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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
四話「小動物が生き残るために」
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「つまり、お前は寝ていたんだな?それはテールも同じと。ノーンだけが騒いでいたと」


「はい、そうです」


「その時何か不思議な感覚はあったか?感覚というか、感情というか、不安や苛立ちのようなものは?」


「いいえ、ありませんでした。とても心地よく寝ていたのを覚えています」


「それはテールも同じか?」


「はい、同じです。ぐっすりでした」


 二人の、二匹の意見はほぼ同じだ。結局のところ全く別の場所にいつの間にか『飛ばされていた』という事実に変わりはない。


 だがここでわかったのは、三匹共に同じ部屋に居て、二匹は昼寝をしていて最も早くその異変に気付いたであろうペットがノーンというインコだということだ。


 そして、その何かが起きた時のこの二匹の精神状態は非常に安定していたということも一つの判断材料になるだろう。


 能力を発動する際、その状況や個体差ももちろんあるが、総じて精神的に不安定になっているときに発動されやすい。もちろん安定した状態でも発動してしまうことはあるだろうが、一種の引き金となるのは本人の精神状態だ。


 安心しきっていて、なおかつ穏やかな心を持っていたこの二匹が能力を発動したということは少し考えにくかった。


「となれば、残りのインコ、ノーンが本命と思うべきか……お前らはノーンの行き先に心当たりは……あるわけないよな」


「申し訳ない、散り散りになった後、自分のことで手一杯で……ですがあいつは飛べます。俺らよりは遠くに行くことも可能でしょう」


「なんだ、籠の中にいたっぽいのに飛べるのか」


「ノーンは時折部屋の中を飛ばせてもらっていました。どれほど長い間飛べるかはわかりませんが、飛ぶことは可能でしょう」


 室内で育った鳥が飛ぶことは不可能なことではない。小さな高さの棚の上にいつの間にか上がっていることがあるように、彼らは誰に習うわけでもなく本能で飛び方を学ぶのだ。


 だがいくら本能で飛ぶことができるようになったとしても、長時間飛行が可能というわけではない。

 鳥の種類ごとに飛ぶことができる限界は決まっているし、個体の体力によって可能飛行時間も決まってくる。


 特に普段からあまり飛ばず、家の中で、籠の中で過ごしていた鳥が長時間飛び続けることは不可能だ。


「っていってもよ、空を飛んだって限度があるぜ?空には空の縄張りがある。烏とか見てるとよくわかるだろ?あぁいうのを回避して生活するってのは結構きついぜ?」


「そっか、犬猫みたいに地面だけじゃなくて、空を逃げるのなら上の方を見なきゃいけないのか……インコって何食べるんですかね?」


「インコは基本何でも食うぞ。虫だろうと木の実だろうとな。家で飼われてたやつがそういうもんを食えるとも思えないけどな」


 乾の言葉に納得してしまう。今目の前にいるテールやベッキーもわずかにだが痩せている。後でペットフードでも買って食べさせてやらないと倒れてしまうかもしれない。


 家から出て数日も経っていないが、それでも丸一日程度は何も食べていないかもしれない。水などは何とかなっていたのかもしれないが、食べ物はどうしようもなかったのだろう。


 自分の空腹を押して家族を探そうとする二匹の気概に、周介たちは素直に感心していた。


「で、話を戻そう。これからの捜索だが、情報源の連中を可能な限り使う。お前らは建物の屋上あたりから探してくれるか?」


「了解です。となると、このままだとちょっと難しいか?」


「そうですね、装備がちょっと不安です……ってか、暗くなってきてるとはいえ、屋根の上飛び回ってたらちょっと目立つ可能性が……」


 周介たちの機動力を用いれば屋根の上を飛び移ることくらいはできるだろう。だがそれを続けていたとして、周りの人間にばれないとは言えない。


 屋根の上に意識が向いていない可能性が高いとはいえ、それでも人目はあるのだ。日が落ち、夜となっても建物の明かりがあってあたりはしっかりと見える。


 そういう状況で活動をするというのはなかなかに難易度が高かった。


「それなら、ちょっと待って」


 そう言って瞳は携帯をいじって何やら連絡を始めていた。


 それが一体誰なのかはわからないが、しばらくすると小さくうなずいて瞳は指を二本立ててブイサインする。


「協力してくれるって。今からこっちに来るから、ちょっと迎えに行きましょ」


「待って待って、誰がくるって?」


「桐谷さん、今の状況だったらあの子の力を借りたほうがいいから」


 桐谷、手越と同じくアイヴィー隊に所属する索敵を得意とする能力者だ。詳しい能力のことまでは周介は知らないが、この状況下で役に立つ能力というのは少々イメージができない。


「なるほど、そういうことか。なら桐谷を連れてくるのと同時に装備の回収、んでこいつらを一度拠点に送り届けよう。ドクたちに体調の確認してもらって、場合によっては、すぐに飼い主のもとに戻してやらねえとな」


 乾は何かを理解したようだったが、それを細かく説明はしなかった。事情をあまり知らない周介や玄徳は首をかしげてしまっていたのは言うまでもないだろう。


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