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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第六十四話 バグ工船


『……とまあ、そういう感じになった訳だ』


「な、なるほど」


 その日の夜。


 私は友人から、事の顛末を聞いていた。


 少々興奮気味に話す友人に対し、私はひたすら相槌をうって聞くだけに徹している。いやまあそりゃ、言える事なんてないわなあ。


『おかげで企業ギルドは大炎上。絶賛ネガキャン中……といいたい所なんだけど、同じタイミングで色々起きすぎてね。謎のレイドボスの出現とか、Idollの大規模無料配布とか、さらには初の全ワールド統一大会の告知とか、火種が多すぎて霞んじまってる』


「そ、それは残念だったね……」


『まあな。まあでも、こういう新しいネタで盛り上がってる方がゲームとしては健全だから言えることはないわあー』


 そういう友人の口調は軽く、まあとりあえず、うっぷん晴らしできた事で気持ちは落ち着いているらしい。


 件の、企業ギルドのやらせ討伐作戦についてだが、これに関してはなんとか良い方向に転がったようだ。流石に、連中が情報戦機を持ち出して中立プレイヤーを悪役に仕立てようとしていたのまでは予想外だったが、そこにさらなる予想外がぶち込まれた事で結果的に企業ギルドはその悪辣な思惑を表ざたにされ、絶賛初心者集団から総スカンを食らったらしい。というか、何も知らなかった他の一般企業ギルドプレイヤーからも反発は大きかったようで、多少の違約金もものともせずに全員に所属キャンセルされて、あの作戦に参加した企業ギルドはただいま運営が火の車だそうだ。


 よかったというか、なんというか。介入した甲斐があったというものである。


 最も、またしても謎のレイドボス呼ばわりは避けられなかったのだが。いやまあ狙ったんだけどね。


『それにしてもなんだったんだろうなあ、あの恐竜型レイドボスのぶっぱなすビーム。見た事ない色だったけど。直撃くらった企業の最新鋭重量級が一撃で消滅だぜ、どんだけ威力あったんだよ。最前線のボスのビーム攻撃だって、大ダメージどまりで蒸発とかしないのに』


「そ、ソウダネ……ナンカオカシイネ……?」


『あれから知り合いにビーム使うのが増えたんだけど、やっぱあんな色のビームはないんだってさ。なんとかスキルを開放したら三種類に増えたー、とか言ってたな……。もっと使いこんだら出てくるんかね、あの虹色ビーム』


 いや、多分普通にやってたら見つからないと思うよ、などと言えず、私は曖昧に笑って誤魔化した。


 しかし思っていたのと大分挙動がおかしいぞ。てっきり、既に損傷している機体が落ちただけかと思ったら、どうやらビームの直撃を食らった機体は全滅したらしい。どう見ても私の知っているビームの威力じゃない。地形と同じ計算式がちゃんと適用されている……? もしかしてバグだろうか。


 いやまあビームの威力が不自然に低いのもバグなんだが。


 ただ、なんていうかちょっと怖い。明らかに運営の想定外の挙動をしている気がする。ちょっとあの合成ビーム、今後はできるだけ使用を控えた方がいいかもしれない。運営ってユーザーに不利なバグとか仕様とかは放置するけど、ユーザーに有利なそれは顔真っ赤にして修正したり利用者をBANしてくるのは昔からの変わらぬ性質だからね。


 悪い意味でも運営って人間だからさ……。


「そ、それよりさ。びっくりしたね、Idollの無料配布とか! 運営太っ腹だよね!」


『ん? あ、ああ、そうだな。オフライン専用モデルだから俺らみたいなギルドプレイヤーにはあんまし関係ないけど、まあ随分な大盤振る舞いだよな。なんでも、手違いで500名ぐらいのプレイヤーに配信しちまったから、開き直って全員サービスにしたらしいけど……ほんとかね? 最初から全員に配るつもりだったと俺は見てるけど』


「はははは……」


 その誤配信に当選した身分としては苦笑いするしかないけどね。


 勿論、この全員サービスされたIdollとはテレサの事である。誤ってうちに来たとは認識してたけど、まさか結構規模の大きいミスになってたとは……。それだけ配られていれば話題になったかもしれないけど、彼女、オフライン専用のサービスだから下手したら送られてきても気が付いていなかった人が殆どなのかもな。


 これを機に今後オフラインプレイヤーが増えるのかもしれない。


 そうなると、ゲームの活性化にマイナスになりそうなものだけど……そこに合わせて差し込まれてきたのが、もう一つのビッグニュースという訳だ。


 ビルドロボオンライン初めての大規模公式大会。これまではギルド間で私的に行われている小規模なものばかりだったが、いよいよ、という事の様だ。


 詳細はまだ不明のようだが、ネットを見ても話題はそれで持ち切りだ。


『まあでもやっぱ一番は全サーバー全員参加での大会告知だよな。サービス開始から一年ちょい、まあ遅いぐらいだが、いよいよって感じだな。ハーフアニバーサリーで大きな動きが無かった時は、実は経営やばいんじゃないかとか言われてたけど、これの準備が間に合わなかった感じだったのかね?』


「お前そういう印象あったゲームに人を誘ったの??」


『いやあ新人増えたらサービス延長に繋がるかなって……』


 まあ気持ちは分かるが……。実際めたくそ楽しんでるからいいんだけど。


『ま、しばらくはルール発表待ちだな。俺はおとなしく普通に遊ぶけど、お前はもうちょっと先まで進めておいた方がいいかもしれないな。進行度合いで足切りしてくるかもしれないし。なんなら手伝おうか?』


「まあ、今の所はいいよ。自力で工業地帯までいけたし、今はその先の荒野に挑戦中。あそこの無限湧きなんなの?」


『あ、あー。お前、もしかしてなんかやらかした? あの荒野、ちゃんと防壁の出入口潜って外に出ないと雑魚が無限暴走湧きするって聞いた事があってさ……』


 マジか。


『……何やったの? あの防壁普通の方法じゃ破壊できなくて、俺が知ってるのもグリッチじみた壁ぬけやった奴の動画だったんだけど……』


「ま、まあ、その、色々あってねー? あはははー」


 それについて話すと自動的に合成ビームの話になって私が謎のレイドボスだってバレちゃうからね! 言えるかぁ! 今回は友人もまとめて消し飛ばしてんだぞ私! 気まずい!!


『……まあいいか。じゃ、そういう訳だから、必要だったら声をかけてくれよ』


「ありがとー。そん時はよろしく頼む」








『あ、おかえりなさい、ショウさん』


「ただいまー」


 そして、ゲームにログイン。


 ホームに戻ってくるなり、私の元にぴょこぴょこ走ってくるテレサ。もうそろそろ見慣れた光景だが、なんていうか癒されるねー。


 単なる美少女キャラクターじゃなくて、あっちからコミュニケーションをとってくるというのが実にいい。こちらからのアクションに応答するだけだと、結局ただの作り物、って感じが強いからね。


「んー。聞いてよ、テレサさん。なんだか、思ったより大ごとになってたみたいでさー」


『? どういう事です?』


 小首をかしげる彼女に、私はあの合成ビームが規格外の威力を発揮していた事について軽く伝えた。話を聞いた彼女はうーん、と考え込んだあと、何か思いついた事があったのか、コンソールをカタカタと打ち始めた。


『えーと。現場を直接観測した訳じゃないので断言はできないんですが……』


「うん。憶測でいいよ」


『ありがとうございます。えっとですね、あの合成ビームは、プラズマ粒子とフォトン粒子が、互いに干渉しあった結果発生した現象だというのはお話しましたよね?』


 それについては大前提だから知っている。


 プラズマ粒子とフォトン粒子、どちらも高エネルギー粒子であり、本来であれば反発しそうな所だが、フォトン粒子側には“周囲の影響を受けにくい”という特性がある。流石に重金属の混じった霧の中ではそうもいかなかったが、それでも普通の霧や地磁気には影響を受けにくく、比較的真っすぐ飛ぶし威力も下がりにくい。その性質で、プラズマ粒子と反発を興しづらく、同軸線上だと互いに重なり合って、あの現象が発生する訳だ。


 ただ、それで威力が規格外に上昇する、というのは不思議な話だ。


『この相互干渉は、当然ながら一往復で終わるものではなくて、何度も何度も発生する訳です。それを踏まえて考えてみますと、ビームの威力が出ないのは、不可思議なエネルギー干渉の急激な現象が原因でしたよね? 本来、影響を与えるべきエネルギーがどこかに消えてしまうような……』


「ああ、うん。そうだったね、ダメージ計算判定が途中でとまって……る……あっ」


 そこで私もピンときた。


 つまり。


「……不可思議に消えてる計算式、それが粒子間の相互作用の仮定で、何度も繰り返し発生してる?」


『恐らく。あの合成ビーム内では、止まってしまうはずの計算式が、強制的に何度も繰り返されているような状態が発生しているようです。それによって、威力が20%ぐらいで終わったとしても、それが何十回と繰り返されれば……』


「額面通りかそれ以上のダメージが発生する……?」


 え。


 それって本当に正しい意味でのバグじゃん。


 運営にBANされる奴じゃん!? どうしよう、この合成ビームをぶっ放した様子、オンライン動画でインターネットに絶賛拡散中だよ!?


 知らなかったとはいえバグで利益得るのは不味い!


 どう考えてもすでに特定されてるよね、あっちはIPアドレスとか調べられる立場なんだから!!


「あわわわわ……」


『素晴らしい発見です、ショウさん! この合成ビームをもっと汎用化できれば、メタルインセクトの討伐も楽に……』


「駄目! 絶対にダメ! 危ない! この技術は封印する!!」


 恐ろしい事を言いだしたテレサを大慌てで静止する。


 一度だけなら誤射かもしれない。だが二度目以降は確信犯だ! 運営だって見逃してくれない!!


 と、とにかく運営に連絡して様子見だ。答えが返ってくるまでは触らないようにしよう。


『え、でも……』


「ほ、ほら、考えてみてよ! そんな凄まじい爆発、もしホームの中で事故ったりしたらどうする? イコンが損傷したりしたら大変じゃないか、余り過剰なのはよくないって、ね!?」


『……ま、まあ、確かに……』


 テレサのAIに負担をかけないように、あくまでゲーム内設定にのっとって説得を試みる。幸いな事に、彼女はすんなり私の意見に納得を示してくれた。まあプレイヤーサポート用のAIなんだから、基本的にこちらの言う事にはイエスマンなんだろうけど……善意の行動力が有り余ってるからね、彼女。妙な事をされる前に言い含めておいた方がいい。


「わかってくれた?」


『はい! ショウさんがそうお考えなら、それに従います』


「よかった。うんうん」


 でも、正直ちょっと……いや、とてつもなく勿体ないというか、惜しいな。


 合成ビーム……もっと使いたかったな。ぐすん。




◆◆



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