第五話 適温で暖めましょう
試行錯誤の末に敵を倒した事でゲットした『ビーム制御』スキル。その成果を確認する為、私は一度ガレージに戻った。
今回は撃破されずに戻ってこれたので、愛機は無傷のままである。多少汚れたマシンピストルやビーム砲の砲口、土塗れの足回りが、逆にどこか誇らし気に見える。
「っと、まずはビーム制御スキルを確かめてみないと。えーと、どれどれ。あ、これか、武器のカスタマイズに新しい項目が増えてる」
アセンブル画面、ビーム兵器の選択画面に増えたボタンを叩くと、表示されたのは『解放率』『エネルギー出力』の二つの項目だ。
「解放率……? 収束率じゃないのか」
とりあえず数値を弄ってみると、解放率は表示された円グラフのようなものが縮み、エネルギー出力は表示される数字が100%と10%の間で増減する。
なるほど。
「解放率は……もしかしてビームの直径か? 出力はまんまだけど……デフォルトが100%? ええ、つまり今まで全力全開で放出するのがデフォルトになってたの?」
そりゃあ、一発でオーバーヒートする訳である。
ただ逆に言うと、それで最初の敵を倒せないぐらいの威力っていうのは、やはりどちらかというと調整をミスっている気がする。
「……とりあえず、解放率もエネルギー出力も50%にして出撃してみるか……」
何はともあれ、実際に試してみないと分からない。
数値を設定して、すぐさま私は再出撃した。
いつもの丘に出ると、早速複数の敵反応。ガレージに引っ込んだ事で、敵も復活したようだ。
「とりあえず、囲まれないように、外周の敵を探して……堅実な立ち回りって、意外とめんどくさいだよなあ……」
某死にゲーとかやった事あるけど、敵集団から投石とか弓矢で一匹ずつつり出して戦うの、安全だけど作業でなんか面白くないんだよね……。作業ゲーそのものは嫌いじゃないけど、ふとした拍子にぷつりと熱意が切れちゃう事ってない?
などと思いつつ、適切な攻撃位置に移動。
今回はテストだからマシンピストルではなく、いきなり最初からビームを撃ちこむ。
「照準を合わせて、と。発射」
ボタンを押し込む。途端、ビーム砲に光が満ちて、一筋の細いビームが発射された。
早い。準備時間がさっきまでの半分ぐらいだ、いや数値設定どおりではあるんだが。
放たれたビームはメタルインセクトに直撃すると、爆発の代わりに虹色の散乱光を放ってHPを半分ほど消し飛ばした。
「うんん???」
おかしいな。私の目が可笑しくなったか?
ビームの直撃で装甲が赤熱しているメタルインセクトのHPバーを確認する。……何度見ても、減り具合は半分ぐらいだった。
「なんで????」
おかしい。出力も解放率も半分にしたんだから、ダメージは半分かあるいは四分の一ぐらいになってるもんじゃないの? どうして最大出力と同じダメージ?
それでいて、ヒートゲージはまだ余裕がある。連続で撃ったらオーバーヒートするかもだが、数秒置けばもう一発撃っても大丈夫だろう。
なんで???
このゲームの計算式どうなってんの???
「って、そんな事より、トドメだトドメ」
ビーム攻撃を受けたメタルインセクトが動き出しているのが目に入って、慌てて再度トリガーを押し込む。発射されたビームの直撃を受けて、弾き飛ばされるように転がっていったメタルインセクトが消滅する。
経験値とアイテムの入手を確認して、私はヒートゲージに目を向けた。
今は大体90%ぐらい。ゆっくりとではあるが冷却が進んでいるので、少し待てばもう一発撃っても大丈夫だろう。
一方、視界の中には四つの敵性反応。今倒した蟻とリンクしていたと思われる敵が、足早にこちらに向かってきている。
四体……ちょっときついかも。
「とりあえず、次はマシンピストルで牽制して、っと」
後退して時間を稼ぎながら、ヒートゲージに気を配る。ある程度近づいてきた相手にマシンピストルを撃ちこんでHPを削ると、ビームを撃ちこんで撃破する。
「……照射時間そのものも半分以下になってるな。薙ぎ払うみたいな使い方は、ちょっと無理か」
出力調整のデメリットらしきものを見つけて、少し安心する。なるほど、最大出力だと照射時間にボーナスがかかるのか、代わりにダメージはあまり伸びないと。ゲロビ系では確かによくある調整なので納得感がある。
もしやるんだったら、戦闘中にステータスを弄る必要があるが、そんな悠長にしている暇、あるかな。あるいはこの重機コクピットでは無理だが、通常コクピットには使わないボタンやスイッチがたくさんあるので、あれらに関連付ければ戦闘中でも変更が可能かもしれない。
まあ、それは帰ってから試す事にしよう。
戦い方が分かってしまえば、残りの二匹は殆ど作業だった。後ろに下がりながらマシンピストルを撃ち、ヒートゲージが下がった所でビームを撃ちこむ。やってて思ったが、マシンピストルの弾はかなり散るがビームは狙った所にほぼ必中だった。この精度の高さもビームの売りかもしれないね。
「おっし、これでラスト」
画面の中で蟻が消滅する。
最後の一射でオーバーヒートしてしまったが、なんとか五匹の蟻を撃破する事ができた。最初にたった一匹に噛み殺された事を思えば、随分と進歩したものである。
「ふふん、ちょっとした優越感……お、なんだ。メッセージが」
『規定数のインゴットを入手しました。ガレージで新パーツを製造できます』
どうやら、敵からアイテムを得た事で新しいパーツが作れるようになったらしい。もしかすると、現状のカツカツ具合を解消するようなパーツが作れるかもしれない、私は喜び勇んでガレージに戻った。
◆◆
「おおー、色々あるなあ……」
そして早速カタログを拝見。アセンブルメニューに追加されていたパーツ合成のシステムを確認すると、どうやら特定のアイテムをゲットする事で合成できるパーツが増えるらしい、いわゆるキー素材である。流石に最初の敵だけあって、蟻からゲットした素材で作れるパーツはそこまで多くは無いが、初期購入できるパーツと比べても明らかに性能が高い。
購入できるのはあくまで基本パーツで、自由なアセンブルをしようと思ったら合成が必須という感じかな。まあ合成パーツは分解したり部品抜いたら新しいの合成しないといけないけど、販売パーツは買うだけでいいし。ちなみに不要になったパーツはリサイクルに回す事で貯めるとアイテム交換に使えるジャンクチケットになるそうだ。
「とにかく積載量どうにかならないかな、脚部パーツ脚部パーツ……お、あった! 重量二脚!」
一覧の中に、積載量に特化した脚部を発見して早速発注する。
すると、ガレージの中にあるパーツ合成用のハンガーに動きがあった。手術台みたいなベッドの上で、複数のアームがバチバチと火花を散らしながら何かを作り始める。溶接というより、3Dプリンターかな。
時間がかかりそう、と思いながら確認すると、そこには完了予定時間が表示されていた。
……長いな。
「今日はこれでお終いにして寝ようか」
ある意味ちょうどいい。本日のゲームプレイはここまでにして切り上げる事としよう。
セーブ処置を行い、VRヘッドセットを取り外す。
「ぷはあ」
なかなか面白かった、また明日もプレイしよう。
そう思いながら、私は就寝の準備を始めた。




