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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第四十話 未知の壁


「いやー、悪い悪い。まさかこんな事になるとは」


 戻ってきた私を出迎えた友人の声は、ちょっと気まずそうだった。


「初心者を歓待するつもりが、まさか先にやられちまうとはな」


「仕方ないよ。相手が相手だ」


 実際に相手をしてみると、あのレイドボスが現状で攻略不能というのもうなずける。ましてや本戦は雲の中、空中戦になるのだろうし。ドローンを足場に雷足で移動するボスの攻撃を回避しつつ電磁障壁をかいくぐってダメージを与えるだけでも一苦労なのは想像に難くない。


 というかむしろ、あのボスの方がマシとまで言わせる対空砲の基地内部はどんな魔境なのか、逆にちょっと気になってくる。


「しかし戻ってくるのが遅かったな。何かあったか?」


「まあ、ちょいちょい、あのボス相手に抵抗を試みてね」


「……! ちょっと詳しい話を聞かせろ」


 ガタッ! という擬音が聞こえてくる勢いで友人が話に食いついてくる。とりあえず、私はボス相手に試みたいくつかの話を聞かせた。


 まあ、すでに何度かトップギルドが交戦済みというから、この程度の情報に価値はないと思うが……。


「ははぁん、なるほど……」


「まあ大した情報じゃないと思うけど、どう?」


「いや。結構、大きいぜ。その話の価値」


 なんと?


「ドローンを足場にするのが分かってるから、それを壊して動きを封じる……ってのはそりゃ当然どのギルドも試したけど、話によれば飛び交うドローンが多すぎてどうにもならなかったらしい。ボスの移動経路を予想してドローンを破壊、足を止めるなんてとてもじゃないができなかったらしい」


「え、でも……」


「そこなんだよ。お前が戦った時のボスは、明らかにドローンの数が少ない。単なるプライベートとオープン回線の違いだけとは思えない、多分他にも理由がある」


 言われてちょっと考え込むが、残念ながら比較対象となるギルドによるレイドボス戦を知らないからなんともいえない。


 ただ予想は出来ないこともない。


「戦闘場所が地上に近かったから……とか? あとは、私が単独だったからとか」


「ソロ相手なら行動が単純化するんで火力さえ足りてればなんとか、ってのはあり得そうだが、流石に超難度ボス相手にソロでガチるのは無謀だな。となると地上付近ってのが条件か? 足場になるドローンの展開が阻害されるとか……」


「あー。それはあり得そうだな……」


 思い返せば、いくら足場機能に特化したドローンと言えど、ボスに踏まれた時はちょっと高度が下がっていた気がする。そうすれば当然、地表に激突する事もあり得る訳で。他にも地形の隆起、岩に加え、上空と地上付近では風の流れも違うはずだ。そういった環境の違いがボスの行動に制限をかけた可能性は十二分にある。


 となると、考えるべきはボスが地上に降りてきたのは偶然か、必然か?


「なあ。もしかして、知らない間にボスを地表に誘導するフラグを踏んでたんじゃないか、私達」


「……ありえるな。鍵はマンモスか? 普段、渓谷の底にいるアイツが上に出てきたから、それに釣られてやってきたとか……」


 うーん、と二人で頭を捻る。


 こういう時、ギルドに所属していれば情報を流してメンバーに実証してもらえるんだがな。仕方ない。


「……二人で考えてても仕方ない。いっそ掲示板に情報流してトップギルドの皆さんに頑張ってもらうか?」


「しゃーないね。情報の価値を考えると勿体ないが、換金方法がないもんな。ちぇ、こんな事ならどこかのギルドに移籍しておけばよかったぜ。今からその為だけにギルドに入るのもめんどくさい」


「ゲームでも人が集まると面倒な縛りが出来るからねえ」


 三人集まれば派閥が出来る、というのが人間だ。それはゲームであっても変わらない性であり、二人で遊ぶのがある意味一番気楽ではある。


「ま、こっちの方で情報はばら撒いておくよ、後日お楽しみに。それで、そろそろ時間じゃないかい?」


「あ、そうだな。オンラインはこれで終わりにするよ。んじゃ、また」


 時計を見れば、そろそろ回線の試験時間終了が近づいてきている。これもいつになったら本稼働になるのやら。予算やら何やらを理由にまた後回しにされそうな気がする。


 またね、と別れの挨拶をして、私はオフラインに切り替えた。






『おはようございます、ショウさん!』


 ちょっとだけカタログを見てから終わろうか、そう思ってオフラインのホームに顔を出した私を出迎えたのは、喜色を顔に浮かべたテレサだった。


 そういえばこっちには彼女が居るんだったな。一日もたっていないのに忘れてた。


「あ、ああ、おはよう、テレサ」


『はい! なかなかスリープベッドから起きてこられないので、少し心配していました!』


 なるほど、あちらの認識はそんな感じなのか。


 プレイヤーがログインしなくなったらどういう認識になるんだろうか……いや、そんな事を考えてもしょうがないか。あくまでこれはゲームで、あっちもよくできているとはいえプログラムに過ぎない。


 私は駆け寄ってくる彼女からちょっと距離を取りつつ、アセンブル画面を開く。


 やはり、一気にパーツが追加されてる。しめしめ。


『? それは?』


「あ、ああ。ただ寝ていただけじゃなくてね、ちょっと友人のツテで資源を確保してきたんだ。テレサさんは何をしていたんだい?」


 カタログに目を通しつつ、なんとなく尋ねてみる。頭ではただのプログラムとわかっているんだが、あまりにも感情豊かに再現されているものだから、本当に人と話しているような気分になってきてしまう。


 まあでもある意味、こういうのも人類の夢だよな。お喋りできるAIとか。


『はい! 実は、ショウさんの為にビームの実証実験を行っていました!』


「……なんだって?」


 ……なんだって?


『こちらにどうぞ!』


 そういって案内されたのは、ホームの一角にあるハンガー。恐らく彼女の為に解放されたのであろうそのスペースでは、ラックに固定されたフォトンビーム砲と、その射線上に建てられた鋼板の姿があった。何度か照射実験が行われたと思しく、鋼板には穴が開いており、周囲の床面には金属の塵みたいなものが散乱している。


『その……ショウさんの戦闘記録を拝見した所、ビーム砲の運用に苦労されているようでしたので、私の方でもその原因追及の為に色々試験をしてみました!』


「え……そうなの? ありがとう、悪いね」


 テレサの言葉に目を丸くする。確かに、ビーム砲の運用に苦労している的な話を少し前に話したが……最近のAIってそんな事まで出来るの? 凄いね。


「何かわかったの?」


『……それは、その。分からない事が分かったといいますか……』


 確認すると、途端に勢いを失ってもじもじし始めるテレサ。何だそりゃ?


『ええとですね。実証試験の結果、ビーム兵器は機動兵器の装甲材質を十二分に溶解させうる熱量を発揮しているのが計測されました。ですが、実際にそれを試験素材に照射した所、理論とは大きく異なる結果が観測されまして……』


「ふむ」


 それはまあ……私もちょっと感じていたところだ。マシンガンで簡単に蜂の巣になり、草原が燃える野火ぐらいでオーバーヒートを起こす序盤のメタルインセクトが、どうしてビーム兵器に全然ダメージを受けないのか。


 巻き込んだ地形がクレーターになるぐらいの威力なのだ。普通に考えて、蟻ぐらいの雑魚なら木っ端みじんになっていないとおかしいのが道理だ。てっきり、変にビーム耐性が高いのかと思ったが、火山地帯まで進んだ結果としては、メタルインセクト全てにその傾向があるとみられる。


 開発が意図してビーム耐性を高めたのでなければ、原因は恐らく、バグか何かと考えるべきである。


 そしてそれを、テレサはどうやら自力で突き止めたようだ。


『観測結果だと、ビームの生じる熱量の10から20%しか、材質に伝播していないのが確認されまして……それ以上は、なんていえばいいんでしょう。熱量がどこかに消えてしまっているというか、ビームの粒子そのものが無意味化してしまっているというか……。計算式が、途中で止まってしまっているような不可解な現象が確認できました。この惑星の重力や特殊な磁場によるものでしょうか? 申し訳ありませんが、これ以上の解析は現時点では不可能でした。ごめんなさい……』


「いや、いいよ。ふうむ、計算式が途中で止まっている、かあ」


 ……なんかそのものズバリそれっぽいな。昔遊んだシューティングゲームで、画面に表示できるオブジェクト限界数を超えてしまうせいで連射するとかえって弱くなる、なんて仕様のプレイアブル機体があった事を思い出す。


 粒子云々の話を聞くに、もしかしてエネルギー粒子単位で計算してるのか? それが一般家庭用のハードの処理限界とかでカウントストップしてるとかそんな感じなのか。


 だとしたら……根本的に、ビームの威力不足の改善は不可能って事になる。


 なんだそりゃ。困ったぞ。


「そっかー。だから、ビーム兵器は人気がないのか」


 バグ持ちの武器とか、色んな意味で使いたくない。そういう事かぁ……。




◆◆

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