第十七話 スナイパーはエースの証
「という訳で、今後どのビーム砲を運用するかだけど……」
巨大蜘蛛にむしゃむしゃバリバリされた愛機が修理される傍ら、私はアセンブル画面を前にうんうん頭を捻っていた。そろそろ修理費が負担になってきたのでまじめに考えないといけない。
全部で三種類あるビーム砲、それぞれの利点と欠点は分かった。今後はじゃあどれを運用していくかという話だけれど……。
まず、フォトンビーム砲。長射程、高精度、特に大きな欠点もない優等生。ただしそのせいで、威力不足という欠点がモロに出てくる上にそれを補うのが難しい。消費ENと重量も悪い意味でバランスが取れている。
次にプラズマビーム砲。扱いを間違えると自滅する危険性があるし、発熱量が高いから取り回しが悪いけど、燃える物がある環境では一番強い。大抵の雑魚は熱に耐性が無いようだから、周辺地形を巻き込むようにすれば一発でも十分に相手を仕留められる。ただし、意味不明なほど重い。
最後に荷電粒子砲。威力だけ見れば多分一番強い。だけど射程が短いうえにダメージが安定しないという欠点がある。発射反動がきつくて機体が固まるから、仕留め損ねたら確定で反撃を受ける。さらに敵の誘導にサブウェポン必須だから、あまり弾数無限の利点が生きてこない。
現状、それぞれの認識はこんな感じだ。
「う、うーん。やっぱりどれもサブウェポン向きで、メイン武器には向いてない感じだな……」
うんうんカスタマイズに頭を捻る。
いっその事、ビームメインは諦めて、とりあえずフォトンビーム砲でも背負って手にマシンガンでも持つか?
フォトンビーム砲の射程は長いから、これで確実に敵に先制攻撃をして、マシンガンで仕留める……悪くはないと思うんだけど、そうやっていったらどんどんマシンガンに比重が偏っていって、最終的にビーム砲が不要物として排除されるオチがすでに見えている。そうやって先鋭化、効率化していった先があの上位陣の泥臭い対人戦な訳で。
彼らだってゲーマーだ、ビーム兵器に一度も手を出さなかったとは考えにくい。手を出して、その使い勝手の悪さに敬遠した結果、攻略サイトのあの情報の少なさがあるのだろう。
「うーん、うーん……駄目だ。煮詰まった」
どうにも良いアイディアが浮かんでこない。
こういう時は気分転換に限る。私は一度ゲームを終了し、VRヘッドセットを取り外した。
少し買い物にでもいってみよう。デパートのプラモデルコーナーでも覗いてみるかな。
ジャンバーを手に取って部屋に出る。階段を降りていくと、ふと掲示板に新しい張り紙がある事に気が付いた。
「? 何々……アパートのインターネット回線の更新についてのお知らせ……? 通信速度を改善します……?」
やってきました、地元のデパート。
親子連れや恋人連れでごった返す光景に密かに精神ダメージを受けながらも、足早にホビーショップを目指す。
赤い看板が目印だ。来客ガン無視で常連とお喋りしている店員の横を通り過ぎて、新製品コーナーをまずは覗いてみる。
「……何もないな」
相変わらずの品薄状態に溜息をつき、積まれている在庫の方に目を向ける。
こっちはそれなりに色々あって、私の目を楽しませてくれた。とはいえ色々妄想はするけど、実際に始めるとお金がいくらあっても足りないし、見せる相手もいない。
同じ趣味の友達が気軽に会える範囲にいるといいんだけどなー。
「おっ。ちょっとレア……でもないけど、昔欲しかったキットがあるな」
地味なグリーンのロボットが巨大なスナイパーライフルを構えてるパッケージを見かけて目を細める。
いや、特に思い入れがある機体じゃないけど、何となく見た目がカッコいいから買うものじゃん、プラモデルって。勿論、思い入れがあった方が楽しいのは間違いないんだけど。
まあしかし、どうして世のデザイナーはロボットのスナイパーライフルにスコープをつけたがるのかね? 人型ロボットなら立派なのが自分の頭についているような気がするし、ましてやそれでスコープを覗き込むのは一種のギャグではなかろうか。記号としては分かりやすいけど、少なくとも今現代のリアリティラインでやる事ではない気がする。
「……うん? まてよ」
ぼんやりとパッケージを眺めていて、ふと頭に閃きが浮かんでくる。
もやもやとしたそれを持て余しながら、店の陳列棚を見る。武器パーツ売り場とかを眺めて、結局何も買わずに店の外に出た時には、曖昧な思い付きは確かにしっかりとしたアイディアになっていた。
「いけるかも……」
流行る気持ちを堪えて帰路につく。
安全運転で駐車場に車を止めると、階段を駆け上がって部屋に戻る。
VRヘッドセットを装着し、ゲーム再開。
アセンブル画面が開かれるなり、早速アイディアを形にする。
「そうだよ。射撃精度の高さが売りなら、それを最大限まで生かせばよかったんだ」
選択するのはフォトンビーム砲の改良型。いつもだったらトリガーとかを外して機体に直接装備しているが、今回はそうせず、むしろバレルの延長、ストックの改良などを加える。ただでさえ重い装備重量がさらに増えてしまうが、それはもう必要経費だ。
次に本体。ビーム砲を搭載するべく腕を外したりするのがいつものアセンだが、今回はそういう事はせずに素直に中量二脚型をくみ上げる。積載量と機動力確保のためにできるだけ軽く、索敵範囲確保のために頭部だけ出来るだけ高性能なものを選択する。
あとはジェネレーターだが……せっかくなので、積載量が許す限りで出力の高いのを搭載する。考えてみれば最初期の品ぞろえでやり繰りしていたからエネルギーに余裕が無かった訳だし。
んでもって最後に最低限の自衛装備も。今まではハンドガンやマシンピストルを装備していたが、思えばピンチになるときは大体敵に組み付かれての肉迫戦闘だった訳だし、豆鉄砲ではなくナイフを選択する。ナイフ戦闘術なんてさっぱりわからんが、とりあえず腕を振り回して当たればオッケーという事で。
あとは胴体周りにロケットブースターを取り付け直して、と。
「うし、できた!」
そうして出来上がった新たな愛機は、大型のビーム銃を装備した平均的な狙撃中二、といった感じの佇まい。カラーリングも金ぴかからモスグリーンの地味な色に変更してある。あとはボロ布とかそういうのがあれば完璧だったんだけどね。
コンセプトは単純明快、狙撃だ。手に入る最大レベルのセンサー範囲と精度で、敵を遠距離から狙い撃つ。
そう、思えばこれまでは交戦距離が近すぎたのだ。極端な話、敵が接近するまでにビーム砲が冷え切るぐらいの距離が稼げれば、一発で半分ぐらいしか削れなくても問題はないのだ。ビーム砲を積む事を最優先にしすぎて、カメラの倍率とかセンサーの精度とかを疎かにしていたせいで気が付くのが遅れてしまった。
「ほんとはこう、ビームでグワッと薙ぎ払って、ズドドドン! とやりたいけど、それはまあ、もっと強化が進んでからのお楽しみって事で」
さて。
この機体は思ったように活躍してくれるかな?
「よし、出撃ー!」




