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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第四十五話 七色の輝き







 突如始まった逃走劇。


 機動力を強化した機体とはいえ、メタルインセクト達を振り切る事は容易ではない。


 通常移動速度なら辛うじてこちらの方が上だが、あちらは跳躍速度が非常に高い。背後から飛び掛かってくる突撃を回避するのは、私の背中に目が無い以上困難だ。


 が、背中ではないが、この場にはもう一組、目が存在する。


『ショウさん、左に!』


「わわ、とと」


 後部座席から飛んでくる警告に従い、機体を左にスライドさせる。直後、背後から飛び掛かってきたメタルインセクトが、地面を覆う配管にがっつりと牙を突き立てた。


 配管からぶしゅうと高温の蒸気が噴き出す。熱にもんどりうってひっくり返る敵を他所に、私はひたすら機体を駆け抜けさせた。


 高速移動で、機体が不安定にぐらつく。今にも倒れそうな機体を、転ぶ前に足を踏み出させて先に進む。子供のころの、竹馬競争を思い出す。


 それに加えて、足元はつるつるした曲面の配管で埋まっている。ちょっとでも気を抜けば足を取られて転倒してしまう。


 その先に待っているのは、テレサ諸共噛み殺される未来だ。


『まっすぐいった先で、右です! 路地に入り込んで後続を分断します!』


「ほい来た!」


 ガションガションと機体を走らせ、速度を少し落として路地に入る。背後を何匹かが跳躍でかっとんでいったのが見えたが、ざまあみろ。この先は曲がりくねった路地裏のような地形だ、これまで見たいに跳躍力にものをいわせて飛び掛かってくる事は難しい。


「まけた訳じゃないけど、これで少し余裕はできるかな」


『そうですね……いえ、敵の反応です。これは……上!』


「?!」


 警告にカメラを上げると、工場の壁の上に張り付いている敵の姿が見えた。


 追っ手ではなく、恐らくもともとここに潜んでいたメタルインセクトだ。もとよりこの辺りは連中のテリトリー、探すまでもなくそこら中にいる訳か。


「先手必勝!」


 敵がアクティブ状態に移行し襲い掛かってくる前にビームカービンの引き金を引く。バババ、とビームの照射を浴びた敵がひっくり返って地面に落ちてくる。が、叩きつけらる前に素早く反転、華麗な着地を見せた敵が怒りの声と共に飛び掛かってくる!


『ギシュアア!』


「ちいっ!」


 即座にプラズマピストルを発砲。今にも激突、噛み砕かれんばかりの至近距離から発射されたプラズマビームが、メタルインセクトの顔面を粉砕する。勢い止まらず機体にぶつかってきた首無し死体が、その勢いで砕け散って消滅した。


「ふぅ、あぶね……ってヒート率が危険域超えてる!!」


 明らかにヤバイ感じに青く光りながらぶすぶすと煙を上げるプラズマピストルを背後に向けて放り投げる。


 がん、ごろごろ、と配管の上を跳ねていくプラズマピストル。


 少しでも距離を稼ぐべく、私は機体の足を速めて路地裏から飛び出す……直後、路地の中でプラズマの大爆発が起きた。小型融合炉が弾け飛び、地形を変えるほどの熱量を生み出す。


 その爆風に背を押されるようにしてつんのめる機体。


 なんとか姿勢を安定させて振り返ると、今しがた逃げ出してきた路地裏周辺は超高熱で煤けて、壁材が歪んで今にも崩れ落ちそうになっていた。破損した配管から蒸気やマグマが噴き出して、えぐれた地面を埋めていく。


「あっぶね……。至近距離で撃ったのがよくなかったのか?」


『いいえ、あの短銃身だと磁場を完全に収束させる距離が足りません。もともと不安定な収束・加速で、場合によっては砲身を破損するような構造だったのでしょう』


「便利なものには裏があるっていうか、確率で自爆するような武器を流通させるなよ」


 そこそこ軽くて短銃身で取り回しがよくて気に入っていたのだが、まさかの落とし穴である。なんだかんだ重くてデカイキャノン砲は、ちっとやそっとの蛮用では暴発しなかった事を考えるとやはり冗長性というのは大事だと実感する。


「って、ぼんやりしている場合じゃないな。今の爆発で敵が集まってくる、さっさとここを離れよう」


『……いえ……もう手遅れのようです。周囲を見てください』


「え……」


 言われて視線を巡らせて気が付く。


 周囲を満たす、工場の排煙による白い霧。霞がかったその景色の向こうで、いくつもの赤い光がぼんやりと浮かび上がっていた。それらは全て敵の眼光だと気が付いて愕然とする。


『今の爆発による刺激で、周辺の敵が反応してしまったようです』


「そりゃそうか。そうだよな……どうしよ」


 このゲームは敵性反応がよくできていて、アクティブ状態になったら地形や視認性を無視して襲ってくる訳ではない。逆に言うと、視界に入っていなくともそれなりに大きなリアクションを起こすと敵が反応する事もある訳だ。


 あんな大爆発、例えプレイヤーであっても何か起きたなと身に来るに決まっている。


 どうする?


 ビームカービンは冷えているが、倒せて一体。駄目押し用のプラズマピストルはさっき爆発してしまった。


 あと残っているのは、ロケットブースターぐらいだが、これだって段差を越えるための補助装置にすぎない。真上に垂直上昇するだけでは、この包囲網は抜け出せない。


 万事休すか?


 まあしょうがないね、とあきらめかけた私の耳を、後ろの補助席に座るテレサの声が優しく震わせた。


『……気楽に考えましょう、ショウさん。私達は死んでも、イコンで再生されるだけなんでしょう? ちょっと痛いのは、我慢します』


 前言撤回。


 意地でもこの場を逃げ延びてやる。


 包囲を狭めてくる敵の姿から視線を外し、周辺の地形をぐるりと見渡す。


 手持ちの札に打開策がないなら、他に求めるまで。地形を利用しろ、幸いこの場は工業地帯。可燃物とかだっていくらでもあるはずだ。


 視界に入っているのは、地面を這ういくつもの配管。ぼんやりと、プラズマ誘導コイルらしき青い光が、霧の中でもよく見える。


 ……プラズマ、か。


 なるほど。


 足元を見下ろすと、ちょうど機体の立つ場所にも、ぼんやり光る発光体が確認できた。


「……テレサ、ダメ元で最後にちょっと博打をやる。付き合ってくれるか?」


『え? え、ええ。それは構いませんが……』


「よし。合図とともにロケットブースターで上昇する。衝撃に備えてくれ」


 返事はない。彼女の事だから、黙って座席にしがみついているのだろう。


 私は周囲の敵の動きに目を配り、操縦席のコンソールにあるロケットブースターのスイッチに指をかけた。


 周囲を取り囲みガチガチと牙を鳴らすメタルインセクト達。その躰が、ふっ、と低く沈み込んだ。


 跳躍の予備動作。


「今だっ!!」


 ロケットブースター点火と同時に大ジャンプ。糸で引っ張られるように飛び上がった機体の下で、とびかかってきたメタルインセクト達が激突して揉みくちゃになっている。


 最初の一撃は回避できたが、このままではそのまま包囲の真ん中に落ちるだけ。その前に私はビームカービンを地上に向けて狙いを定めた。


 撃つのは敵ではない。地面で煌々と輝く、プラズマ誘導コイル。あの中をプラズマが流れているなら、破壊すれば誘爆か噴出を引き起こせるはず!


「南無三!」


 引き金を引く。3点射バーストのビームが、青く輝くコイルに降り注ぐ。


 それは保護カバーを突き破って、配管の中に飛び込み、そして……。


「え?」


 それは、唯の爆発ではなかった。


 虹色に光る、極彩色のオーロラのような輝き。これまで見た事がないような輝きを放ったプラズマが、急激に膨張しながら膨れ上がって……。


 爆発。


 視界の全てが、白い闇に閉ざされていく。






 プレイヤー:ショウ、DEAD。


 死因:タンパク質凝固。







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