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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第四十一話 デカいは早い


 思わぬ形で明らかになったビーム兵器の問題。


 話を聞く限り一朝一夕で解決しそうな問題には聞こえないが、原因らしきものが特定できただけで大助かりだ。


 最近のAIって優秀なのね。本来ならばもっと色々話を聞きたいが、彼女がここに居るのがある種の問題であるという事も忘れてはいけない。後で運営から法外な使用料金を請求されても困るし。


「わかった。とりあえず参考にさせてもらうよ」


『対した事ができなくてすいません』


「いやいや。助かった」


 とりあえず、この話はここで一旦お終い。


 気分を切り替えて、パーツのカタログページを開く。雪山地帯での戦いで、大量にパーツが手に入ったからな。ごっそり増えてる。


「おぉー、たくさんある」


『それは……融通してもらったというパーツリストですか? 私が見てもよろしいですか?』


「ん? まあ、それぐらいなら……」


 許可を出すと、テレサは大胆にぐっと身を寄せてきた。彼女は何の違和感も感じてないように腕の中に納まりそうなほど身を寄せると、小さなウィンドウを覗き込んだ。


『まあ、たくさん増えてますね。カスタマイズのし甲斐がありそうです』


「そ、ソウダネ」


 自分より小さい彼女の後頭部を見ながら、私はちょっとドギマギしながら答えた。


 相手がプログラムで結局数字の羅列だとしても、このVR視点では可愛い女の子でしかないのだ。なんだかよい香りすら漂ってきそうな錯覚すら覚える。我ながらなかなかにキモち悪い反応である。


 なんとか雑念を振り払ってパーツリストに意識を向ける。


 数字の羅列、カッコいい3Dテクスチャを見ていると、やがて気持ちも落ち着いてくる。


「ほうほう、なかなかいい感じのパーツだな……」


 本来まだ早い地域のパーツだけあって、なかなか高性能だ。


 全体的に共通しているのが、放熱性が高そうな、熱がこもりにくそうなデザインをしている事だろうか。その分、物理的な防御力は低そうだが、フレームのつくり自体はしっかりしている。いわゆる、防御力よりも基礎HPで耐えるタイプのパーツが多いようだ。機動性が高く、多少の被弾はものともしないが、うっかり大きいのを纏めて食らってしまうと損害が大きくなるタイプ。玄人向けである。


「まあ、機体パーツはこんなもんか。で、武器はっと」


 画面を切り替える。


 こちらは機体パーツに比べると大分数が少ない。まあ、私があまり武器ツリーを色んな方向に伸ばしていないからだろう。ビーム系以外だと、最近使っていたマシンガンや最初にちょろっと使ったハンドガン、そして近接武器系統のツリーが伸びているぐらいで、それに応じていくらかのラインナップが追加されていた。特にマシンガンは狩りの影響かかなり伸びたので、武器もそれ相応に増えている。


 そして肝心のビーム兵器はというと……。


「おっ、こいつは……」


 ご丁寧に3系統全てに追加パーツを確認。それもいずれも小型化方向に推し進めたようだ。どうやら、寒冷地で活動するせいなのか猿型はラジエーターとヒートポンプ機能に優れたパーツのようで、それによる放熱効率化やエネルギー制御の簡易化が可能になった事で従来は不可能だった小型化の方向に舵をきったらしい。


「フォトンビーム砲は……ビームカービン? 短銃身に加え連射機能を搭載……取り回しがよさそうだな。まだ実験段階でヒートしやすい、か。プラズマビーム砲は……これハンドガンか? プラズマピストルって事……? 荷電粒子砲……こいつはずいぶんと小型化したな、ちょっとデカイ手持ち武器みたいだ」


 なんていうかこれまでのビーム砲はキャノンっていうか、手持ちにするよりも機体にマウントして運用するのがちょうどいいサイズだったが、ここにきてようやく手持ちにちょうどいいサイズが揃ってきた感じだ。まだまだ実験兵器という色合いは抜けてなくて、SFアニメのビームライフルまであと少しという所だけど、実用性は大分高まった気がする。


「むふん。さっそく機体アセンブリしてみるか」


『たのしそうですね』


「楽しいよ。このために生きてる」


 るんるん気分でアセンブル画面に向かい合う。ビーム兵器の充実もそうだけど、私の目には雪山で遭遇したレイドボス、その俊敏な動きが目に焼き付いている。


 そうだ、いままで何で気が付かなかったんだ。


 デカイ物が遅い、なんてのはゲームのやりすぎによる錯覚だ。あれらが遅いのはバランス調整の結果であって、本来大きいというのはそれだけで早くて重くて強いんだ。


 それをあのレイドボスは思い出させてくれた。連れて行ってくれた友人には感謝しないとな。


「さて、と。ベースはこれにしようかな」


 私は久しぶりにあの鈍足超重量級二脚……HEVY-2L-Megatheriumを選び出すと、それをさらにカスタマイズモードで分解する。


 装甲を取り外し、フレームだけにすると、メガテリウムの特徴的な構造が明らかになる。


 この脚部、二脚歩行に見せかけているが実際は、関節を曲げて歩いていないのだ。駆動部は実際にはシリンダーの伸縮で見た目歩いているように稼働しているのが実体。故に、他の脚部と違って横軸が少なく、より重たい物を詰めるがその代償として動きが遅い。フレーム構造も、人間というより獣脚に近い。


 ある意味酷いトラップである。最序盤にこんなのが出てきて、桁違いの積載量に喜び勇んで武装を積み込むと、戦場ではトロトロ歩く事しかできない訳だ。重量級に偏らないように苦手意識を植え付けたい、みたいな運営の思想が透けて見えるが、まあそれは今回は置いておく。


 大事なのは、この脚部が無茶苦茶頑丈に作られているという事である。魔改造のベースにはもってこいだ。


「よぉし、ちょいと頑張るかあ」


『あの……私にも何か、手伝えることは……?』


「あ、いいよ。静かに見てて」


 何かの手違いで来てるっぽいAIに使わせる訳にはいかないからね。私がそう指示を出すと、テレサは心なしかしょんぼりと肩を落とした。


『そうですか……わかりました。その、何かあったら、遠慮せずに言ってくださいね?』


 しょんぼりしながらも、こちらを気遣うこの仕草。罪悪感を刺激されるというか、このモーションを組んだ奴はよっぽど女を泣かせてきたに違いない。


 後ろ髪を惹かれながらも、私は改造画面に集中した。


 あの大ムカデを真似て、足先を大幅延長する。脚部全体を覆い隠すような装甲を排除し、大きく引き伸ばした脚部構造は人というよりダチョウの足のようだ。


 トップヘビーであきらかにバランスが崩れるから、センサーマストでそれを補いつつ。高機動型っぽく機体の左右にウィングを伸ばして、腕は軽量級の取り回しのいい奴を。頭部は……そうだな、高機動タイプにしたから、追従性の高い奴を選択、っと。


 あとはカラーリングを決めて……今日は緑にしようかな。名前は……そうだね、二本足の高機動型って感じだから“ラプトル”、っと。


「完成!」


『わー、パチパチ!』


 設計完了ボタンを押すと、ハンガーの中でロボットアームが動き始める。粉微塵に消し飛んだ愛機の残骸をかたずけて、新しい機体の構築が始まる。


 バチバチ火花を散らす建造の様子に満足して、私は今日はそろそろこのあたりで切り上げる事にした。


「それじゃ、俺は落ちるよ。お疲れ様」


『はい、お疲れ様でした。また、今度』


「ああ」


 頷き返しつつ、恐らく彼女と再会する事は無いだろうな、と私は思った。


 明日ぐらいには運営が対処するはずだ。彼女は没収され、私との会話の記憶も初期化されるだろう。


 それをちょっとだけ残念に私は思ったのだった。





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