第53話 おっさん陰陽師、力になる
「……なんとも騒がしい様子であるな」
「これほどの者が街から逃げ出そうとしているとなると、今回の魔物の群れはかなり大規模なのかもしれぬのじゃ」
バルザルの街へやってきたのだが、街へ近付くにつれて街から避難する者は増え、街の門の前はかなり慌ただしい様子となっていた。反対に我らのように街の中へ入ろうとする者はほとんどいなかった。我らと同じように街へ向かっていた者もこの様子を見て避難していったのかもしれない。
門の者に冒険者証を掲示する。レイラは冒険者証がないので、他の街と同様に検査をしてからとなるが、普段よりも短い時間で街へ入ることができた。
「おお、あんたたちは冒険者なのか! それも2級と3級とはとても心強い!」
「なにやら大変な状況のようじゃな。詳しい話は冒険者ギルドへいけば聞けるのか?」
「ああ、魔物の群れは早ければ明後日にはこの街に到着するかもしれねえって話だ。今も騎士団と冒険者ギルドの方で連携をして作戦を立てているらしい」
門番の者はエルネと我の冒険者ギルドを見て嬉しそうにしている。この状況で戦力が増えるのは街の者にとって嬉しいのだろう。
しかし早ければ明後日とは思った以上に時間はないらしい。魔物の種類にもよるが、速く走れる魔物も多い。少なくともワイバーンのように高速で飛翔するような魔物の群れではないようだ。
「……こんなことを冒険者のあんたたちに頼める義理はねえが、どうか力を貸してほしい! このバルザルの街はたいして大きな街じゃねえかもしれねえけれど、この街で生まれ育った俺や他のやつらにとっては大切な場所なんだ。頼む!」
そう言いながら門番の者は我らに頭を下げてきた。
「うむ、我らもできる限りのことはしよう」
我にとってはこの街は旅をしている最中に寄ったひとつの街にすぎぬが、この街で生まれ育った者たちにとってはこのバルザルの街が故郷である。我にとっての京の都と考えると、初対面の我らに頭を下げてくるこの者たちの気持ちもよくわかる。
エルネの言葉の通り、できる限り協力しよう。
「おお、第二級冒険者のエルネ殿に第三級冒険者のヤコウ殿か! エルネ殿の名は噂にも聞いている。このような状況でなんと幸運な。どうか私たちに力を貸してくれ!」
「うむ、妾たちにできる限りはな。まずは詳しい状況を教えてほしいのじゃ」
慌ただしい街中を通り過ぎ、この街の冒険者ギルドへとやってきた。冒険者ギルドの中も緊迫した雰囲気が漂っており、それぞれのパーティやグループにわかれて魔物の群れの迎撃準備をしていた。
受付の者に声をかけ、冒険者証を見せると冒険者ギルドマスターの部屋へと案内される。こちらも慌ただしい様子であったが、我らが第二級と第三級冒険者と知るとすぐに時間を取ってくれた。
大柄な冒険者ギルドマスターのサーロン殿は我らに頭を下げてくる。この者もなかなかの強者のようだ。やはりどの街でも冒険者ギルドマスターはそれなりの強さを求められるのであろう。そしてそんなサーロン殿に余裕がなさそうなところを見ると、よっぽど魔物の群れが強大なのか、こちらの戦力が少ないかのどちらかだ。
「ああ、承知した。まず魔物の群れについてだが、この街の西の方角にある大きな森の奥からこの街の方へ向かっている。それよりも奥にある地からやってきているのだろう。魔物の群れの強さは第四級から第五級相当なのだが、問題はその数だ。斥候部隊からの情報によると様々な種類の魔物が巨大な群れとなり、その数は数百をゆうに超えているのだ……」
第四級相当となると、ワイバーンのひとつ下か。第五級相当の魔物ならば森の中でも遭遇するくらいの魔物であるが、確かに数が多いな。
妖もそうであるが、数は大きな力でもある。
「そしてこちらが一番の問題なのだが、この街の主戦力となる騎士団の第二級相当となる者の部隊が遠征に出てしまっている。俺も現役の頃は第二級相当だったが、すでに引退している身だし、街全体の士気が落ちてしまっているのだ……」
「なんと……」
どうやらこの街で一番の強者が不在のようだ。主力を欠くことは大きな戦いにとって相当な痛手である。なんとも運がなかったな……。
「騎士団の部隊が戻ってくるのは5日後になり、2日前に近くの大きな街へ救援を呼びにいったがこちらもそれと同じくらいかかるだろう。最悪の場合、籠城をしてこの5日間を耐えることが私たちの必須条件だ。こちらは俺を含めた第三級相当の冒険者の数名が主な戦力となっており、防衛に有利な街の外壁はあるが少し厳しい状況だったのだ。今この街にエルネ殿とヤコウ殿が来てくれたのはまさに天の助けであったのだ!」
サーロン殿が力強くそう言う。
確かにその状況であれば、第三級以上の冒険者の助けはかなりありがたいのだろう。
「……ふ~む、この状況で魔物の群れが相手となると、ちと厳しいのう」




