれが似合うな」


 知与が選択したのはもちろん狙撃用のスナイパーライフルだった。傍らには対物ライフルも置かれている。


 彼女の狙撃の精度は誰もが認めるところだ。彼女がこれを選ぶことに異論を出すものは誰一人としていない。


 まさに百発百中。本人曰く、現場に出たら各状況において何発かの調整が必要らしいが、それを踏まえても彼女の能力は十分以上に部隊の行動に貢献してくれることだろう。


 現に今までの行動でも十分以上に貢献してきていた。今後もその働きに期待できることだろう。


「でも兄貴、ペイント弾ってのはいいと思いますが、実弾は使っちゃダメなんすか?」


「いや、まぁダメとは言わない。正直俺が使いたくないってだけだからな……使えるのであれば使ってくれて構わないけど、その意味だけは分かっておいてくれよ?」


 実弾を使う。その意味が分からないものはこの場にはいない。とはいえ簡単に使えるだけの覚悟を持っている者がいるのも事実だ。


 特にこの場にいる知与は、現場に出ても臆さずに実弾を撃つことができるほどの胆力を持ち合わせている。


 人に当てないということがわかっていたとしても、それでも万が一ということを考えればわずかにでも怯んでしまうのが人の性というものだ。


 だが知与はそれがない。良くも悪くもぶっ飛んだ性格をしていると誰もが考える中、知与は自分の身の丈と同じ程度の狙撃銃を手慣れた様子で扱っている。


「……知与はなんかそういうのすごく扱いなれてる感じしてるけど、もしかして前から結構いじってたのか?」


「いえ、そういうことじゃなくて……暇があるときに、ここによく来てるんです。一人で体力なくならないような訓練ってこういうのしかないから」


 知与にとって、体力強化の訓練に関しては玄徳などと日々日常的に行っているが、知与の体力の限界に至るまで訓練を続ける為に必ず介抱役として玄徳が近くにいなければならない。


 だから一人でいる時はどうしてもそういった体力強化の訓練ができないのだ。


 そういう時、知与はこうして銃を撃ちに来てるのだろう。


 平然と銃の訓練をする中学生というなかなか恐ろしい構図が出来上がってしまっているが、それもまた致し方のないことかもしれない。


 他に知与ができることといえば索敵そのものの訓練くらいしかないのだ。銃火器における射撃訓練と併用していても問題はないのだ。


「へぇ……それだとお嬢はこの辺りの銃は一通り撃ったのか?」


「うん、けど連射するタイプのだとどうしても体がぶれちゃうから、単発式の方が撃ちやすいかな」


「あぁ、知与は体小さいからな。衝撃に耐えられないのか」


「あたしたちもあんまり人のこと言えないけどね」


 この中で高身長なのは玄徳だけだ。周介は男子としては小さく、瞳は周介と同じくらいの身長、知与はその二人よりもさらに一回り小さい。


 銃の衝撃はその小さな体でどうにかするには少々手に余るものなのだろう。単発式であれば一発ごとに態勢を整えればいだけだが、連射するようなタイプになるとどうしても体で支えることができず、照準がぶれてしまうようだった。


 その辺りも銃を選ぶ基準になりそうだった。


「よし、じゃあ今日は知与先生に銃の扱いを教えてもらおう。お願いします先生」


「よろしく」


「お願いしますお嬢」


「ふふ、私でよければ」


 周介たちは知与の指導の下、銃の扱いを一つ一つ覚えていった。


 銃の扱い方が妙に手慣れている知与が少し怖くなったのはまた別の話である。


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