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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第三十五話 イカロスの翼


 そして翌日。私はウキウキ気分でゲームにログイン。仕上がっているはずの愛機の元に向かう。


『あ、あの。複座式コクピットを用意して貰えれば、私、いつでもお手伝いしますので……!』


 まだ滞在しているテレサちゃんの必死な顔に後ろ髪を引かれながらも、私は適当に返事をして機体に乗り込んだ。運営からの返事はまだ届いていないが、長くてもあと数日の関係だ。何か思い入れを持つと分かれが辛くなる。


 たかがAIにこんな事考えてる辺り既に大分絆されているというか、私ってばちょろすぎる。


「まあ、また今度ね」


『お願いします~』


 最後まで食い下がってくる半泣き顔が、閉鎖されるコクピットハッチの向こうに消える。


 ふぅ、とため息をついて私は気持ちを切り替えた。


「よぉし、出撃だー」


 そしてやってきました花園の丘。今日ものんびりと歩き回っている蟻達を尻目に、私は愛機のステータスをチェックする。


「ふむ、善い仕上がりだ」


 カスタマイズで構成素材を変更する事で強化された脚部関節に、胸部から角のように突き出したバランサー。背中の自作プラズマジェットエンジンには小さな翼が装備されている。


 コクピットのスイッチをカチカチすると、背中の翼がうぃん、うぃんと合わせて動く。調整もばっちり。あとは胴体に取り付けたバランサー……航空機型の機体とか作るときに、尾翼の部分にくっつけるパーツをそのまんま持ってきたのでちょっとデザインが浮いてるが、まあカウンターウェイトと思えばそうおかしくはないだろう。


 あとは実際に動かしてみてなんとやら、だ。


 早速ロケットブースターを用いて大空に舞い上がる。


「ほほぉー」


 その過程で早速ウィングが仕事をした。これまでは放物線を描いてただ打ち上げるだけだったが、翼の確度を変える事でその軌道をある程度変更させる事ができる。上昇中のガクガクという不快な振動も抑えられている気がする。


 高度と速度が十分に稼げたところで、プラズマジェットエンジンを起動。キュィイイン、という甲高い音と共に、光の尾が吐き出される。


 こちらも、以前に比べて安定している。翼によって補助揚力を得られる事で、降下速度もさらにゆっくりになっているようだ。


 ただ、それで翼を大きくすればいいかというと話は変わってくる。翼の角度を変えると過負荷にイエロー表示になったので、そっと元に戻す。……この調子だと、悪戯に翼を大きくしても過負荷に耐えられずに折れてしまいそうだな。


「よっしょいせ、と」


 機体の腰を捻り、大きく空中でバレルロールしてみる。各部から負荷の上昇が報告されてくるが、空中分解するような事はない。すこし操縦桿から手を離せば、バランサーが仕事しているのかオートパイロットで地面に対し水平へと戻る。


 なるほど、空中戦も目玉の一つではあるらしいから、結構システムが充実しているらしい。まあ普通はスラスターとかで飛ぶのであって、こんなお手製プラズマジェットエンジンで飛翔するアホは私ぐらいだろうが……。


 照射が終わっても、青白く光る砲身からは灼熱の吐息が吐き出され続けている。ヒートゲージにはまだ余裕がある、私はもう一度トリガーを引き、機体を再加速させた。


「さて、射撃を試してみますか」


 飛翔しながら、マシンガンを構える。途端、乱気流じみた振動が機体を襲い、照準が乱れる。流石に空気抵抗が大きいか。


 前方、下方。地面を歩いている蟻をロックオン。距離は凡そ500mほど。果たしてこの距離でどれぐらい当たるかな。


「あたれよっ」


 狙いを定めて、私は引き金を引いた。


 途端、ガクガクッ、と機体が不意に激しく振動した。これまでの比じゃない衝撃に機体がバランスを崩し、放った弾丸は明後日の方向に飛んで行った。


 コクピットに警報が鳴り響く。


 速度・高度低下。


 吸入ファン回転不良。


 推力低下。


 すなわち。


「失速……?!」


 なんとか手足をばたつかせて、足先を重力方向に向ける。機体はすでに完全に墜落状態に陥っており、プラズマジェットエンジンは完全にその機能を失っていた。大気圧吸入ファンはある程度の速度が出ている状態でなければ機能しない、ここからの立て直しは困難だ。


 しかし、何故?


「そうか……マシンガンの反動……っ!」


 プレイヤーの視点だと軽量なマシンガンだが、実際には10m越えの人型ロボットが持っている大口径機関砲である。普段は接地した状態で発砲するから自重で誤魔化せているが、その反動も口径相応のはず。本来スラスターではない、ビーム砲を改造したプラズマジェットエンジンで、航空力学的に論外レベルで不安定な人型構造物を飛翔させている最中にそんなものをぶっぱなせば、制御不能になるのも納得だ。


 動画とかで上位陣が当たり前のように空中で発砲していたので勘違いしていた。あれもまた、トップクラスの技量とそれに見合った装備・プログラムで実現可能にした超高等技術だったのだ。


「落ちる落ちる落ちる……やばいって、やばいっ」


 ぐんぐん近づいてくる地表。流石にこの高さから墜落したら強化した脚部とか関係なく木っ端微塵だ。


「いやいや、まだだっ、そう何度も大破してたまるかっ」


 ロケットブースターのリチャージが終わっている事を確認してタイミングを計る。


 高すぎてもダメ、近すぎてもダメ。ちょうどいい高度……大体100mくらいを狙って、高度計をカウントする。


 150……130……110……。


「今だっ!」


 ロケットブースター点火。


 吹きあがる炎で、確かに落下速度が減速する。だが、まだ少し早い……!


「南無三!!」


 そして、地表に墜落。


 激突寸前、なんとか機体を制御して、かかとから滑るようにして地表に不時着する。花畑に深々と跡を残しながら減速する機体。脚部のステータスが真っ赤に光ながらアラートを発し、警報がやかましく鳴り響く。


 それでも……。


「ふぅ。なんとか、助かったか」


 地面に半ば埋まりながらも、機体は大破を免れた。両足はあらゆるステータスがエラーを吐いており、とてもではないが自力で歩いて帰る事はできそうにない。まあ、大破していないだけまだましか。這いつくばってでもホームに戻るしかない。


「ええと、ゲートは……あっちか。遠いな」


 丘二つ向こうに見える表示に、小さくため息をつく。


 いっそデスルーラした方が早いのではないかと思うが、現状私の資金はカツカツだ。タイパは死んでるが、今なら脚部周りの修理費だけで済む。


 とほほ、と両腕でクレーターから這い出す私。と、スピーカーが、ガチン、ガチンと何か金属をぶつけて噛み慣らすような音を拾った。


 ……クレーターから這い上がった先。アクティブ状態のメタルインセクトが、威嚇するように牙を噛み慣らしながら、私を待ち受けていた。


「えっ」


 多分。さっき撃ったマシンガンの弾が、一発か二発当たったのだろう。相手のHPは大きく削れているが、まだ半分以上残っている。そしてその周囲には、同じようにアクティブ状態になっている蟻が三匹。


『ギシュアア!!』


「う、うぉおおお! 死んでたまるかーーー!!!」


 かじりついてくる牙をナイフで受け止め、相手の胴体に捻じ込んだマシンガンの引き金を引く。


 花畑に、銃声と甲高い金属音が響き渡った。








 結論から言うと、なんとか勝ちました。


 主武装がビーム砲なら死んでた。


 しょんぼり。










◆◆

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