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アロットロールゲイン  作者: 池金啓太
十九話「世界は動く、まだ見ぬ先へ」

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「ドク、俺が見てるのがマナだったら、魔石からマナが漏れ出してるってことなんですか?」


『んー……僕としてもそのあたりがわからなくてね。逆なのかもしれない。周辺のマナを集めてるから濃く見えているとか、周介君の言うように魔石から漏れているのか。あるいはその両方かも。もし漏れ出しているなら、いつかは自然消滅しちゃうだろうからね』


「消えた魔石っていうのはなかったんですか?」


『今のところはそれらしい反応を見せた魔石はないらしいけど……ただそれもわからないよ?数百年かけないと自然消滅しないかもしれないんだから』


 魔石はあくまでマナの結晶体だ。もし周介の言うように魔石からマナが漏れ出しているのであれば、魔石が自然消滅する可能性がある。


 ただドクの言うように、マナが高濃度になりすぎていて仮に自然にマナが漏出していたとしても消滅するまで数百年かかるかもわからない。そのあたりは誰にもまだ証明できない事柄だ。


「魔石に関してはよくわかっていないんですよね?」


『マナの結晶体っていうくらいしか。あとは生体で精製できるくらいしかわかっていないね。僕らの拠点じゃあそのあたりの研究はあまり行えていなかったし。何せ僕ら能力者が触っただけでも危ないだろうし』


「危ないっていうのは……」


『マナが流れ込む可能性があるのさ。言っちゃえば過剰供給状態を強制的に引き出す可能性がある。この間の周介君と同じさ。高濃度のマナに晒されるとそういうことが起きることがある』


 それぞれ各国各拠点でも魔石の保管などは行っていたとしても研究などを行っているところはかなり数が限られるらしい。


 何せ能力者が触れるだけでも、魔石に内包されている多量のマナが流れ込む可能性があるため危険なのだとか。


 以前周介が高濃度のマナを内包した水の中に入った時に過剰供給状態が引き起こされたように、結晶化するほどの高濃度のマナに触れればどうなるか、その危険性は察するに余りある。以前回収した時に絶対に触れないようにと言っていたのはそういうことでもあったのだと周介は再認識する。


 そして目の前にあるこの物体の中、鬼怒川達と同じようにモザイクがかかっているということはこの箱の中には魔石が封じ込められているのだということも理解していた。


 魔石というものがいまだ不明な部分が多い。周介にとっては厄介な石程度にしか思えない。能力者にとって危険な物体でもあるため破壊できればいいのだろうが、それができるとも思えなかった。


「異空間で格納できるなら、一番いいのは異空間の中に封じ込めておくことですか」


『それも一長一短だね。異空間もあくまで能力によって生み出されている空間だ。何らかの魔石による干渉がないとも言い切れない。かといって物理的な封印にも限界がある。山とかに不法投棄しようものなら、能力の素質がある生き物が触っちゃったりして大変なことになるだろうしね』


 能力を持っているのは人間だけではない。他の生物、哺乳類、鳥類、魚類など様々な生き物が能力を得る可能性を秘めている。


 適当に山に埋めたとして、地中に住む生き物の内の何かが魔石に触れて能力を暴発させるという可能性も十分にあり得る。


 暴発させるだけならばいいが、周介のように肉体の変化に加えて生き残る個体まで出てくれば、生物が奇妙な形で進化してしまうことにもなる。


 密閉する物体だっていつまでも形状を維持していられるはずもない。生き物に対しての影響を考えたら、魔石は人類側で管理していないと大変なことになりかねないということだろう。


 ただ、異空間だって万能ではない。拠点が入っている異空間も能力によって生み出されているものだ。ドク曰く、星が発動しているということだったが、それが何らかの影響を受けないとも限らないらしい。


「いっそのことなんか有効活用できればいいんですけどね……部品とかそう言うのには使えないんですか?硬度がどれくらいかわかりませんけど」


『そのあたりも要検証ってところだよね。少なくとも僕がハンマーで叩いた程度じゃ壊れなかったよ』


 そんな事やっていたのかと周介は眉を顰めるが、部品に使うにしても物体としての性質がわからないのだから使いようがない。


 電気を通すのか、熱に対する耐性はどうか、強度はいかほどか、そもそも加工できるのか。


 その辺りもわからないのに部品に使えるはずもない。逆に言えばそういった部品の何かに埋め込んでしまうというのも一つの手かもしれないが、その分埋め込んだ部品の強度が落ちるのだからあまり良くはないだろう。


 何より壊してしまえばそこまでだ。魔石の精製方法は確立されていると思われるが、その方法を知る者が少ない。


 もしかしたら研究所の人間は知っているかもしれない。何せ旧日本軍の残党が運営する施設でも作られていたくらいなのだ。


 それが偶然なのか、必然なのかは周介には判断しかねるが。


 有効利用する手段があれば、可能ならば利用したいと思うのは人の性というものだろう。現段階で周介が知っているのは、生き物の体の中で作られるということだけ。生き物を使ってでしか精製できないというのが難点である以上、量産は難しい。


 家畜を育成するように精製できればいいのだろうが、それだって容易くはない。


 資源と言えば聞こえはいいが、その実爆弾のようなものなのだ。取り扱いには注意しなければならないだろう。


 周介はその後も引き続き体の検査に加え、その右目の靄が見えることを利用して研究所内に保管していたいろいろな物体を確認していた。


 魔石の保管方法だけではなくほかにも能力によって作り出された物体や能力そのもの。時には人物なども見せられたが、周介からすればそれに何の意味があるのかはわからなかったが、研究者たちが周介の見えるものを口にするたびに何やら記入したり話し合ったりしていたため、何かしらの意味はあったのだろう。


 周介たちは一度休憩を含めて食事、周介たちからすれば少し早めの夕食を取ることになっていた。


 ここが日本ではないこともあって、料理はパンやソテーなどがふるまわれたが、それらを口にする周介の機嫌はすこぶる悪かった。


「周介、ちょっとは機嫌治しなさいって」


「けっ!瞳に俺の気持ちはわからんよ!思春期青少年の心を弄びやがってよぉ!」


「まぁまぁ、でもやっぱり君の右目はすごいね。ここの研究者の人たちがものすごく驚いていたよ」


 周介がものを見るたびに研究者の人間はいろいろと驚いていた。これが何かの新しい発見があったのかどうかは微妙なところだが。


「今までマナを知覚する方法ってどうやってたんですか?俺みたいにみることができる人がいるとか?」


「結構機材が大変だって言ってたよ。何せ発見されてから百年経ってないからね。存在は確認できていても、それを計測するための機材はかなり大掛かりなものになるっぽいんだよ」


 なるっぽいということはドクは詳しくは知らないのだろう。とはいえそれらがどの程度の精度で確認できるかも不明であるため、周介からすればなにが発見なのかもわからない。


「どっちにせよ研究者って輩は碌なもんじゃないですね。高校生相手にあんなことをやらかしてる時点でもう人を人として見てないですよ。実験動物としての扱いですよ」


 周介はソテーをフォークで突き刺してから口の中に運ぶ。普段とは少し違う味わいで、スパイスが効いている何かの魚のソテーは周介に八つ当たりをされているかの如くどんどんかみ砕かれていく。


「まぁまぁ、君の体細胞や遺伝子関係は調べておいて損はないのさ。一応君の体は普通の人間とは構造から、一部とはいえ異なってしまったからね。一般男性の人と比べて変化があるかどうかを調べるのは大事なことだよ?」


「大事って……別に俺が困るわけでもないでしょうに」


「いやいや、困るさ。だって場合によっては君の生殖能力……子孫を残せるかどうかってところに影響してくるんだから」


 その言葉に周介は一瞬魚を噛む口の動きを止める。瞳もまた動きを止めていた。


「え?マジですか?俺種無しになったんですか!?」


「それを確かめるってことさ。忘れたのかい?君の体は確かに変異した。ただそれは目と視神経と脳だけだ。とはいえ、とはいえだよ?僕たちの拠点では細胞に関しての調査はした。医学的には検査したけど問題はなかった。だけど生殖器や生殖能力までは調査しなかっただろう?デリケートな内容だからあえて省いたっていうのもあるけど」


「……もし駄目だった場合、俺は子供を作れないと?」


「可能性はあるさ。少なくとも同じ人間とは子供を作れない可能性がある。君が人間でありながら他の種族になったっていうカテゴリーだったらね。ただ生殖っていうのは面白いものでね。種族が異なっても交配が可能なケースはある。ライガーとかが有名かな?」


 ライガーというのはライオンと虎、タイガーの混血種だ。同じネコ科でもそうやって二つの違う種の生き物が交配できているのだから、人間でもそれができる可能性は高い。


「犬猫だって、雑種……今はミックスっていういい方の方がいいのかな?そういう種類だっているんだから、何も不可能ってことはないと思うよ?少なくとも僕はそこまで問題視はしてなかった」


「そうですか……よかったぁ……百枝家の未来を早々に風太に託さなくてよくなった」


 もし周介が生殖能力に異常をきたしてしまっていた場合、次男の風太に百枝家の未来を託さなければならなくなっていた。


 とはいえまだ結論が出ていないのだからその決断は早すぎるとも思うが、その辺りはまだ結論は早すぎる。


「とはいえ、周介君の体に起きていることは決して楽観視できないっていうことはわかってもらえたかな?そういう可能性だって十分にあるってことだよ。こういう検査も、必要に駆られてやっているだけで、別に君をいじめたいとか、辱めたいとかそう言う気持ちでやっているわけじゃあないってことはわかってほしいね」


「ん……それは……まぁ……」


 頭ではそれが必要だということはわかっても、心から納得できる気はしない。というより納得したくないというのが正直なところだろう。


 多感な時期の高校生にこのようなことを強いていることがそもそも間違いだということはドクはわかっている。だから周介に無理矢理納得してほしいとは思っていなかった。


 ただ、この検査が必要不可欠だということも理解はしてほしかった。


「ですがドクター、それならそれで別のやりようもあったんじゃないですか?少なくともあんなふうにされたら、周介が文句言うのも仕方がないですよ」


「その辺りは公平性……というか確実性の問題だね。例えば後出し、あるいは別のタイミングで提出してもらっても問題はなかったんだろうけど、それだと途中で入れ替わったりする可能性が否めない。ここで出してもらって、しっかり本人のものであると確認することが大事なのさ」


 研究者が最も嫌がるのは情報にノイズ、もとい外的要因が加わることだ。事象を調査及び確認するためにその事象のみに限定しなければならない。


 だからこそ周介の精液を確認するためには、確実にその場で出してもらう必要があるらしい。


 教育的に良くないというのはこの状況では他所に追いやられてしまうものなのだというのはまた別の話なのだろう。


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