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ビルドロボオンライン ~趣味に走った私の愛機、廃人どもに野生のレイドボス認定される~  作者: SIS


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第百六話 2VS4


 子狼達こと自律型ドローンを引き連れて、再び渓流マップに向かう。


 長い上がり坂はなんという事はないのだが、ついてくるドローン達は大変そうだ。


「構造はまだまだ改良の余地がありそうだなあ……」


『ですねえ。本体との機動力差がありすぎますね』


 とりあえず現状では、本体の機動力を調整する事で対応だ。リミッターをかけて、自律型ドローンと歩調を合わせる。


 そうこうする内に出口が見えてきた。変わらぬ日差しの下で、さらさらと流れる渓流と閑散とした森林。


 どっちを進むか悩む所だが……。


「渓流から出てくるカエル擬きはどう考えても相性が悪いな。このまま森を進むか」


『それがよろしいかと思います』


 ドローン達の武装はレーザーと突撃ナイフだ。水に濡れた体表をもち、取り回しのよい迎撃機銃を持ったカエルの相手は相性が悪い。それならまだ狼達の方が戦いようがある。


 踵を返して森林地帯に向かう。


 と、そこでテレサが妙な事を言い始めた。


『ショウさん、一度ドローン達を回収してくれませんか?』


「ん? なんでだ?」


『歩行モーションの改良を行おうと思います。思った以上に機動力が低く、このままだと足手まといになるかもしれません。一度ホームに戻るのも考えましたが、現地で改良を重ねた方が時間効率がいいと思います』


 そんな事できるの?


 ああいや、でもおかしな話じゃないか。今回のドローンは機体の一部、って扱いだしな。


『はい。それに、彼らはバッテリー駆動ですので。充電した方がよろしいかと」


「ああ、そういう扱いなんだ。サブエネルギーとはまた違うんだね」


『そうですね。扱いとしては、機体のカメラやセンサーが分離して駆動しているようなものなので』


 ふーん。正直、そのあたりの境目は曖昧なんだよね、認識。


 まあロケットブースターもクールタイムが必要な代わりにサブエネルギー消費せずに使えるし、そういうものだと思っておこう。


 あれかな、基本的には何かを生み出す行為にサブエネルギーを使う感じか。スラスターで推力を生み出す、斥力場を精製する、修理パーツで破損個所を修理する。歩行型ドローンは関節を動かす、つまり位置を移動させるだけだから使わない、みたいな?


 まあいいや。ただでさえ修理ユニットでエネルギー使うし、使わないならそれにこしたことはない。


「おっけおっけ、回収しよう」


 下半身からクレーンが伸びて、下に重なったドローンを吊り上げて回収する。


 リプログラミングを行っている間、テレサはそれにかかり切りになるので、警戒は私の仕事だ。


 周囲をキョロキョロして、狼型の襲撃に備える。


 前回の事を考えると、そろそろ来そうな感じがするが……。


『ショウさん、3機目のプログラミングが完了しました。続いて、4機目にかかります』


「わかった。……いや、危ない!」


 頷いた所で、視界の中、巨木の影に黒いものがちらりと見えた。咄嗟にリミッターを解除、機体を急制動させる。


 直後、疾風のように駆け抜ける灰色の機影。逃げ遅れた3機のドローンが、突撃をもろに喰らう。細い手足がバラバラに千切れて地面に転がるドローン達を、踏みつけるようにして首をもたげる狼型のメタルインセクト。


『グルルル……』


「ちっ、お出ましか。んでもって、単機な訳ないよな?」


『5時方向にもう一機の機影を確認! やはり2匹でセットのようです、挟まれています!』


 テレサが映し出す映像には、木陰からこちらの隙を伺うもう一機の姿。


 さて、どうするか。


 前回は“ハティ”単機でどうにかしたが、今回は合体状態の“マーナガルム2”だ。連れている自律ドローン達も、あの時より戦闘力は増している。


 少なくともプログラムアップデートをした3機は、今の奇襲にも対応できた。となれば……。


「テレサ、前に居る奴をα、背後の奴をβと呼称。βにドローン達を差し向けて牽制しろ」


『了解しました!』


 指示を受けて、ドローン達が一斉に背後にむかって駆け出す。あとはテレサのプログラミングと管制に任せよう。


 私はその間、目の前の敵を片付ける。


「いくぞ……!」


『グルルル……!』


 シャコン、とビーム砲の照準を合わせる。咆哮に光が満ちる瞬間、敵は弾かれたように駆け出して射線から離脱した。


 放たれるピンク色の奔流。しかし残念ながらそれはかすりもせず、ただ巻き込まれた大木をなぎ倒すにとどまった。


 地響きを立てて崩れ落ちる大木、その向こうで笑うようにエネミーが唸りを上げる。


『グルルル……』


 まあ、流石に機動力重視のエリートエネミー。馬鹿正直に面を合わせた状態からの大技ぶっぱなんて当たらないか。最初戦ったようにミサイルと組み合わせればよかったんだが、使うと無くなるミサイルをここで消費したくなかったんだよね。


 まあ、しかたないか。


「機動戦に入る、テレサさんはしっかり掴まってて」


『はい!』


 ぐっ、とアクセルを踏み込んで機体を加速させる。


 “マーナガルム2”は2機合体の機体。そのサイズも歩幅も、通常の機体のそれを大幅に上回っている。それでいて見た目ほど重くないので、大パワーで機体を押し出すその初速は操ってる本人が戸惑うぐらいに早い。


 さて、この初見殺しに賢い賢い狼君は対応できるかな?


『ギャウッ!?』


 こちらの急接近に反応し損ねるエネミー。振りかぶったクローの一撃を前に慌てて退避行動をとるが、振りぬいたクローに微かな手応え。見れば、相手の足の一本が金属製の爪に引き裂かれていた。


「ちっ、仕留め損ねたか」


『ですが、相手の機動力は確実に削ぎました! このまま畳みかけましょう!』


「わかった、それよりドローン達はまだ持つか?」


 問いかけに返って来たのはサブカメラの映像。見れば、ドローン達は巧みに大木の陰に隠れながら包囲戦を仕掛けているようだ。鍵はレーザーガン。射程も威力も高くないとはいえ、三機がかりで多方向からチカチカ照射されるのはエネミーにとってもかなりストレスになっているようだ。やはり、ちょっかいをしかけられる手段というのは多ければ多いほど良い。


「よし。時間を稼いでいる間に仕留める!」


 速攻あるのみ。ミサイルを2発だけ、と決めて発射する。


 弧を描いて飛来するミサイルに、狼型は引き付けて回避しようとする。だが、その動きは聊か精細を欠いている。機動力特化型という事もあって、脚の一つを欠損した事が大きく響いているのは間違いない。


 ギリギリでミサイルの軌道に潜り込むものの、その機動を予想するのは容易かった。一度左右にステップで回り込んで、回避直後の敵を強襲する。


「終わりだ!」


 重量を乗せての一撃。振りかぶったクローががっつりと敵の胴体を捕らえ、そのまま地面にめり込む勢いで叩きつけた。ごっそり減る敵のHPバー、さらにそこにダメ押しと言わんばかりにパイルバンカーを連打する。


 HPバーが消滅し、砕け散るエネミーのグラフィック。


『やりました!』


「ああ。だけどまだ敵はいる」


 感慨にふけっている暇はない。すぐさま、ドローン達が包囲戦を試みているもう一機の元に急行する。


 じりじりとドローン達とにらみ合いに興じていたエネミーだが、相方の死とこちらの接近に反応したのだろう、すぐさま身を翻して包囲網から離脱しようとする。たった三機の包囲網、多少の損害を無視すれば問題ないと踏んだか。


 そうはいかない。


 一発だけミサイルを発射する。


 判断力が高い故に、エネミーはそれを無視できない。速度を落として引きつけ、反対側に飛んで回避する。その回避先に、私は全速力で駆ける“マーナガルム2”を突っ込ませた。


『グルゥ……ッ!』


 しかし敵もさるもの、不意をついた一撃をなんとか回避する。大きく姿勢を崩しながらも、飛び退ってこちらから距離を取るエネミー。


 だが、それがこちらの狙いだ。お前はもう、詰んでいる。


「今だ!」


 私の合図に応じて、一斉にドローン達が駆け出した。3方向から迫る自律ドローンの攻撃に、一瞬エネミーは逡巡したように身を硬くし、それが命取りとなった。


 駆け出した勢いのまま、ドローン達が体当たりするようにエネミーに激突する。ラムのように取り付けられたナイフが深く突き刺さり、エネミーが苦悶の声を上げた。


『ガアアッ!?』


 そしてさらに、密着した状態でレーザーを乱射。ナイフで切り裂かれた内部構造に、高エネルギーが直接叩き込まれる。


 ビクンッ、とエネミーの体が震えると、そのまま力が抜けていく。オーバーキルダメージにゆっくりと減っていくHPバー。完全に地面に横たわると同時にその体は四散し、後には自律ドローン達だけが残された。


 うむ。チームワークの勝利だ。


『やりましたね!』


「ああ。お前達もよくやった」


 満足感を胸にドローン達の元に歩み寄る。


 脚をクインクインさせている様はまるで初勝利を祝って喜んでいるようだった。




◆◆



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