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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第七十八話 人工知能の苦手なモノ



 いざ攻撃を開始しようとした瞬間、背後で息を呑む声がして私は思わず振り返った。


 見れば、補助席の中で縮こまる金髪の美女。彼女は両手で自分の肩を抱き寄せるようにして身を縮こまらせ、座席の中で思い切り身を引いている。心なしか、その白い肌も青ざめていた。


「テレサさん?」


『わ、わたし、ああいうウゾウゾしたの駄目なんですぅー!?』


「いや、メタルインセクトってああいうもんじゃ……」


 脚が多いという意味なら最初のマップにいる蟻型とかそうだったし、なんだったら本数でもヤドカリとか負けてなかったのでは。というかAIが数が多いものビビってどうするのさ。


『だ、だって足が10本以上あるし! 細身でシャカシャカしてるし! とにかく駄目なんです~~~!! いやぁ~~~』


「あらら……わかった、わかった。目を閉じてて、こっちで対処する」


 すっかり縮こまってしまった彼女に、私は困り果てて前を見た。


 嫌がってる相手に無理強いしてもしょうがない。ここは私だけで対処しよう。


 狙いはおおざっぱでいい。迫りくるサソリ型を照準にいれて、引き金を引く。


「発射!!」


 大きく広げた指から、ピンクの閃光が放たれる。ズバア、と広範囲に拡散したフォトンビームが、狙い通り迫りくるサソリ型の群れを吹き飛ばした。


 ダメージそのものは、残念ながらさほどでもない。見た感じ、複数本が直撃しても、ダメージが増える、といった様子はないようだ。やはり、拡散させても一発は一発、という判定か。


 昔のゲームで例えると、ゲロビを根本でガードしたら後は無視できるような話かね。


 だから狙うのは直撃そのものに加え、どれだけエフェクトに巻き込めるか、だ。そしてそういう意味では、扇状に拡散する指ビームはかなり都合がよかった。


「よしよし」


 薙ぎ払った地面が爆発し、それに巻き込まれたメタルインセクトが纏めて吹っ飛ばされる。ビーム本体との直撃で、6割ぐらいは消し飛ばせたか? あとはハンドガンで片付くだろう。


 パスパス、パスパス、と残敵を駆逐しつつ、薙ぎ払われた地面を見る。


 やはり、超高熱で溶解・膨張した地面が爆発したようだ。これもある種の水蒸気爆発だろうか? 乾ききった荒野の大地でこれだから、もっと水気のある地面だともっと大きなダメージが見込めるかもしれない。


 下手したら直撃ダメージよりもこっちの方が威力が大きいんじゃないだろうか。不可思議な話だが……ダメージ計算の関係で上限が低い所で止まってしまう直撃と違い、地形に関しては変な減算もなく熱量の影響が満額入る。地形を経由して、ビームの本来の威力が間接的にメタルインセクトに影響するという訳か。本来直撃はそれに加えて運動エネルギーのダメージも入るんだけどね。


「ついでに言えば、複数を巻き込みやすいし、何より外しようがないのもいいな」


 これまでだと複数の敵を巻き込もうと思ったら砲身をぶん回すしかなかったが、最初から拡散していればその必要はない。一発オーバーヒートのビーム兵器にとっては地味に重要な要素だ。


「いいねいいね、浪漫だけでなく実用性もありそうだ。このままジャンジャン敵を倒していこう」


『あ、あの……別の敵にしません?』


「えーと、ごめんね、ちょっと我慢してほしいかな……」


 残念ながら現状だとコイツらが一番テストにも稼ぎにも都合がいいので。


 苦笑いを浮かべつつの私の言葉に、後ろの座席から帰ってきたのは「ひぃん」という泣き言だった。


 そんなこんなで狩りは続行。


 正規ルートを通っているのと、あるいはシステムからの調整もあってか、同じところに留まっていても無限にサソリが湧いてくるという事はないので、適宜場所を変えながら、サソリ狩りである。


 連中も黙ってやられてくれるという事はなく、パスパス、と尻尾のライフル弾で反撃してくる。それをメガアームの腕で防御しつつ、反撃でビームをぶち込む。


「ふんむ」


 あとはハンドガンで駆逐するだけなのだが……流石にちょっと飽きてきた。


 私は武装を切り替えると、ふんす、とメガアームに格闘の構えを取らせた。指先のマニュピレーターが、甲側に向けて畳みこまれる。人間ではありえない動きだが、まあコイツはあくまでロボットだからね。そのまま手首を折り曲げて、人間でいう掌底の形をとらせた。掌には、金属製のスパイクがずらり。


 指という繊細で壊れやすい機材を守りつつ、白兵戦に応じる為の形態である。もともとメガフレーム腕は格闘戦も想定しているので、これはデフォルトで備わっている機構だ。


 やっぱさ……でかい腕があると、殴りかかりたくなるよね!!


『あ、あの? ショウさん? 何をする気ですか???』


 補助席からテレサが呼びかけてくる。その声は震えていた。


「いいから目を瞑っててねー」


『え、ちょ、ま、え?? 冗談ですよね???』


 冗談じゃないんだなあこれが。


 私はスラスターで前進すると、手近なサソリに殴りかかった。


 上から振りかぶった拳が、サソリ型を叩き潰す。地面と拳の間に挟まれて、木っ端みじんに砕け散る敵。操縦桿を通して伝わってくる手応え、爆散して飛び散る手足。フレームの軋む音が操縦席にまで伝わってきて……これこれ! 白兵戦はこうでないと!


 さらにその場でターンして、飛び掛かってきたサソリ型に横殴りに裏拳を叩き込む。空中でメガフレームに接触したサソリ型は衝撃に耐えられず、パァン、と弾けるように四散した。


 そのまま、HPが減った敵を格闘戦で薙ぎ払っていく。多少は振動カッターによる反撃は受けるものの、大した痛手ではない。メガフレームの装甲厚に物を言わせて捻じ伏せていく。


 いいねこれ、ストレス開放にちょうどいい! たまには色々考えずに暴れたい日もあるさ!


 そんなこんなで私としては大満足ではあったのだが……。


『ひ、ひぃい! 脚が、脚がぁ!? ばらばらって……んひぃ!?』


「だから、目を閉じてろっていったのに……」


『だ、だって、だってぇ……。目を閉じてたら、想像しちゃってぇ……』


 後ろから聞こえてくる、情けない悲鳴。


 最後のサソリ型をわしづかみにしつつ振り返ると、そこには補助席ですっかり縮こまってしまっているテレサ。目を指で隠しているものの、指の間からばっちり外を見ちゃってしまっていたようだ。


 いやまあ、目の前に苦手なものがあって、それが今どうしてるかわからない、っていうのもまあストレスにはなるが……。


 でもそれは人間の話であって、君はAIでしょ。全く。随分と人間臭いAIもあったもんである。


 まさか中身が人間……は無いか。オフラインモードで、そもそも部屋の回線もまともにつながってないし。


『ぐすん、ぐすん……』


「……はぁ。悪かったよ、ごめん。こいつ仕留めたら、前線基地に行こうか」


『ずびばぜん……』


 なんだよ、これじゃ私が彼女を虐めたみたいじゃないか。


 ついには鼻声すら上げ始めたテレサになんだか気まずい気分になりつつ、私はジタバタもがいているサソリ型の胴体をぐしゃっと握りつぶした。


 そんなこんなで、試験運用をかねた狩りは切り上げて移動を開始。


 幸いな事に、前線基地のある高台が見えてきた頃には、テレサはある程度元気を取り戻していた。


「そろそろかな」


『そうなんですか? まだまだ、何も見えません……』


「まあこの辺りは砂も多いしね……」


 モニターには、宙に舞う砂のせいで解像度が大幅に低下している外の様子が見えている。


 とはいえマップを見る限りは間違いない。そろそろ、前線基地に辿り着くはずだが。


 あ。


 いやまてよ。


 確か、前線基地のすぐ近くには、移動要塞型のボスの残骸があって……。その周りは……。


『あ、砂嵐の向こうに何か見えてきましたよ。あれが前線基地ですか?』


「ちょ、ま」


 慌てて、モニターの映像そのものを落とそうとする私。


 だが残念ながら、コンソールのスイッチを切るより、彼女の優秀な像認識能力が対象を識別するほうが早かった。


『ほえー、前線基地と聞いていたから、もっとこじんまりした……もの……を……?』


 掠れるように途切れていくテレサの言葉。私は諦めて、VRヘッドセットに指をつっこんで耳を塞いだ。


 直後。






『…………キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァ!?』






 耳をつんざくような乙女の悲鳴が、ヘッドセットの中に轟いたのであった。


 うむ。我が事ながら、実に迂闊。



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やはり不憫枠……
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